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王女、八つ当たりする


「あ、あのっ!!グラシ……あっ」


 ヘタレデルフィンがいかにヘタレなのかをグラシアに語っていると後ろから呼び掛けられたと思ったらバタンという音がした。


「あらまあ大丈夫かしら?グラシア、私この子を虐めたように見えないわよね」

「見えないと思いますわ。あの、大丈夫ですか?」


 見事にうつぶせに倒れこんだ女の子を起き上がらせる。


「まあ、あなたいつもグラシアに突っかかってくるグループの……誰だったかしら」

「エレナ様ですわ、リーナ様」

「それであなたいったい何故すっ転んでいましたの?」

「す、すみませんわた、私、どんくさくて……」


 私はエレナを上から下まで眺めてみる。茶髪に茶色の目をした小柄な少女だ。


「あら、今の私にそっく……誰が小さいってのよ!!」

「リ、リーナ様!!誰も言ってませんわ。落ち着いてくださいませ」


 そう、デルフィンだけでなくグラシアまで伸長が伸びて私との身長差が開いたのよ。この年の頃は成長期ですからとジェイズが言うけれども。私はその年の頃もどの年の頃も一切成長してないのに。


「ふん、まあ良いわ」

「あ、ありがとうございます……」

「ああ、思い出したわ。あなたグラシアがイメチェンしてからよく目が合うって言う子ね」

「「イメチェン……?」」

「それで?何しにきたのかしら」

「あ、あの……」


 もじもじおろおろもじもじ……。エレナが喋るまで1分近く待った。


「じ、実はこれを見てもらいたくて!!」


 そしてようやく喋ったかと思えば大声で何処からか取り出した紙を差し出してきた。


「まあ」

「こ、これは?」

「これグラシアね」

「え、私ですか?」


 髪をかきあげた今のヘアスタイルのグラシアが微笑む絵姿が描かれていた。


「凄いわ。よく特徴掴んでる」

「ほ、本当ですか?」

「ええ、グラシアもそう思うわよね」

「え、えっと、こんな可愛らしくないと思いますけど」

「あの!!もう一枚良いですか!?」


 そう言ってエレナが差し出したのはグラシアが花を手に嬉しそうに笑う姿の絵だ。


「い、今描いたばかりでい、急いで描いたのですけど」

「あらまあ、さっきのデルフィンから花受け取った時のグラシアにそっくりだわ。恋する乙女って感じで幸せそうに笑ってる」

「リ、リーナ様こいって!!」

「ふふ。これもらって良いのかしら?」

「えっ!!で、でも」

「デルフィンにあげたら喜びそうね」


 それにしても惜しかった。こんな凄い絵師がいるなら女神の絵を描いて売ればもっと布教が……って今からでも遅くないか。それを売って儲けたお金をジェイズとの愛の旅の旅費に――――。そう、日本食を求める旅をして得意料理でジェイズの胃袋を掴む。そしてそして!!むふふ。


「ちょっとあなた来てちょうだい!!」

「ほえ!?」


 私はグラシアとエレナを連れて寮に帰り眼鏡を外し髪の染料を落とした。


「女神メアリーナは基本的なパーツは私に似てるのよ。細かいところは私が言うからまず私をベースに描いて……ってどうかした?」


 固まってるグラシアとエレナに気付いて問いかける。


「リーナ様……とても美しいです」

「綺麗……」

「あら、ふふふん。そうでしょう」

『はわわぁ、リーナ、どうして髪染め落としちゃったのー』


 そこにお茶を入れるためのカップを持ってきた侍女姿のトラコが私の姿を見ておろおろする。


「駄目だったかしら?」

『はわわぁ、ジェイズに怒られても知らないわよー』


 怒るジェイズも見てみたいけどジェイズが嫌がることはしない方がいいわね。


「2人とも、この姿のことは秘密よ」

「は、はい」

「綺麗……」

「秘密よ、わかったエレナ」

「は、はいです!!」


 よし、これで良いわね。


『はわわぁ、仕方ないわねー』


 トラコは侍女、つまり人間の姿で私たち以外に口を利かないからこの間見た目上は黙ってカップを机に用意している。


「さ、今日は何のお茶にしようかしらねー」

「リーナ様、今日は私が」

「良いの良いの」


 トラコはエセ侍女だからお茶を入れるなんてできない。一度やってみたことがあるけどお茶は溢すしカップは落とすし全然ダメダメなのだ。とりあえず10年かけてカップの準備くらいはできるようになった。


 グラシアはこの侍女がトラコだとは言ってないけど何度もこの部屋で会ってるし私が自分でお茶の用意をすることに慣れている。


「エレナは何が良い?ローズヒップなんかどう?エレナっぽくなくて逆に面白い」

「ほえ!?」


 そうしてお茶を飲んでまったりする。


「あの、ところでエレナ様が私を見ておられたのはこの絵を私に見せるためということなのですか?」

「あっ……えっと、それもなんですけどそうじゃなくて……」


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