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王女、女神と話す



――――――――


「はわわわぁ!!な、何をしますの!?」

「良いから女神!!黙って私をジェイズのいる世界に転生させなさい!!」


 私は死んで真っ白い空間で目覚めたのだけど、目の前の美女が自らを女神だと宣うものだからこれが所謂異世界転生だと思って女神に掴みかかったのだ。


「ジェイズ……どこのジェイズかしら」

「ジェイズ・レビエア!!ヤメルト王国のイケメン騎士!!」

「ヤメルト……ああ、良かった!!そう、その国に転生してもらおうとしてたのよぉ。だから肩を揺らすのは止めてー」

「あら、そう?じゃあ早くしてちょうだい」


 私は女神の肩からパッと手を放す。


「待って待ってー。お願いがあるのよー。お願いというか指令っていうのー。時々いるのよー。神からの指令を授けて転生させる人間がー」

「指令ですって?あなた何様よ」


 私が睨むと女神は涙目になる。


「はわわわぁ。怖いー。だから女神様なのよぉ」

「で、女神様の指令ってのは何なのよ」

「まあ、聞いてくれるのねー」

「聞かないと転生させてくれないんでしょ?」

「そうよーあのね、未来を変えてほしいのー」

「具体的には?」

「あなたはヤメルト王国の姫リーナに転生してもらうわぁ。それでまずヤメルト王国から神の力を持つ姫が死ぬという未来を変えてほしいのよ」

「私がその神の力を持つ姫になるってこと?」

「そうよー。死線を潜り抜けて生きてほしいのー。あなたはとても強そうだから暗殺も毒も躱せるかと思ってー」

「躱せるか!!でもその姫はジェイズが守れなかった姫。つまり私が死ななければジェイズは幸せになれる!!やってやるわ!!」


 そうよ、根本的に解決するには死ぬはずだった王女が生きれば良いのよ。絶対死んでなるものか。


「あら嬉しー。それで次はねー」

「次?」

「レイジア国に行って悪役令嬢を助けてほしいのー」

「レイジア?もしかして乙女ゲームシリーズの?」

「そうよー。王家を魅了して乗っ取ろうとするヒロインが陥れようとする悪役令嬢を助けてほしいのー」

「ええ!?あれ、そういう話だった!?」

「あのねーここはゲームと似ているけれどゲームの中ではないのよー。だから色々な思惑があったりするのよー。で、その後はそのヒロインを裏から操っていた魔女から悪役令息を助けてほしいのよー」

「魔女、悪役令息……あのゲームか……」

「その次はー」

「って、いったいいくつあるのよ!!」

「まだまだあるわよー」

「まさかシリーズ全部とか言わないわよね」

「さあどうかしらー。あなたが死んだあとも新作が出てるからー全部ではないかもー」

「くっ……あのシリーズなんでもありだから何十ってあるのに。理不尽な」

「じゃあ止めるー?」

「いや、ジェイズのために転生したい!!」

「良かったー。まあ他の指令は別の機会に伝えるわー。あとねー」

「まだあるの!?」

「これは指令じゃなくて本当のお願いだからやってくれなくて良いのだけどー」

「何よ」

「聞いてくれるのー?」

「聞くだけ聞くわ」

「ありがとー。あのね、あなたはヤメルトの女王になることになると思うのだけど」

「あら、そうね、そうなるのね。ってことはジェイズは王配ってことになるわね。ぐふふ」

「あのージェイズはあなたの彼氏でもないのだけれどー」

「良いのよ!!ジェイズは生涯私が幸せにするんだから!!」

「……我らがビオナ様、本当に彼女で大丈夫でしょうか」

「それで?願いって何なの?」

「あの、あのねー」

「うん」

「ヤメルト王国の後宮をなくしてほしいのよー」

「後宮を?」

「そうなの。元はといえば私の夫のデルダが人間界で悪さをしてね、それを我らがビオナ様が咎めて人間のことを理解するために人間になって国を創るよう命令したことが始まりなのよー」

「え、本当にヤメルトの王族って神の末裔だったわけ?」

「ええ。デルダの罰だったのだけど、心配だったから私も自分の仕事の合間に人間になってデルダを支えていたのー。なのに、なのにね、聞いてくれる!?」


 女神に肩を掴まれてぐるんぐるん回される。


「う、うん」

「デルダったら私にしか興味がないって言いながら人間の間にも子供を作ったのよ!!他の国に倣って後宮を作ってみたとか言って!!信じられる!?裏切りだわ!!裏切りー!!」

「それは可哀想に」


 大泣きしながら怒る女神。私はリアルで彼氏はできなかったけど友達はよく浮気されたーって泣きついてきたな。そういえばつい最近もカラオケに付き合う約束してたけど死んじゃったわ、ごめんと乙女ゲームを勧めてくれた友達に心の中で手を合わせて謝る。


