王女、悪役令息に説明する
ここレゼブレア王国は現在25才の若い国王が治めている。7年前に前国王が病気で崩御され現国王が王位に就いた。
魔女が片思いしているのはその国王の弟ライアン21歳。生まれつき身体が弱く1人伏せていることが多かったライアンは比較的体調が安定してからも人を寄せ付けない氷のように冷たい男として描かれていた。と言ってもほとんど名前だけの出番だったけど。
「こほん、ではまず」
「あ、ジェイズ義兄様!!私が話すわ!!あのね、ずばりヘンリ様は学園に編入した女の子に恋をするんだけどその子は別の男の子たちを好きになることになって悪い魔女に協力してその子を振り向かせようとするのだけど最終的に悪い魔女と一緒に殺されちゃう運命なのですわ!!」
「……全然意味がわからないんだけど。まず学園に編入した女の子ってティティのこと?カヤのこと?」
「んーデフォルトはカヤって名前ね」
「デフォ……?カヤに恋するの?僕が?あの、僕には婚約者がいるんだけど」
「知ってます」
内気な伯爵令嬢だったとしか描かれていなくて見た目もわからないのだけど。
「リオナがいるからカヤに恋するわけがないんだけどカヤが男の子たちを好きになるねえ……たち?」
「誰とハッピーエンドを迎えるかはヒロイン次第なので」
「んん?」
「ヘンリ様、ヒロインというのはそのカヤ様のことです」
「んー?」
「ちなみに学園でハッピーエンドを迎えた後は王宮編として今度は国王と恋人になれたり」
「陛下だって!?陛下には妃が」
「国王とハッピーエンドを迎える時には妃が悪役妃なので妃が断罪されます」
「何てことを言ってるんだ」
「でもまあそれは別の話なので。今は学園編です」
ヘンリは本来穏やかで落ち着いた性格だけど今はぐったり頭を抱えている。
「カヤがそんな大それたことをするはずないのに」
「ヘンリ様はカヤ様のお尻を追いかけてはいないのですか?」
「いないです!!しません!!ってベルの前でそんなこと言わないの!!」
「ふむ……何故違うのかしら」
また私の預かり知らないところでキャラが変わってるのかしら。
「とにかくカヤはそんなことしないよ。ティティに夢中だし」
「そのティティというのは誰ですか?そんな方はいなかったはず」
「辺境伯家の令嬢だよ。カヤが魔女だってわかったから学園に編入することになったんだけど幼い時から辺境伯家に出入りしていた商人の娘だからって後見人として付き添いに来たんだ。学園は強制じゃないからカヤのことがなければティティも学園に来ることはなかったよ、多分」
「多分?」
「そう。ずっと誘われてはいたんだけど魔物を狩らねばって断ってたんだ」
「誘われていた?誰にです?」
「王弟ライアン様に」
「何故!?」
「ティティはライアン様のお気に入り……で良いか。駄目か?とにかくライアン様に学園というより王都に来るよう誘われ続けてたからね」
むむむ。そんなキャラゲームに出てこなかったのに。
「ヘンリ様、その女性は王弟殿下の婚約者なのですか?」
「陛下はそうしたいというか周りはその気なんだけどライアン様が何故か素直じゃないというかね」
んー……とりあえずここはそのティティとカヤに会ってみたいわね。
未来視で視たのは青年2人が女性2人の前で土下座をしている姿だった。青年は後ろ姿だったけど1人は多分、いや、確実にヘンリ。女性の方はゲームでは見たことがなかった。
「ヘンリ様!!私学園に潜入し「リーナ」なぁにジェイズお義兄様!!」
私の言葉を遮ったジェイズが私の耳元で囁く。
「学園潜入しては前と同じことになってしまいます」
「芸がないかしら」
「……違います。学園には男がたくさんいるので駄目です」
「そうだったわ」
今回ヘンリの屋敷で働くことになったのはジェイズが学園では私が他の男と話して学生たちがみんな私のことを好きになるだなんて可愛い嫉妬をするからなのよ。
「ヘンリ様、ティティ様やカヤ様と学園以外でお会いすることはできませんか?」
ジェイズのために学園以外でティティとカヤに接触しないとね。
「リーナちゃんティティお姉様に会いたいのー?」
「お会いしたいですわ」
「今度おうちでお茶会をするの!!リーナちゃんも一緒にお茶会しましょうなのよ!!」
「あらまあ。ふふふ、そうなのですね。では私メイドリーナとして完璧にお茶会を遂行してみせますわ」
「お茶会するの?」
「はい。メイドとして」
「むー一緒にお喋りたいの!!」
せっかくのメイドだもの。ジェイズにメイド姿を存分に堪能してもらいたいわ。ぐふふ。
「こほん、お嬢様、そのお茶会にはどなたが参加されるのでしょうか?」
「えっとねーリオナお姉様とティティお姉様!!とベル!!」
「リオナはよくうちに来てベルの面倒を見てくれたんだ。ティティも王都に来ると王宮は堅苦しくて息が詰まるって言ってうちに泊まりに来ていてね。学園に編入してから初めてみんなで集まることになったんだ。気心知れてるからお茶会といってもいつも通りなんだけどね」
「お兄様!!違うの!!ベル招待状書いたの!!リオナお姉様もティティお姉様も楽しみにしてるってお返事くれたのよ!!」
「そうだね。でも僕の目を盗んで招待状に絵を描いちゃだめだって言ったのに」
「リオナお姉様はお上手ですわって言ってくれたしティティお姉様は素敵なお花の絵をありがとうって!!」
「はいはい。というわけだから来週末ティティには会えるよ。カヤには……学園以外にも魔女の集まりに参加しないといけないそうだから今回は無理だけど機会を作ってみるよ」
「魔女の集まりですって?面白そう」
「リーナ」
ふふん。大丈夫よジェイズ。いつか見学に行って魔女の秘薬を手に入れてみせるわ。
「なんか危ないこと考えてそうだけど良いのジェイズ」
「はあ……大丈夫です。私も着いていくので」
「着いていくんだ」
そしてお茶会当日。私はジェイズ以外に口付けをされてしまった。




