王女、か弱いアピールをする
『はわわぁリーナーどこに行くのー?ジェイズとここにいる約束よー』
魔女を追って森に入った私たち。初めは狂暴化した動物たちが相手だったのだけど途中から魔物が現れた。魔物は浄化するしかない。対狂暴化した動物用に用意していた弓は途中で使い果たしてしまった。
しかしそんなことは関係ない。神聖力を矢の形に具現化して放つことで襲ってきた大鷲型の魔物や狼型の魔物の群れを次々に浄化していった。私にかかればこんなものよ。
だけど怖がりなトラコが怖がって暴走したからただいま迷子中なのだ。
「だってトラコちゃん、今からジェイズが助けにきてくれるのでしょう?せっかくならあれをしたくて」
『あれってー?』
「ふふふんランプ5回点滅させると愛してるのサインなの。愛してるのサインを送りたいわけよ」
『はわわぁーさっぱりわからないわー』
「ふふん。あ、この木が良いわね」
私はこの辺りで一番高そうな木を見つけるとひょいひょいっと登る。
『はわわぁーリーナーまたそんなことしてー』
「ふふふ、ここからなら神聖力を使う時の光が遠くからでも見えるわ。あら、向こうに崩れた王宮が見えるわ。ジェイズの力ね。さすがだわ」
『あらー王宮が見えたなら出口がわかるわねー』
「わかるけどジェイズに言っちゃ駄目よトラコちゃん。ジェイズに迎えにきてもらうんだから」
『わかってるわー。私もジェイズに助けにきてもらいたいものー』
「もうトラコちゃん!!ジェイズは私の夫だってば!!」
そう話しているとゴゴゴゴゴという地鳴りがしてその方角から木々が倒れ野生の鳥たちが一斉に飛び立つのが見えた。
「ジェイズだわ!!あ、い、し、て、るっと」
ジェイズに愛のメッセージを送る私は次の瞬間には木の上から地上に降りていた。
「リーナ様、危ないことはお止めください」
「ジェイズ!!」
ジェイズに抱かれて地上に降ろされた私はジェイズをぎゅっと抱きしめる。
「愛のメッセージを送りたかったの。愛してるって!!」
「私もお慕いしています」
『はわわぁージェイズー!!会いたかったわー!!』
「ほぎゃ」
トラコがジェイズの脇腹に向かって突進してきたからジェイズに抱きついていた私にもぶつかられて思わず変な声が出た。
「トラコ様、ご無事で良かったです。知らせてくださりありがとうございます」
『わーん!!怖かったわー』
はっ!!泣きつくトラコを見てジェイズはこういうか弱くて庇護欲をかき立たてられる女が好きなのではと思った私はジェイズに泣きつくことにした。
「わーんジェイズー!!全然怖くなかったけど怖かったって言ってみるわー!!」
「リーナ様……?」
「どう?ジェイズ。か弱い私は可愛い?」
抱きつきながら顔を上げてジェイズに尋ねる。
「可愛いです。世界一可愛いです」
「ふふん、そうでしょう」
「ですがいつものリーナ様も世界一可愛いです」
「ほんと!?」
「はい。でも木登りはお止めくださいと昔から申し上げていますが――」
「ふふ、トラコちゃん聞いた?ジェイズが世界一可愛いって」
『良かったわねーリーナ』
「「やったわ!!」」
……ん?私の声と重なってどこからか女性の声が聞こえた。
「リーナ様、トラコ様、静かに移動しましょう」
声を潜めたジェイズに促され近くの草木に隠れると前方に黒いフードを被った誰かが駆け込んできた。
「やったわ。これでまた一歩あの方へ近付いた。愚かな欲望まみれのお馬鹿さんたちばかりだったけどだからこそ人々の欲をたくさん手に入れられたわ。ふふ、私はあいつらとは違う。完璧な惚れ薬を作れるんだから。そしてあの方の一番に……ふふ」
魔女だ。乙女ゲームに出てきたその魔女はそう言うと一瞬で消えた。
「ジェイズ、今のが魔女よ魔女」
「ええ、そのようですね」
「魔女といっても身分はとある国の侯爵令嬢なの。母方の先祖に魔女がいて先祖返りで魔女なの」
この世界には魔女がいる。一般的な魔法とは別種の魔法や錬金術が使え、主に薬師として生活している。それがこの世界の魔女だ。
「魔女は良い魔女もいるけど怪しい薬を作って売る悪い魔女もいるのよね。彼女は悪い魔女よ。彼女は自国の王弟に片思いしていてね、ある公爵令息を利用して王弟を手に入れようとするのよ」
「リーナ様」
「なあにジェイズ」
「悪い魔女に自分から近付こうとしないでください」
「好奇心でつい」
「リーナ様」
「今度から気を付けるわ。さ、戻りましょう。グラシアのハッピーエンドを見届けないと!!」
次の乙女ゲームの舞台に進む前にエンドロールを見なくてはね。
私はトラコに乗って王宮に向かった。




