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王女、和食で胃袋を掴む


 結論、トラコが引き返すことはなかった。道が狭すぎでトラコが向きを変えることができなかったのだ。


『はわわぁ疲れたわぁ』

「あー面白かった」


 対照的な反応をする私たちは先行して目的地の洞窟にたどり着いていたジェイズを見つけて駆け寄る。


「ジェイズ、ちょっとダンジョンっぽくて面白かったわね!!」

『はわわぁ怖かったわぁ』

「あっトラコちゃん!!」


 トラコがジェイズに身体を押し付けるから私もジェイズに抱きつく。


「トラコちゃん、ジェイズに色目を使うの禁止だって言ってるじゃない。めっ」

『はわわぁ……だってー怖かったんだものー』

「リーナ様、トラコ様、こちらの安全性は確認できました」


 ジェイズが私とトラコを撫でながら言う。


「ジェイズは真面目ねぇ」

「リーナ様を危ない場所にお連れするわけにはいきませんから」

「ふふふ。そんなジェイズが好きよ」

「私もリーナ様をお慕いしています」

「おおおおい!!お前ら本当どこでもいちゃつくな!!話が進まないんだから!!お前らのイチャイチャのせいで無駄に話が長引くんだぞ!!」

「全く、デルフィンは心にゆとりがないのね。余裕のない男はグラシアに嫌われるわよ」

「なっ!?」

「ね、グラシア」

「え?」


 きょとんとするグラシアと青ざめるデルフィンをさらにからかおうとしていたらアドルフから声がかかる。


「デルフィンをからかうのは楽しいだろうがその辺にしてくれるか?話をしようじゃないか」

「アドルフおじさん!!楽しいだろうがってなんだよ!!」

「ふふ、ええそうですわね」


 キャンキャンと騒いでいるデルフィンを放って私たちは洞窟の中で円になって座る。


「さて、じゃあ改めて。俺はアドルフ。十数年前まで宰相をしていた。リーナ嬢、で良いか?」

「ええ、構いませんわ」

「こっちの話はカミラから話を聞いているだろうが俺たちは謀反を計画していた。実際に実行するかはデルフィン次第だったが」

「それだよおじさん!!それならそうと言ってくれれば」


 デルフィンが身を乗り出して叫ぶとアドルフはため息をつく。


「言ったじゃねぇか」

「聞いてねえよ!!」

「まあ良いだろ。結果的に決めたんだ」

「それは……まあ」

「国に不満を持つ者は多い。この場所を拠点に各地に散らばっている。国を出ているやつもいて、そこにいるリオネルもそうだ」

「あら、そうなの?」

「お兄様が……?」


 ゲームではそんな設定なかったはずだけど。


「そもそもリオネルと面識が?」

「これでも元公爵だ。アリエント公爵家と血縁関係もあるし付き合いもある」

「アドルフ殿にはアリエント初代当主の話をたくさん聞かせてもらったな!!」

「うちに嫁いだ女性が初代の大ファンで初代が書き残した書物をいくつか持ち込んでいたんだ。リオネルにはよくその書物を貸していた」

「そういえばグラシアには貸せてなかったな。その書物はうちにある書物にはない初代様のまた違った一面が記されていたんだ」

「まあ、そうなのですね」

「初代様は大変グルメなお方だったのだがそこに書かれた料理は当時も現代でも知られていない幻の料理なんだ」

「まあ!!どんなお料理なのでしょう」

「例えばそうだな、テンプラとか」

「テンプラ……ですの?」


 なんですって?


「あとはニクジャガとかサシミ」

「ニクジャガ?サシミ?」

「初代様はワショクが食べたいとよく言って大陸を超えて探し求めていたが見つけられなかったそうだ。だから俺は初代様の無念を晴らすため旅をして遂に」

「遂に!?」


 この大陸と日本では食文化が全く違うし調味料も違うし再現できなかったのに他の大陸にはあるのかと私は身を乗り出す。


「ショウユなる調味料の元になる豆を見つけたのだ!!」

「やったー!!」

「リーナ様?」

「いや、でも醤油の作り方なんて知らないわ。でもきっとどうにかなるわ。してみせる!!」

「リーナ殿はショウユをご存知なのか!?」

「知ってるわ。天ぷらも肉じゃがもお刺身もね」

「おお!!それは凄い!!」

「ジェイズ、待っててね。私の得意料理は和食なのよ!!本領発揮してジェイズの胃袋を掴んでみせるんだから!!」

「はい、リーナ様」

 

 あら?ということは初代アリエント公爵が転生者でリオネルは違うみたいね。


 まあ、そんなことより醤油作りね。頑張ってジェイズの胃袋を掴むわよ。エイエイオー。

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