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王女、メイドになる

「リーナ様」

「んー」

「リーナ様、起きてください」

「んーもう一口……あーん……」

「リーナ様……リーナ様にあーんして差し上げるのは私だけです」

「はっ!!ジェイズの可愛い嫉妬の予感が!!」

「おはようございますリーナ様」


 というジェイズとケーキを食べさせあいっこする夢を見て幸せな気持ちになった後目覚めてもジェイズに朝食を食べさせあいっこした日から2ヶ月。


 冒険者リーナとして薬草採取をしつつ傍らでAランク任務をさらっとこなすジェイズの勇姿を見たりして過ごし、1ヶ月前からメイドリーナになった。


 そう、私はメイドとして、ジェイズはスーパーハイスペックな従僕として悪役令息であるアランデア公爵令息、ヘンリの屋敷に潜入しているのだ。


「リーナちゃん捕まえたー」

「はにゃ!?……いけませんわベルお嬢様」


 私は後ろから抱きしめられた腕をほどき振り返る。10歳になったばかりのアランデア公爵令嬢ベルが頬を膨らませていた。


「リーナちゃんと遊びたいのー」

「お仕事中なので駄目です」

「いーや!!」


 私と身長の変わらない子供に泣きつかれた私はため息をつく。


「まったく、それではわがままな悪役令嬢になってしまいますわよ」

「悪役令嬢って?」

「悪役令嬢は悪いことをして偉い人に断罪される運命の令嬢ですわ」

「断罪って?」

「処刑されたり国外追放されたりです」

「えー!!ベル悪いことしない!!」

「ええ、そうしてくださいな。悪役令息の監視をしてるのに悪役令嬢まで面倒見てられないものね」

「悪役令息?なあに?」

「悪役令嬢の令息版です」

「誰が悪役令息なの?」

「あなたのお兄様ですよ」

「えー!?お兄様が!?たいへーん!!」

「あっちょっとお嬢様!?」


 ベルに手を掴まれて駆け出したベルに引っ張られる形でついていく。


「お兄様ー!!」


 という声と同時に執務室のドアを開けて入るベル。まったく、とんだお転婆お嬢様だわ、と思いながら執務室にいたジェイズを見て飛び付く。


「ジェイズお義兄様!!」

「リーナ……箒を手に持ったリーナも可愛いよ」

「あっ箒持ったままだったわ!!ふふふ、お仕事頑張ったご褒美が欲しいわ!!」

「ご褒美だね。何が欲しい?」

「ほっぺにちゅー!!」

「良いよ」

「ごほんごほん!!えーと、一応ベルの前だから止めて欲しいんだけど……」


 ジェイズからのほっぺにちゅー待ちの体制になっていたらジェイズの隣で椅子に座っていたヘンリに止められてしまう。


「むー愛しいジェイズ義兄様との時間を止めるなんて罪深いですわよヘンリ様」

「う、うん、ごめんよ。君たちが義理の兄妹だっていうのはわかってるんだけどベルに見せるには教育上……ね」


 ここでの私とジェイズの設定は義兄妹だ。私の母親が前夫との間に生まれた私を連れてジェイズの父親と再婚したが後にジェイズと私だけ残して2人とも他界してしまい路頭に迷った義兄妹が偶然アランデア公爵家の求人に応募して住み込みで働いているのだ。


「お兄様!!大変なの!!お兄様は悪役令息なのよ!!」

「悪役令息?」

「……リーナ」

「ふふん。なあにジェイズ義兄様?」


 ジェイズに物言いたげな目で見られた。潜入して1ヶ月、完璧な可愛いメイドになりきっていたけどそろそろ探りを入れないとつまらない、じゃなくて話が進まないと思ってたから良い機会じゃないかしら?


「ベル、悪役令息って?」

「悪いことをして偉い人に断罪される運命の令嬢の令息版なの!!」

「悪いこと……」

「お兄様!!悪いことしちゃめっよ!!甘いお菓子は食べ過ぎちゃいけないんだから!!」

「それはベルでしょ。僕は甘いお菓子は苦手だよ。……えっと、どういうことだろうリーナ」

「はい!!ヘンリ様の悪役令息化をお止めしようかと!!」 

「ど、どうしよう。わからない。ジェイズ」

「……そうですね。では状況を整理しましょう」

 


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