王女、自慢する
「おう、フィン。元気にしてたか?」
「元気にしてたかじゃねえよ!!アドルフおじさん!!」
週末私はジェイズとグラシア、デルフィン、カミラ様とジェイズの生まれ育った土地にやってきた。
畑で芋を片手に手を振る大柄な人にデルフィンが掴みかかる。
「あの方がアドルフ様ですね?」
「ええ、そうですわ」
「どうしたどうした。それより背がぐんと伸びたな。成長期だな。あはははは」
アドルフ様に頭をぽんぽんと叩かれるデルフィンはその手を払いのける。
「アドルフおじさん!!俺は言いたいことが山ほどあんだ!!」
「おう、なんだ?」
「まず母さんに危ないことをさせるな!!」
「まず母さんの心配とは優しい子だなぁ。な、カミラ」
「ふふ、そうね。お母さん涙が出るわ」
カミラ様がデルフィンの頭を撫でるとデルフィンが叫ぶ。
「うるせえ!!撫でるな!!」
「あらあら」
「それからおじさんが元宰相で元公爵なんて聞いてねえ!!」
「聞かれなかったからな」
「知らねえんだから聞くわけねえだろ!!なんで元宰相がこんな田舎で芋掘ってんだよ!!」
「ばあちゃんがまた腰痛めちまったんだわ」
「え、ばあちゃんが?大丈夫なのか?」
と、そこに畑の側の家からおばあさんが出てきた。
「おやまあデルフィンちゃんや。帰ったのかい」
「ばあちゃん!!大丈夫か!?って洗濯なんて俺やるよ!!貸して!!」
「デルフィンちゃんは優しいのお。でもばあちゃん腰治ったんだ」
「そうなのか?ってこのでかいシャツ誰のだ?あいつ出稼ぎから帰って来てんの?」
「ああ、それは腰痛に効く薬をくれたお兄ちゃんが」
おばあさんの手から洗濯かごを受け取ったデルフィンが大きな茶色のシャツを手に話しているとおばあさんの家の裏手から斧を持った大男が現れた。
「おーい婆さん!!薪割り終わったぞ」
「ありがとうねぇ」
「良いってことよ。泊めてもらった礼だ」
「お兄様……?」
「お?おお!!グラシアか!!」
大男が斧を持ったまま歩いてきてジェイズがグラシアの隣にいた私を守るように立つ。
「ん?誰だ?……って、あんた、まさか……」
大男はジェイズを驚いた顔で凝視する。
「伝説の紅蓮の鬼か!?うわぁ!!すげえすげえ!!え、なんで紅蓮の鬼が!?紅蓮の鬼がいるってことはなんかすげえ任務ぐぁ!!」
大男が斧を持った手を振り回して子供のようにはしゃぎジェイズは素早く大男の口を塞ぎ取り押さえる。
「とにかく斧を放しなさい。リーナ様が怪我をしたら殺しますよ」
「まあジェイズ。怪我くらいで殺さなくても」
「リーナ様、ちゃんとリーナ様の知らないところで始末します」
「いや、そういう問題じゃないんだけど。とにかくその人グラシアのお兄様なのね?」
私はグラシアに尋ねる。
「えっと、はい。確かにお兄様ですわ」
「そう、ということだからジェイズ、乱暴はダメよ」
「ええリーナ様。少しお話をしてきます」
そう言ってジェイズは大男、グラシアの兄の手から斧を回収し首根っこを掴んで家の裏に歩いていった。
「あの、リーナ様、紅蓮の鬼とは?」
グラシアの問いに私はうーんと悩む。冒険者であることは伏せるべきか。グラシアたちも私たちが普通の貴族だとは思っていないだろうけど。まあでも。
「ジェイズの通り名よ。かっこいいでしょ?」
通り名があるのは強くてかっこいい証だ。むふふ、ジェイズはかっこいいのだ。
「通り名……ですか」
「いや、どこでの通り名だよ。まさかあらゆるところでお前を怪我させた奴ら殺していく鬼ってことか?」
「ふふふ、デルフィンは危なかったわね」
「怖っ!!」
そう話しているとすぐにジェイズたちが戻ってきた。
「リーナ様、お待たせしました」
「おかえりなさい。話はできた?」
「ええ。彼、リオネルは従順な僕になりました」
「あらそうなのね」
「従順な僕!?良いのか!?」
「グラシア!!見てくれ紅蓮の鬼……じゃなくてジェイズ殿のサインだ!!」
「えっと、お兄様……良かったですわね」
私はジェイズの側に寄るとこそこそっと聞く。
「何て言ったの?」
「冒険者のことは伏せるようにと。極秘任務中でありあなたの妹にも関係するので協力するように言いました」
「そう。すごいジェイズのこと好きみたいね」
「何故でしょうね。とにかく手合わせしたいと煩いので後で相手をしてきます」
「ふふ、そう」
良くわからないけどジェイズに憧れてるのね。ジェイズに憧れるなら悪い人じゃないわ。グラシアにシャツの裾に書かれたジェイズのサインを見せながら喜んでいるリオネルを見てそう思った。




