ヘタレヒーロー、決意する(sideデルフィン)
リーナ様が出ていった後、俺は混乱する会場内で動物たちの狂暴化を解いていた。
「デルフィン様!!向こうで何かあったようですわ!!」
狂暴化していた動物は後遺症なのか互いに傷つけあったのか傷だらけでその手当てをしていたグラシア様が駆け寄ってきた。
「向こうって……おいおい何暴れてんだ!?」
俺から離れた場所で生徒たちがお互い殴り合っていた。その近くにいたエレナ嬢がわたわたしながら止めに入ろうとしていた。
「エレナ様危ないわ!!」
殴り合っていた1人の男の腕がエレナ嬢を殴りかかりそうになったところ突風がその男を吹き飛ばした。
「まあ……」
突風を起こしたらしいマークがエレナを抱きしめて何か言ってるのが見える。
「向こうはマークに任せましょう」
「ええ、そうですわね。良かった」
「グラシア様!!デルフィン様!!」
今度はユリアーナ嬢とスレイブが駆け寄ってきた。
「大変なのです!!生徒たちが狂暴化しているのです!!」
「狂暴化?」
「さっきのエレナ嬢のところもか。……ん?そういえば王子たちはどこ行った?」
狂暴化した動物たちに慌てた生徒たちが逃げようと混乱していた中で王子とリリアを見失っていたというか生徒たちに揉みくちゃにされてたから放置していた。
「ははははは!!どうだ!!全てを支配する俺の力は!!」
「すごいわ殿下!!」
「そうだろう!!やはり俺は天才だ!!」
いた。王子とリリアがふんぞり返って大笑いしていた。
「動物も人間も俺の支配下で踊るが良い!!あーはっはっはっ!!」
「きゃー殿下かっこいい!!そんな殿下を手のひらで転がしてる私はもっとすんごいだから!!おーほほほほほ!!」
「ん?リリア、手のひらでなんだって?」
「だから手のひらでころころころころしちゃってるのよ!!つまり全てを支配しているのはこのわ、た、し!!」
「はあ!?リリアお前!!お前は俺の支配下だろ!!」
「私の支配下よ!!」
あいつら馬鹿なのか?ぺらぺら喋りす……あ。
「フェリシア?フェリシアどこだ?」
「デルフィン様、フェリシア様があそこにいらっしゃいますわ。それに生徒を狂暴化させるのを止めさせなければ。行きましょうデルフィン様」
そう言うグラシア様に腕を引かれ王子の元に行く。だけど一歩遅かったのか何なのか。
「ピーッ!!ピッピッ!!」
「「「わんわんわん!!」」」
「「「ミーッ」」」
「「「ピピッー」」」
犬猫鳥たちが王子とリリアに襲いかかった。
「あの子たち……狂暴化されていた子たちだわ。デルフィン様、どうしましょう」
「んーとりあえずこれ以上の狂暴化はないでしょうし神聖力で狂暴化してる生徒を止めてきます」
「私も……あっお兄様!!」
王都で犯罪を犯していた貴族を摘発するために動いていたリオネルがやって来た。ちなみにこの場にはアドルフおじさんの部下が数十人いる。さすがに俺たちだけで狂暴化を止めたり生徒を避難させたりはできないからな。
リオネルと行動していたアドルフおじさんの部下も一緒にやって来て俺の前でたて膝をつく。
「デルフィン様、先程レスター王が退位しデルフィン様がレイジア国の国王となられました」
わかっていたことだけどずっしり責任を感じる。生い立ちは聞いてたけどつい最近まで自分は平民だと思って生きてきた。リーナ様はどこぞの王女かなんかだろう。そしていずれは女王になるんだろう。抜けててアホでジェイズ馬鹿だけどそれはもう立派な女王になるんだろうな。俺は……なれるんだろうか。ならないといけないんだよな。
「デルフィン様」
呼び掛けられて初めてグラシア様に腕を掴まれたままだったことに気付いた。
「グラシア様」
「デルフィン様、私婚約破棄されましたわ」
「え?あ、はい」
「リーナ様に初めて婚約破棄されて断罪されると聞いた時はどうなるのかと恐ろしかったのです。でもデルフィン様は私の身に起きることに怒ってくださって私が笑うことを望んでくださいました。ですから今は皆様を守ることに必死ですがこれから私は笑っていられると思うのです。その……私を手に入れるために国王におなりになる、と、つまりそういうお話でしたよね」
「えっ!!そ、そうですねハイ」
「おーい、またヘタレデルフィンになってるぞ」
「う、うるせえマーク!!黙って……お、お前なにしてんだ!!」
いつの間にか近くにきてエレナ嬢の肩を抱いていたマークを見て叫ぶ。
「何が?」
「か、かか肩をだ、抱くなんてハレンチな!!」
「彼女を抱いて何が悪いんだ?」
「肩をな!!ってか彼女!?」
「おう。知らなかった?エレナは結構前から俺の彼女。な、エレナ」
「は、はい!!リーナ様を見習ってラブラブのイチャイチャです!!」
「だよなー」
「ハレンチな!!知らなかったわ!!」
「じゃあ向こうも?」
「向こう?」
マークが指差す方を見るとスレイブがなぜかユリアーナ嬢をお姫様抱っこしていた。いや、なぜ?
「いや、本当になぜ?」
「走り回ったユリアーナの愛らしい足が心配だから抱いている」
「いや、わかんねえわ」
「も、もう、スレイブ様!!注目されていますわ!!エレナとは違うので恥ずかしいですから降ろしてくださいませっ」
「それは2人きりの場なら良いということか?」
「そ、そうですわ!!2人きりならラブラブイチャイチャします!!」
「な、なんだこれ。みんなアホなのか?こんな所でハレンチなことばっかり……フェリシア」
「ピピッ」
いつの間にか俺のそばにいたフェリシアが自信満々に胸を張る。
『さあ、周りに流されてヘタレ卒業するのよデルフィン』
俺の頭に直接語りかけられた声に驚く。
「フェリシアか?」
『そうよ』
『お前、喋れるようになったのか』
『ええ、そうよ。でも今は私とお喋りするよりヘタレを卒業するのよ』
「卒業っていっても……」
俺はマークとエレナ嬢、スレイブとユリアーナ嬢を見てからグラシア様に目を向ける。グラシア様は顔を赤くして目を潤ませていた。
「ゴホン!!俺はグラシア様を手に入れるために国王になると決めました!!けどこれまでみたいなろくでもない王にはならねえ。ご立派にはなれないだろうけど俺にできることを精一杯やりたい。だから、グラシア様、いや、グラシア、俺の妃になってずっと隣で俺を見ていてくれ!!」
「はい!!妃となってデルフィン様を支えますわ。ですからお一人で抱え込まないでくださいませね」
「……は、はい」
「んーアリエント嬢の方がやっぱり肝座ってんな。そりゃそうか。こりゃ尻に敷かれるだろうな」
マークの言葉に完全同意だ。グラシア様は愛らしさと美しさに加えてどこぞの王女の影響を受けて逞しいパーフェクトな天使になったようだ。あ。
フェリシアのせいか俺は思っていることを口に出していてそれを聞いたグラシア様がさっきより顔を赤くしていた。それを見た俺も同じくらい顔を赤くしていたと思う。
『ヘタレ卒業できるまでの道のりはまだまだね』




