表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/78

王女、目指す方向を知る


 今更だが女神メアリーナから言われている役目を果たす際の注意事項がある。


 役目を果たすためにその乙女ゲームごとに未来視やトラコのことをはっきり告げて良いのは救う対象本人と救うために鍵となる人物だけなのだ。ざっくりしてるだろう。でもここの場合はグラシアとデルフィンに当たるはずだとジェイズが言うのだ。ジェイズの言うことはいつも正しい。


 だからこの2人以外には隠しながら話を進める必要がある。


「母さん、信じられないことかもしんねえけど俺はリーナ様の言うことを信じる。その上でぜってえそんな未来は来させたくねえ」

「デルフィン……。わかりました。私も信じますわ。それにあの王族はやりかねないと思いますもの」

「やはりそうなのですね」

「ええ。アドルフ様が仰っています。この国はもう何代もアドルフ様までの宰相が支えてきたのだと」

「王族はそれほど愚かしいということですね」

「はい」


 こうはっきり答えるほどだ。思っていた以上にこの国は酷い状態なのかもしれないわね。アドルフ様が宰相を辞して十数年が経っているのだし。


「グラシアを助けるためにはデルフィンが必要なんです。2人がくっつくことがこの国を平和へと導くのです。一度崩れますけど」


 王宮が。


「まあ!!デルフィンやったわね!!初恋が実って!!」

「実ってねえ!!つーかなんで知って!!あっ!!」


 デルフィンが顔を赤くする。


「ふふ、お母さんには隠し事できないのよ」

「くっ……」

「話はわかりましたわ。アドルフ様の協力が必要ということですわね」

「初めは少しお名前を借りたいくらいにしか思ってはいませんでした。どうやらアドルフ様は神の代わりに誓いを立てられるくらいに敬われているようでしたのでリリア信奉者の新たな信奉先になってもらおうかと」

「アドルフ様が……ふふ、それはどうかしら」


 カミラ様がおかしそうに笑ながら椅子に座る。


「駄目でした?」

「アドルフ様は確かに魅力的ですが少々泥臭いです。貴族の男子学生にはわからない魅力だと思いますわ。リリア様の代わり……私は女神メアリーナ様が良いかと思います」

「げ」

「リーナ様?」


 思わず声が出てしまった。ごめん弱虫女神。


「この国はそこまで神信仰は高くはないのですが昔から女神メアリーナ様のお話は親しまれ敬う方は多いのです。私が学生の時も男性は伝え聞くたおやかで繊細なメアリーナ様に憧れていました」

「プッ……」

「リーナ様……」


 思わず吹き出してしまったらジェイズにも呆れられてしまった。ごめん。だって気に入らないことがあると夢に出てきて文句をつけてくるあの女神がたおやかで繊細だって。


『はわわわぁ、リーナー、今日もメアリーナが来るわよ』


 まったく、長い間ヤメルトを放置してたっていうのに私のことはこんなに監視してくるなんて。


「私も女神メアリーナ様の逸話は幼い時からよく聞いていました。リーナ様、私も皆様に崇められるのでしたらリーナ様か女神メアリーナ様だと思いますわ」

「だから私仰々しいの嫌いなんだってば」

「断固拒否です。リーナ様は駄目です」

「そうそう、断固拒……そこまで?」


 崇められのは御免だけどジェイズにそこまで否定されると何だか複雑だわ。私これでも神の末裔で未来の女王なのだけど。


 そりゃ拝み倒されるのは嫌だけど民に慕われない女王ってどうなのよ。上に立つもの……カリスマ性がないとか?ジェイズもそんなに私にはカリスマ性がないから無理だって思ってるのかしら。ちょっとショックだわ。


 でもまあジェイズの言うことは正しいものね。きっとこれからだわ。あ、なるほど!!ジェイズは従順な神信者だもの。神の末裔らしく慕われる女王を目指せというメッセージね。つまりそうなればジェイズは私を女としてみてくれるってことね!!そうなのね、むふふ、わかったわジェイズ!!任せて!!


