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王女、対策を考える


「ところでリリア信奉者の方はどう?」

「俺は駄目だった。まだ使いこなせてねえからかな」

「いえ、リーナ様、私がやっても効果はありませんでした」

「あらまあ。では私が試してみた方が良いわね」

「お手を煩わせてしまいすみません。ただ……」

「どうかした?」

「あくまでも私の推測ですが魅了がかかる最中は神聖力が効いてかかりきった後に効かないということはかかりきった後魅了が消えてるのではないかと」

「ん?消えてるなら信奉者にならないのではないかしら?」


 ジェイズの言葉に皆が首をかしげる。


「魅了の力、私たちは呪いの類いだと考えていますが魅了はきっかけを作っているに過ぎないのかもしれません」

「きっかけ?」

「例えば近頃惚れ薬なるものが売られているそうです。その薬の効果は一晩。ですが効果が切れた後も惚れている間の感情を引き続き持つことがあるのだそうです」

「まあ、惚れ薬なんてあるのね!!」


 それがあればジェイズも私に惚れてくれるかも?いやいや、私は私の大人の女の魅力で惚れさせたい!!


「それ嫌いなやつでもそうなのか?」

「いえ、嫌いな人に使えば効果が切れた後に余計に嫌いになった実例があるそうです。感情を無理矢理操作されていますからね」

「ふん、そりゃそうだ」

「そうよね、薬や呪いで人の心を手に入れるなんて」

「下衆のすることだ」

「……媚薬も駄目かしら」

「あん?」


 媚薬でジェイズに性的興奮を感じさせればどうかしら。身長が伸びることを待ち続けるより身体でジェイズの心を鷲掴みにすれば。


「リーナ様、媚薬はこの大陸に存在していますがそんなもの必要ありません。いつでも「あー!!ごほんごほん!!あー!!喉が痛むな。乾燥してるみてえだ!!」」

「まあ、デルフィン様大丈夫ですの?先生、お水をいただいてもよろしいでしょうか」

「はいどうぞ」

「おい先生よ!!イチャイチャイチャイチャすんのは腹立たしいが良いとしてグラシア様の前で行き過ぎた発言はすんじゃねえ!!」


 グラシアが水を用意するために席を外してすぐデルフィンが前に座るジェイズに顔を近づけ声を押さえつつガンを飛ばす。


「失礼しました。教師として自制します」

「おうそうしてくれ」

「ふふふ、デルフィンはグラシアが本当に好きねぇ。でも純粋すぎると後々困るんじゃないかしら」

「うるせえ!!」

「あら、皆さまどうされましたの?」


 何となく私もこそこそ話に参加していて3人で顔を寄せあって話している状態に戻ってきたグラシアが首をかしげる。


「何でもないわよ」

「そうですか?あ、どうぞデルフィン様」

「す、すみません。ありがとうございます」


 デルフィンはグラシアから受け取った水を一気に飲む。


「話は戻りますがリーナ様が試してもらって効果がなければその可能性が高いです」

「それだとどうすれば良いのかしらね。単純にただ信奉してるなら力や魔法でもどうしようもないし。信奉……」


 もし私がジェイズを愛しているのが何かの力によって無理矢理操作された結果だとして周りに何をされても何を言われても聞く耳を持たないでしょうね。


「あの……」

「グラシア?」


 デルフィンの隣に戻ったグラシアがおずおずと手を上げてみせた。


「私は幼い頃から初代様を尊敬していました。しかしいつの間にか父と母の言うことが絶対で正しいことなんだと思い込むようになっていました。それが間違っていると思ったのは兄が家を出ていった時です。兄は出ていく直前私に初代様の日記を渡して仰いました。思い出せと。お前が倣うべきは愚かな両親ではなく俺たちが憧れた初代様だろと。それから私は何か見えない鎖のようなものから解き放たれたような気がして。……いけませんわね、リーナ様に叱っていただくまで同じように囚われていたようです。リーナ様、思い出させてくださりありがとうございました。……あ、えっと、すみません、そういうお話ではなかったですわよね」


 私はもじもじするグラシアの頭を撫でて言う。


「謝らなくて良いのよ。きっとお兄様の言葉がグラシアを私の見た悪役令嬢グラシアになる未来を変えたのね」

「お兄様が……」

「正しいと信じる心に別のものを信じさせる……ってのはどうだ?正しいというかリリア信奉から別のものを信奉させるようにするんだ」

「別のもの、例えば?」

「リーナ様はどうでしょう!!」


 グラシアがすごく笑顔で両手をあわせて言う。


「いやいや、私仰々しいの嫌いなのよ」

「そうなのですか」

「ああ、しょんぼりしないでちょうだい」

「アドルフ様はどうでしょう」

「ジェイズ、アドルフ様って?」

「門番が誓っていた人ですよリーナ様」

「ああ、いたわね」


 確かアドルフ様に誓ってそのような不正はしない、だったわね。


「誰のことかわかったの?」

「はい、元宰相の男だそうです」

「グラシア、知ってる?」

「え、はい。とは言ってもずいぶん前にお辞めになっていて公爵位も現宰相に継いでいるので私もお会いしたことはありませんわ。幼い時に会ったことがあるかもしれませんけど」

「宰相といえば今は王子の取り巻きの父親ね」

「はい。現宰相のお父様がアドルフ様です」

「何で辞めたのか知ってる?」

「すみません、存じ上げませんわ」

「どうやら国王に忠言して国王が怒り宰相を辞めさせたそうです。今はラナベル領で隠居していると聞きました」

「え、ラナベル?」

「そういえばラナベルはデルフィンが育った場所ね」

「アドルフ……まさかアドルフおじさん?いや、まさか……」

 



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