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王女、お姫様抱っこを望む


「メアリーナ様、そろそろ本当に時間ですわ」

「はわわわぁ、そうねー。ではリーナ、今からとても重要なことを話すわー」

「え、うん」

「あなたは10才で異母兄に仕向けられた刺客によって毒殺される予定だったリーナ・ヤメルトに転生するわー。今話していることは毒で生死の境を彷徨っている間に思い出すのー。同時にあなたの毒を解毒させられるよう神聖力も一時的に上昇させ、更にトラコをあなたの元に転移させるわー」

「いやいや、初めからそうしてくれれば毒殺も防げるじゃない」

「大事なことを話しておくわねー。定められた未来というのはね、意図的に逸らすと別の未来が起きるのよー。私は未来視の力を持っているのだけどあなたが10才で毒を盛られる事件をトラコと一緒に防ぐと代わりにそのジェイズが毒を飲んで死ぬ未来が待ってるわー。それでも良いー?」

「良いわけなーい!!」

「ただあなたが転生することでリーナは記憶を取り戻す前からお転婆を通り越して活発な子に育つわー。というわけであなたはこれからしばらく毒で苦しむことになるけど安心して。膨大な神聖力が毒を浄化するわー。それからリーナの生まれ持った神の力は未来視なの。だからその力を使って上手く未来を変えていってねー」

「なんだか不安なんだけど」


 どうやらこの女神、仕事は真面目にしてるようだけどマイペースというかうっかりしてそうだ。思い出したり神聖力が増えるタイミングが遅くて無駄に毒に苦しむとかないだろうか。


 いや、考えると本当になりそうだから考えないようにしよう。


「大丈夫ー。トラコがいれば私と夢の中で話すことができるから困ったらいつでも呼んでちょうだい」

「女神に不安を感じるんだけど……」

「さあ、じゃあ私が合図したら現実に戻るわよー」

「わ、わかったわ。ドンと来い」

「行くわよー一斉のーせ」


パチン――――


「うあ……ぐっ……」

「リーナちゃん!!」

「リーナ!!」

『はわわわぁ……リーナー、神聖力で解毒しないとー』


 毒で苦しむ私の枕元にいた母と父の隣にトラコが現れ私の身体にのし掛かった。


「じ、自力なの……?どうやって使うのよ……」

『女神メアリーナ様、力を授けてくださいって祈るのよー』

「この……泣き虫女神……力を授けなさい……」


 こんなに苦しいなんて聞いてない。恨みを込めて私が唱えると身体の毒が浄化されていくのがわかった。はわわわぁ怖いわーという声が聞こえてきた気がした。


「リーナちゃん!!良かったー!!」


 母に抱き締められる。母は女神の愛し子で女神の加護を持つマールス王国の元王女だった。母が敬っている女神はとんでもない泣き虫マイペース女神だと言いたい。


「リーナ、この神獣はリーナのー?」


 民の前に立つ時は偉そうなのにプライベートではほわんとしている父がトラコを見ながら言う。


「……ええ、そうですわ……」


 何といっても姫な私。言葉遣いは勉強させられていた。


「そっかー。じゃあこれからはもう安心だねー」

「ザハルト様、そうなのですかー?」

「うん。神の力を持つ者は自分で身を守れるよう神聖力が安定すると神から神獣が授けられるんだよー」


 そういえば父の神獣は鷹だな、父と母とピクニックに行った時鷹に乗りたいと言ったら人が乗れる神獣ではないと両親を困らせたなとリーナとして過ごした10年間を思い返す。


「あ!!ジェイズ!!」


 そんなことよりジェイズだ!!私のジェイズはどこだと動かない身体をどうにか動かそうとする。


「申し訳ございませんでした」

「ジェイズ!!」


 最近声変わりが終わり低いながら聞きやすい柔らかな声が今は苦し気でベッドの側で膝をついていた。


「リーナ様をお守りできませんでした。この命をもって償います」

「いやー!!ダメダメ!!絶対ダメー!!」


 ジェイズを幸せにしたくて転生したのに償いのために死なれるなんてあり得ない。


「お父様も責任を取らせようとしていないのでしょう!!」

「そうだね。謹慎くらいだよ。毒味役も買収されていて護衛騎士が何かできることはなかったからね」

「謹慎……」

「リーナ様、当然です」

「だけど謹慎後は引き続きリーナを守ってね」

「御意」

「ジェイズ、ごめんね」

「何故リーナ様がそのような……」

「だって……」


 ジェイズはリーナが死んでずっと苦しんでいたんだ。どれくらい伏せていたかわからないけどジェイズも同じように苦しんでいたはずだと今の憔悴した顔を見ればわかる。


「リーナ様、私はもっと強くなります。リーナ様の毒味も私がします」

「えっ!!駄目よ!!」

「いいえ、元々毒耐性はありますが謹慎中にもっとあらゆる面を鍛えて参ります。では」

「え、え?」


 そう言ってジェイズは出ていって謹慎明け、元々ハイスペックイケメンだったのにスーパーハイスペックイケメンに進化したのだった。






――――――

「リーナ様?リーナ様、どうされたのです?」


 おっと、いけない。過去回想が長くなってしまった。


 あれから10年経ったが目の前のイケメンは相変わらずスーパーハイスペックイケメンである。


「ううん、何でもないわ。ジェイズが好きだなって思って」

「私もリーナ様をお慕いしていますよ」


 ぐふふ。だがしかし自惚れてはいけない。私の好きはラブだがジェイズのは主を慕っているだけなのだ。


 目覚めた私はジェイズの謹慎明けから毎日好きだと伝えているのにジェイズときたら一貫してこうなのだ。


 ちょっとくらい私が男として愛しているのだと疑っても良いだろうにジェイズは爽やか笑顔でさらっと受け流してくれるのだ。でもまあ爽やかな柔らかい笑顔が見れるのだから良いとしよう。


 ゲームとは違って私に対して過保護だったり一転して雑だったりするけど。抱き上げ方とか子供を抱き上げるそれなんだから。一度くらいお姫様抱っこしてくれても良いと思うの。ってかゲームの私は死んでるんだからジェイズもゲームと違うに決まってるのだろうけど。でもリアルのジェイズも好きだ。


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