「わかってくれる!?」

「一夫多妻の日本生まれとしては浮気は駄目だけど後宮があるならっていうか神の常識はどうなの?」

「別に決まりはないわ!!だからって!!酷いわー!!うわーん!!」

「ああ、よしよし。まあ、それじゃあ、ヤメルト王国を潰しちゃえば良いんじゃない?神ならそういうこともして良いんじゃ?」

「グスン……。あなた人間なのに非道なことを言うのね。神の力を持つ者はね、私とデルダ2人の力を継いでいるのよ。私の子供の子供のーうんと子供。その子たちが築いてきた国を壊そうとは思わないわ」

「なるほど、ルートによっては大国の属国として存在するものの神の力を持たない人の子孫が王になったり別のルートだと滅んだりするものね。それは嫌だってこと?」

「人の国は永遠じゃなくていつかは滅びるものかもしれないけど私が望んでいるわけではいないわ。って私が言えることではないけど」

「どうして?」

「デルダから話を聞いてショックを受けた私は人間の姿で大陸をフラフラしていたの。ヤメルト王国のことは放置していたわ。でも私に良く似た女の子に出会ったの。メアリーという子でね、小さな国の王女だったメアリーは出会った頃10才で幼いながらに魔物の被害を受けたり貧しい暮らしをする民を憂いて毎日泣いている子だったの。でも優しくてデルダのせいで泣く私を慰めてくれたのよ」

「幼子に慰められる女神様って」

「私はメアリーの国とメアリーに加護を与えて魔物に対抗できる術を与えたわ。でも……」

「うーん、それもシリーズにあった国なのでは?もしかしてその国ってマールスだったり」

「ええそうよ」

「やっぱりか。乙女ゲームの舞台になってはいないけどキーになる国じゃない。めっちゃ狙われてるでしょ女神の愛し子やら魔鉱石やらで」


 マールス王国は魔物を神聖力を使って浄化するこの世界で唯一神聖力以外で魔物に対抗できる魔鉱石という石を採掘できる国だ。更に女神メアリーナの加護を持つ女神の愛し子という存在が王女として生まれ、その王女は通常の神聖力持ちよりも遥かに強い力を持つ。


 だけどそのせいで他国から狙われやすく、マールス王国は女神の愛し子や他の王女を他国に嫁がせて縁を繋ぎマールスを支援してもらっているのだという。


「そうなのよ。私のせいで……うう。でも安心して。メアリーは死んだあと私の右腕になってくれたわー」

「なんですって!?右……腕……?」

「あ、この腕になったわけじゃないのよ勿論」

「メアリーナ様ー!!メアリーナ様ー!!告示はまだ終わりませんのー!!次の仕事が待っていますのよー!!」


 白い空間に急に人が現れて駆け寄ってきた。


「あらメアリー。ちょうど今あなたの話をしていたのー」

「私の話は良いですから。仕事が溜まっているのですよ。早くしてくださいまし!!」

「むー……あ、見て、この子が今話したメアリーよ」

「え、どこがあなたに似てるんです?」


 見た目は女神に似ているけどぽわわんで泣き虫な女神とはだいぶ違う。


「見た目がそっくりだし昔は泣き虫なところもそっくりだったのよ。今ではこんなに逞しくなってしまったけれど」

「それは死んで何百年とメアリーナ様の付き人をしていれば逞しくもなりますわ。それと、メアリーナ様がいつまで経っても呼びにこられませんからリーナ様についていく神獣も連れてきてしまいましたわ」

「神獣……ってあの?乙女ゲームに出てくる神の目ってやつ?」

「ええ、その神獣です。ヤメルト王国はデルダ様もメアリーナ様も目の管理を放棄されていましたがお二人に仕える神獣の方が自らヤメルトを見ているのです。神の力を持つ者には神獣がもれなくついてきますよ」

「もれなくついてくるとか何だかお買い得?じゃなくて可愛い!!大きな虎?で良いの?」


 大人でも背中に乗れそうな大きな白い虎が空間に現れ動物好きな私は興奮する。


「ええ、白虎です。リーナ様、名前を授けてください」

「名前……そうね、じゃあトラコで!!」

「トラコ……」

「あら、変わった名前ねー」

「あ、メスだった?オスだった?」

「神獣に性別はありません。ですが仕える神に近くはなります。この神獣はデルダ様ではなくメアリーナ様に仕える神獣ですからメスに近いです」

「じゃあトラコちゃんだ!!」

『はわわわぁ……メアリー、本当に私が行かなくては駄目なのー?』


 驚いた。トラコと名付けた白虎が喋ったのだ。


「駄目ですわ」

『指令を持つ者だなんてー。そんな大役私に務まるかしらー』

「大丈夫ですわ。頑張ってくださいまし」

「あの、メアリーよりよっぽどこの神獣の方が女神に似てるんですけど……」

「はわわわぁ……白虎が行くのねー。怖いわねー」

『怖いわー』

「大丈夫なの?」


 とても心配だ。トラコは女神にすがり付き女神がトラコに抱きついている。


「大丈夫です。ちょっと怖がりなだけで神獣としての力は今ここにいる神獣の中で一番ですから」

「そ、そうなの」


 

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