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王女、暴走する


「ジェイズ、この部屋は?」

「私に与えられた教師部屋です」

「1人で使ってるの?さすがジェイズだわ」

「神聖力の使い手としての教師は貴重だそうで」


 そう、ジェイズはスーパーハイスペックな神聖力の使い手で特別講師として教鞭をとることになったのだ。


「凄いわねジェイズは」

「ふふ。では皆さん、こちらに座ってください」


 私はジェイズの隣に、向かいのソファにグラシアとデルフィンを座らせたジェイズ。


「さて、そこのあなた。リーナ様を幼女だと言い暴言を吐きましたね」

「ひぃ!!」


 ジェイズの笑顔を見て凍りつくデルフィン。


「まあまあジェイズ、落ち着いてちょうだい」

「リーナ様」

「幼女なんだから仕方ないわね。同じクラスの人にしか説明していないのだし」

「……リーナ様は12才ですが天才過ぎて飛び級されたのです」


 という設定にしたのだ。20才なのに身体が成長しないなんてこの世界のどこを探しても事例がないことを話すよりずば抜けた天才だと言った方が信じやすいだろうと。16才から18才の少年少女が通う学園にいくら天才だと言っても10才はないだろうと、でも身長を考えると12才くらいが妥当だろうということになった。それでも無理があるなんて言わせないわ。


「このちんちくりんが天才だと?」

「ちょっとー!!ちんちくりんって何よーって言うのよグラシア!!」

「おいお前、いい加減にしろ。リーナ様を侮辱するな」

「ひぃ!!」

「ひゃあ!!ジェイズ!!どうどう!!」


 ジェイズがどこから出したのか剣をデルフィンの首に突きつける。


「私がこの程度の悪口に怒るわけないじゃない。ジェイズったら私のことが好きすぎて敏感になりすぎよ。やだ、敏感ってなんかエロい?あら、私ったら乙女なんだからそんなこと考えちゃ駄目じゃない」


 いけないいけない。変態になるところだったわ。ジェイズに変態って蔑まれたらどうしてくれるのよ。でも蔑んだ目のジェイズも良いかも。好きだわ。


「こいつらヤバい男と女だ……」

「リ、リーナ様……」

『はわわわぁ。リーナー現実に戻ってきてー』

「あっと、ジェイズが好きすぎておかしくなってたわ。なんの話だったかしら。そうそう、ジェイズ、有力な情報を手に入れたの。なんとこのデルフィン少年はね、なんとこのスタイル抜群な華やか系美女グラシアのことが好きなのですって。ふふふ、高嶺の花なのにね」

「くそ!!わかってるわ!!だがしかし!!お前はわかってない!!グラシア様はな!!実は可愛いもの好きで甘いものを食べるととびきり可愛く笑う可愛い系女子なんだぞ!!」

「まあ!!そうなのねグラシア!!」

「な、何故それを……」

「ふふふ、グラシアったら真っ赤だわー」

「あ、うわー!!すみません、グラシア様!!じゃなくてアリエント嬢!!」

「こほん、皆さん落ち着いてください」

「あら、ジェイズも落ち着いたのね」

「ええ、すみませんリーナ様。大人気なかったです」

「ふふ、ジェイズったら」

「あーあー!!で、話ってなんなんだよ!!全然話進まねーじゃねぇか!!」

「あら、私としてはずっとジェイズと語り合っていて良いのだけどまあ良いでしょう。デルフィン、あなたグラシアを手に入れたくはない?」

「はあ?……はあ!?」

「奪うのよ。あの馬鹿王子から」

「そんなこと……」

「あなた、自分の出自は知ってるの?」

「出自って……まさか知ってるのかお前、なんで」

「知ってるのね。あの馬鹿王子がリリアって女に現を抜かしてのは知っていて?」

「……ああ」

「これからあの馬鹿は大衆の面前でグラシアに婚約破棄を告げた上にグラシアを断罪して国外追放するのよって言ったらどうする?」

「な、な、そんなわけ」

「私は千里眼の力があるの。だからあなたが国王の隠し子だって知ってるわ」

「千里眼……そんなことできるわけ」

「それはまるで女神メアリーナ様では」


 グラシアも驚く。そう、あの泣き虫女神は千里眼を持っていると伝えられている。実際そうなのだ。


「例えばそうね、デルフィンの母親は王宮でメイドをしていて今は学園で掃除のおばさん……といっても国王の目に留まるくらい今でも綺麗なお姉さんに見えるけど、とにかくデルフィンが心配で学園で働いているようね」


 実はこの乙女ゲーム、どうでも良さそうな裏話が散りばめられていて、モブの母親なんてキャラも出てきたりするのだ。


「な、なんで母さんのこと知ってんだよ!!狙ってんのか!?母さんが美人だからって駄目だからな!!」

「どうもしないわよ。このマザコン」

「マザコンじゃねえ!!」

「はいはい。グラシアが可愛いもの好きとは知らなかったけどああ、なるほど、確かに悪役令嬢らしからぬ可愛い猫に見えるライオンのぬいぐるみが部屋に置いてあったわね。強い悪役令嬢を意識させるためのアイテムかと思ったけど」

「な、なんで実家の部屋に置いてきてるライちゃんのことを知ってますの!?」


 ちなみにこの学園は全寮制なのだ。


「これで信じてくれたかしら」

「……」

「確かに神々の加護を授けられたお方がいると聞いたことがあります。マールス王国の女神の愛し子が有名ですが」

「……アリエント嬢が信じるというなら信じる」

「あら、でもわかるわ。ジェイズがとんでもない嘘をついてもジェイズが言うなら信じるもの。愛ね」

「あ、あああ愛だと!?」

「ふふん。恥ずかしがってるうちは両思いなんて夢のまた夢ね」


 あれ?私もジェイズと両思いじゃないのでは?いや、これからだ。大人の身体になればジェイズも意識するに違いないのだ。


「両思いだと!?ば、馬鹿な!!」

「ふん。まあ、あなたたちが両思いになるのは1年は先だわね。デルフィンがあと10センチ以上身長が伸びてからだもの。そう見たの」

「え、リーナ様、そうなのですか?」


 私が見たのはデルフィンはもう少し大人びていたのだ。そう言うとジェイズが驚きの声をあげた。


「どうしたのジェイズ」

「1年以上ここに潜入するのですか?」


 ジェイズが私の耳元で言う。私もジェイズの耳元に口を近付けて囁く。


「大好き」

「ッ!?リーナ様!!」

「あらジェイズ、赤くなってるわ」

「リーナ様!!」

「ごめんなさい、つい」

「ついじゃありません!!」


 恥ずかしがるジェイズも好きだわ。ふふふ。


「おおい!!イチャつくんじゃねえ!!」

「ふふ、お子ちゃまねぇ。そういうことだからデルフィンは早く成長することね。話はそれからよ」


 ふふふ、と笑ってデルフィンをからかっていた一週間後、私は衝撃で膝から崩れ落ちることになる。



 

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