王女、巻き込む
「それでリーナ、ヘンリから私に会いたいと言ってくれていたと聞いているけど」
「ふふん!!目的は達成したわ」
リオネルがあの暑苦しい言動で色んな人の運命を変えているってことがわかったわ。
ジェイズと剣を交えてすげえすげえと子供みたいに目を輝かせるリオネルが目に浮かぶ。すげえ影響力だわ。
まあそれだけじゃなくて本題はこれよね。未来視で見た女性2人。それがリオナとティティだ。
「おや、そうなのかい?」
「ええ!!というわけでティティ、それにリオナもここでの協力者に任命するわ!!」
「「協力者?」」
「協力者!!リーナちゃん!!ベルも協力者したいの!!」
「まあ。じゃあベル様も」
「ちょっと!?何に巻き込む気なの!?」
ヘンリが慌ててリオナを抱き寄せる。あら、守っている気なのかしら。どこかの誰かさんと違ってヘタレじゃなさそうね。
「あなたは当事者だから強制的に協力者になってもらうわ。そう、これは極秘任務」
「もしかしてリーナも冒険者なのかい?リオネル様のことも知っていたし同業者だったのか」
「ええ、おほほ!!そう、身分は明かせないけど冒険者なのよ!!そう、Cランクのね!!」
そうなのよ、この国に来る前にCランクに昇格したのよ。ふふふん。冒険者リーナとして着実にレベルアップしているわ。
「そうなのか。私はAランクだ。辺境での仕事もあってなかなか冒険者としての仕事が受けられなくてね。そういうことなら私も冒険者だ。協力しない理由はないね。どんな任務なんだい?」
「簡単にいうとヘンリ様を助ける任務よ」
「確かにヘンリは公爵家の後継ぎだから狙われることは昔からあるよね。でもそれが冒険者の任務?」
「ええ。とあるスジからの情報でヘンリ様は可哀想なことに恋心を利用され犯罪の片棒を担ぐことになってしまうのよ!!ヘンリ様はリオナがいるにも関わらず学園で可愛い女の子のお尻を追いかけて悪い魔女に利用されてしまうの!!」
「……ヘンリ様」
「ひゃん!!」
寒いわ!!急に氷に囲まれたみたいに寒くなったわ!!私はジェイズに抱きついて暖を取る。
「ちが、違うんだよリオナ!!」
「ヘンリ様、愛人をお囲いになるのはよろしいですがベル様が殿下と結婚されてからにしてくださいませ」
「囲わないから!!ベルが殿下と結婚しても囲わないよ!!」
リオナの両肩を掴んで必死に叫ぶヘンリ。
「ちなみにその可愛い女の子というのはカヤという魔女なのよ」
「ヘンリ。カヤに近寄るな」
「違う!!違うんだってば!!」
どこから出したのかティティが短剣をヘンリの首筋に突き刺す。
「ガセなんだよ!!その冒険者?に情報提供した人は絶対おかしい!!」
まあ、情報提供者なんていないけれど。
「まあまあ、みんな落ち着いてちょうだい。なんで状況が事前に聞いていた情報と違うのかはわからないけどとにかく悪い魔女は確実にいるのだからヘンリ様が利用されて殺されないように阻止しないといけないのよ」
「殺される……」
「っ!!リオナ、大丈夫だよ。昔から暗殺やら誘拐なんてよくあったんだから」
「ヘンリ様……」
「リオナ」
この2人、ゲームと違って完全に両思いだわ。見つめ合っている2人を見慣れているのかティティが問いかける。
「カヤが巻き込まれるということはあるのかな」
「んーわからないわね。でも悪い魔女の狙いは王弟ライアンなの。関係ないから巻き込まれる心配はないかも」
「ライアン様?リーナ、悪い魔女の狙いはライアン様なのか?」
「ええ、でも危害は加えられないわ。悪い魔女は王弟ライアンに思いを寄せているの。ヘンリ様の負の感情を利用して媚薬を作ってライアンに飲ませようとしているのよ」
「僕を利用するのがライアン殿下にそんなことをするためだなんて。リーナ、悪い魔女は誰かわかっているの?」
「ええ。この国の侯爵令嬢、マリアローゼ・セイガン」
「マリアローゼが?」
「マリアローゼ様の……セイガン侯爵家には魔女はいないはずですわ」
「隠れ魔女が母方の親族にいたのよ」
「セイガン嬢……そういえばこの前セイガン嬢におかしなことを言われたな。貴方には手に入れたいのに手に入れられないものはありますかって」
「ふむ。公爵令息に尋ねることではないな。公爵令息の地位で手に入れられないものなんてほとんどないだろう。王位とか?」
「ティティ。滅多なことを言うんじゃないよ。確かに僕には低いが王位継承権はあるけど王位なんて欲しくない」
「マリアローゼがどんな令嬢か知っている?」
「物静かな方ですからあまり詳しくは。クラスも違いますし昔からお茶会でも周りの話を聞くことがほとんどでした」
「私は侯爵が大臣をしているからか王宮ですれ違うことは何度かあったかな。特に話すことはないけど睨まれている気はしてた」
「それ嫉妬では?ティティは王弟ライアンと親しいのよね」
「……ああ、なるほど。そういうことか。ライアン様を好きになる女性が私以外にいるとは思わなかったから考えつかなかった」
「僕も」
「ええ。ですがライアン様も王族ですものね」
ティティとヘンリとリオナがそれぞれ言う。どういうことかしら。王弟ライアンはそんなに対象外なのかしら。もしかしてゲームと違ってすごく不細工だったり?
「「変態だけどな」」
「変態……?氷のように冷たい男、なのでは?」
私がそう言うと3人が驚いた顔をする。
「……リーナ、それも冒険者ギルドに入った情報かい?」
「えっと、そんな感じよ」
「ちなみに第三王子についての情報は?」
「第三王子は明るくて元気なキャラクターでしょ?」
「「「……誰が?」」」
「だから第三王子のフレディ」
「……リーナ、その情報提供者は信用しない方が良いよ。リオナ、ヘンリがカヤを愛人として囲うなんてこともないから安心して良いよ」
「ええ、そのようですわね」
「ちょっと、そんなに違うの?」
「第三王子のフレディ殿下はベル以外には冷たくて冷酷王子と言われてるんだ」
「ディ様は優しいのよ!!」
「ベルにだけね。それでライアン殿下は……」
「変態だよ」
「そう、よくティティに踏みつけられたいとかティティの下僕になりたいとかティティに罵られたいとか言ってる」
まあ。どうしてリオネル1人でそんなに違ってしまうのかしら。
「リーナ、冒険者の任務ってこれ以上知られるのはまずいんだよね?」
ヘンリが言う。
「ぼやかして話すなら増やしても良いわ」
「であれば王族に協力を仰がない?この国では悪い魔女は厳しく取り締まってる。情報におかしなところがあるのは確かだけど思えばセイガン嬢は僕以外にも同じようなことを聞いていたようだし何か悪事をしようとしているかもしれない。そうなると国として裁く必要がある。早い内にライアン殿下とフレディ殿下に話をした方が良いと思うんだ」
「ええ。そういうことならそれで良いわ」
というわけで第二王子、第三王子に会うため私たちは王宮側にある王弟が暮らす塔に集まった。