「こほん。そうね、今の私はあのたおやかで繊細ふふ……な女神メアリーナには遠く及ばないわ」


 いや、待てよ。ジェイズはあの泣き虫女神のような女が好きってこと?ちょっとちょっと、そんなの聞いてないわよ。


「リーナ様、リーナ様にはリーナ様の魅力がありますよ」

「そ、そう?ジェイズがそう言うなら良かったわ。ではリリア信奉者には女神メアリーナ様を存分に崇めてもらい、アドルフ様にはどうします?カミラ様」

「それなのですが、このお話、アドルフ様がなさろうとしていることの1つにしてくださいませんか?」

「アドルフ様がなさろうとしていること?」

「はい。謀反です」

「謀反……そうですか」

「おおおい!!何普通に納得してんだ!?謀反!?アドルフおじさんが!?」

「そうよ。実は私、学園での王子の様子を報告する役目中なの。もちろんデルフィンを見守るのが一番だけど」

「はあ!?何してんだよ母さん!!な、は……はあ!?危ねえだろ!!アドルフおじさんもなんで母さんに」

「これは必要なことなのよ。でもまだ画策段階よ。でも謀反の後に王座につくのはデルフィン、あなた。だから謀反を起こすかどうかの見極めをデルフィンに頼んだのじゃない」

「……は?」

「アドルフ様に言われたでしょう。学園で王子を見極めてこいって」

「……え、あれはグラシア様の相手として見極めてこいって話だったろ!!」

「まあ、デルフィンったらそんな意気込みで学園に来てたのね。ね、グラシア」

「え……あの……」


 俯くグラシアにデルフィンが顔を赤くする。


「いや、その……くそ、アドルフおじさんめ!!グラシア様の話してた後に言われたらそう思うじゃねえか!!」

「あら、でもデルフィン。グラシアを手に入れるなら王子を蹴落とさないといけないんだから王座も手に入れるでしょ」

「へ?」

「なによ。グラシアを助けることしか考えてなかったとか?」

「ああ」

「デルフィン、グラシア様やお母さんやお母さんの両親のように人生をめちゃくちゃにされる人が今まで大勢いたわ。これまでもそう。かつて王弟とマールス王国の王女様との婚姻で繋がったマールスとの縁は数代後愚かな王がマールスに攻めいるという形で壊してしまった。魔鉱石のないこの国はアドルフ様の私兵団のおかげで抑えられているだけで魔物の脅威に苛まれてる」

「この国も魔鉱石がない国なのよね」


 マールス王国。魔物を神聖力を使って浄化するこの世界で唯一神聖力以外で魔物に対抗できる魔鉱石という石を採掘できる国。私のお母様の故郷。


 魔鉱石や女神の愛し子目的で攻められやすいマールス王国は他国へ王女を嫁がせその国に支援してもらっている。


 だからといってマールス王国の軍事力が弱いわけではない。どころかお母様によるととても強いそうで他国に下手に出ているわけではないとのこと。むしろ国王は代々家族思いの策士で家族と民のために頑として戦う。


 はね除けた後攻めてきた国には100年魔鉱石を流通させないと定めている。この国がマールスを攻めて100年以上経っているのにマールス王国から魔鉱石を取引できないということはマールスから赦されていないということだ。


 お母様が仰っていた。マールス王国の王族は国民が血を流すことを憂い、同時に他国の罪のない民が魔物の脅威に苛まれることを憂いている。綺麗事だけで世界は成り立たないのだろうけれどだからこそ民のためにマールスと和平を結んでほしいと。だからきっとレイジア国は上辺でも謝罪すらせず和平の交渉もしていないのだろう。


「魔鉱石がなくてもどうにかなってる、だから問題ない。王族はそう思っています。それは何もしない王族に代わってアドルフ様のような人たちが立ち上がって国民を守ってきたからなのに」

「私利私欲、プライド、そんなもののために自国の民を危険に晒す。そんな王はいない方が良いわ」


 なんて国を出て国を危険に晒している私が言える話じゃないけど。そんな私が言っても説得力がないけど私だってヤメルトの民を思ってるわ。だってそうでしょ。お母様が亡くなってすぐに国を出た私が見たのは国のあらゆる場所でお母様を思ってお母様が民を守るために歌ってきた歌を歌ってお母様を見送る民の姿だもの。


 お母様は王ではなかったけれど私は王族というものをお母様から学んだ。というとお父様はと思うだろうがお父様はお父様で懸命に民のために戦っている。王は民がいて王と成るんだ。


「リーナ様……」

「こほん、他国の事情に首を突っ込みすぎるのは良くないわね。私はあくまでもグラシアを助けるだけ。他のことを考えるのはこの国にいるあなたたちだわ。デルフィン、どうする?」

「……そんなこと聞いてこのままで良いとか言えるわけねえだろ」

「あらそう?私はジェイズの幸せが一番だから他は二の次になってしまうわよきっと」

「お前……先生、違うんだろ?」

「ええ。リーナ様はリーナ様ですから」


 ちょっと何?


「俺、今は民を守るって言われてもピンとこねえ。でも母さんが幸せになってくれればってのはわかる。グラシア様にもずっと笑っていてほしい。不幸の元凶である今の王や次の王になる王子をぶっ潰したい。……それで良いか?」

「デルフィン……」

「良いんじゃないかしら」

「デルフィン様……」

「決まりね!!謀反しましょう!!」


 乙女ゲームでは謀反のむの字も出てこなかったけど私が関係ないところで動いていたのだから仕方ないわよね。


 謀反を決断させることに大きく影響を与えてしまったと知ったのはレイジア国を出た後のことだった。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