王女、悪役令嬢を助ける指令完遂する
王宮に辿り着く間、多くの人が捕らえられていくのを横目に見ながらジェイズに私がいかに戦姫として大活躍だったか話して聞かせていた。
「それでね、神聖力を自由に具現化できたわけだからハートの可愛い矢も作れるんじゃないかと思ったのよね。こんな感じで……あら、デルフィンとグラシアだわ」
ちょうど私たちが歩いている先に王宮をバックにグラシアとデルフィンがいた。
「デルフィンーちょうどそこだわーキスをしなさーい……あ」
先端がハートの形をした矢が手元を離れデルフィンに向かって放たれる。本物の矢ではないから紙ひこうきが飛ぶくらいゆっくり飛んでいくその矢に気付いたデルフィンが叫ぶ。
「ぎゃー!!なんだそのヘンテコな矢!!危ねえ!!」
「ヘンテコじゃないわよー!!恋のキューピッドの矢だから危なくないわよー!!」
「なんだそれ!!グラシア様っ!!」
危なくないと言ってるのにあたふたするデルフィンがグラシアを抱きしめる。そしてハートの矢がデルフィンの後頭部に刺さった。
「まあ、命中したわ」
「リーナ様……遊んでますね」
「ふふ。デルフィン!!グラシアの髪の毛にキスするんじゃなくて口にキスをするのよ!!」
「うっせえ!!ってか目良いな!!」
「早くー!!」
キスの催促をしていると抱きしめられていたグラシアが一度デルフィンから離れた後デルフィンにキスをした。
「まあ、お子さまなグラシアが積極的だわ。ふふふ、教育したかいがあったわね」
「「「デルフィン陛下ばんざーい!!」」」
「「「グラシア様ばんざーい!!」」」
「ほぇ!?」
急に上がった万歳三唱に思わず驚いてしまう。辺りを見渡すとなるほど。マークやアドルフたちが恋人たちと手を繋いで万歳三唱をしている。
「ふふ、エンドロールにふさわしいわね。こうして悪役令嬢グラシアは救われ愛するデルフィンとの新たな一歩を踏み出したのだった、みたいな」
突然の万歳三唱に驚いていた王宮崩壊や狂暴化した動物たちの騒ぎに騒然としていた国民たちだったけど悪政時代の崩壊と新たな時代の始まりを知りあちらこちらから万歳三唱が響いた。いつの間にかアドルフ様万歳の声も加わってさらに何故かリーナ様万歳が加わってなんだかよくわからなくなっていたけれど。
――――それから3日後
「リーナ様、本当にもう行ってしまわれるのですか?」
「グラシアは助けられたもの。ふふん、他の場所で私の助けを待っている人がいるのよ」
「さすがリーナ様!!そのように人々に救いの手を差し伸べてまさに救いの女神様ですわ」
「ま、まあね。……やっぱりなんか大袈裟なのよね」
私はレイジア国を発つためグラシアたちと最後の別れをしていた。
「寂しいですが私も素晴らしいリーナ様に少しでも近付けるよう精進いたします。寂しいですが」
そんなに寂しいのね。年下の友達の可愛らしい言葉にキュンとする。
「ふふん、喜びなさい。グラシア、あなたは私のお友達なんだから」
「は、はい」
「特別に私の呼び方を改める許可をしてあげる。リーナって」
「ではリーナお姉様と!!」
「呼び捨てで呼んで良い……え?お姉様なの?」
「はい!!リーナ様は年上の大人の女性です。ですからリーナお姉様とお呼びしてよろしいでしょうか?あ、でもその、お友達と仰っていただけるのはとっても嬉しいです。だから、お友達であり尊敬するお姉様なのですわ!!」
「……ふふん。可愛いわね。良いわよ。グラシアは今から友達であり妹よ」
「はい!!」
こんなに慕われるなんて嬉しいわね。
今ここにはグラシアとデルフィン、それに今回協力してくれたアドルフ、カミラ、リオネル、マーク、スレイブ、ユリアーナ、エレナがいる。私はお姉さんらしく胸を張って言う。
「グラシア。あなた言ってたわね。これまで家の権力にすがりたい者や陥れたい者ばかりが周りにいたって。だけど今周りを見てご覧なさい。ここにいるみんなはグラシア自身をちゃんと見ているわ。私はそばにいれないけどこれからはここにいるみんなと助け合うのよ」
「はい!!」
「そしてずっとデルフィンの隣で歩いていくの。デルフィンのできないことはグラシアがやって、お互いに支え合っていくこと。デルフィン、あなたにとって国王であることは重責になることになるでしょう。けどあなたは1人じゃない。グラシアを、ここにいるみんなを頼って少しずつ国王になっていけば良いのよ」
「おう」
真面目な話をしたから、グラシアもデルフィンも真剣に答えてくれる。私は2人に手招きして周りのみんなに聞こえないようにそばによってもらう。
「2人に特別な秘密を教えるわ」
ちゃんと女神に確認をとった話をする。
「実は神獣っていつでも神界を行き来できるの。神獣経由で連絡をとることもできるし神界を通せば手紙のやり取りもできる。私はこれからいろんな国に行かないといけないから直接会うことは難しいけどこの方法ならフェリシア様を通じてすぐ連絡が取れるわ。だからグラシア、寂しくないわね」
「リーナお姉様っ……ありがとうございます!!嬉しいです」
「ふふ。いつでも頼って良いわよ。これでも私は王じ……」
はっとして口を両手で押さえる。
「隠す気あったのか」
デルフィンが呆れ顔で言う。
「ジェイズが嫌なことはしないの。ふふ、だって私はジェイズのお嫁さんだもの」
「そうかい」
「今日からしばらく2人旅!!イチャイチャし放題だわ!!」
「いつでもどこでもイチャイチャし放題じゃねえか。……ま、気をつけていけよ」
「リーナお姉様、お気をつけて」
「ありがとう」
そして私はカミラたちにも一言ずつ声をかけてからレイジア国を旅立った。




