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短編

信じていたけど残念です(棒)

作者: 猫宮蒼

 登場人物のほとんどがろくでもない事だけは先に述べておく。



「オリヴィア・フランドヴェアリ! 貴様が偽りの聖女でありながらそれを隠し、あまつさえ真の聖女を虐げていたことは既に明らかである! 故にこの私、ヘルムート・ディル・ポートセレニアとの婚約を破棄する事をこの場で宣言するッ!!」


 その宣言は、まさに終わりを告げるものだった。


 国王の生誕祭。めでたい祝いの席を台無しにしかねないその発言は、しかし既に彼らの中では決定事項だったのだろう。王や王妃がいない間に、なんて事もなく国王夫妻もその場にいたし、王太子であるヘルムートのすぐ近くには真の聖女らしき少女がいる。


 オリヴィアは「まぁ」と小さな声を上げつつもあまり露骨にならないように周囲を見た。


 一体どこまで話が通っているのやら。

 見れば、自分の両親もこちらを見ている。しかしその瞳にこのような場で婚約破棄を突きつけられた娘に対する心配や怒りといった感情はない。

 あぁ、とっくにわたくしは見捨てられていたのね、と改めて理解する。


 真の聖女らしき人物は、義妹である。

 オリヴィアの両親は政略結婚で、母には最愛の、という言葉をつけても何らおかしくない程に溺愛していた友人がいた。

 その友人と父との間に生まれた子が、真の聖女とされているマリーベルだ。

 誰が見てもその容姿は愛くるしいというだろう。


 母は、実の子であるオリヴィアよりも最愛の友人が産み、結果死んでしまったが故に残された忘れ形見ともいえるその娘をこよなく溺愛していた。

 なのでオリヴィアからすれば、こうなることは何となく予想していたのだ。


 だからこそ両親に見捨てられた……! なんて悲しみに打ちひしがれて心を痛める事もない。

 だってとっくの昔に想像できていたのだから。


「聖女であると偽っていたその罪は重い! 故に貴様に与える罰はこの国からの永久追ほ」


 王太子であるヘルムートの、オリヴィア断罪のセリフは最後まで続かなかった。


 カッ、という閃光。

 室内であるはずなのに闇夜を切り裂くような鮮烈な光が一瞬とはいえ室内を満たし、そうして――


「ぎゃああああああああああああ!?」


 響き渡る断末魔。


 眩しさに咄嗟に目を閉じていた者たちには何が起きたかすぐに理解できなかった。


 夜であったとしても昼間のような明るさを発揮していた光が消えた頃、恐る恐る目を開けて――


「ひっ」

「きゃあああああああああ!?」

「うわあああああああ!?」

「ヘル、ムート、様……?」


 悲鳴が響いた。

 呆然として何が起きたかを理解していない者も多くいたようではある。

 特に義妹は真実の愛だとかで結ばれるはずだったヘルムートのその姿に、未だ現実を把握しきれていないようでもあった。


 無理もない。


 つい今しがたヘルムートがいた場所に残されているのは、人の形をした消し炭であるがゆえに。


 国王陛下も王妃殿下も、つい先ほどまで自分の息子がいたはずの場所を呆然としたまま見ている。


「……やはりこうなりましたか」


 だからこそ、あえてわざとらしくオリヴィアは声を出した。

 直後、一斉に自分に視線が向けられるのを感じた。


「やはり、だと……!? 答えよオリヴィア、そなた一体何を知っている!?」


 室内に落ちるはずのない雷が発生し、そうしてヘルムートに直撃した。

 そんな現実として考えるにはあり得ない事を、しかしオリヴィアは知っていたような口振りだ。

 ここでただ狼狽えるだけであるわけにはいかないと、王は問うた。

 父であり、王という立場であるが故に。



「大した事ではないのですが。

 その、昔わたくしが聖女として王太子殿下との婚約を結ばれた際、神様に言われたのです。

 彼はいずれわたくしを裏切り、ありもしない罪をきせ、そうして周囲を味方につけてわたくしを排除するだろうと」


 オリヴィアのその言葉に数名が押し黙る。


 神、と言われて鼻で笑いたい気分になった者もいたようだが、しかし現状それを笑い飛ばせる要素がないのだ。


 そしてその神とやらがオリヴィアに告げた言葉は、まさに今のこの状況を示している。


 オリヴィアの両親は実の娘であるオリヴィアよりもマリーベルを溺愛していた。

 オリヴィアなどよりも王太子と結ばれるべきはマリーベルであると思っていた。

 マリーベルもヘルムートに恋をして、だからこそ自分の方が彼を愛しているし結ばれるべきだとも思っていた。


 聖女、と言われてもそもそも特別な力が明確に表れるわけではない。

 ただ、その手の甲に証と言える痣が浮かぶようではあるが、それ以上の事はハッキリしないのだ。歴代の聖女たちの中には国が危機に陥った時に奇跡を起こし助けた、なんて逸話もあったようだが、オリヴィアにはそういった奇跡を起こしただとかの話は一切ない。そもそも国が危機的状況に陥ったわけでもないので、奇跡などそう簡単に起きてたまるかという話なのかもしれないが。


 だからこそ、マリーベルはオリヴィアの手にある聖女の証と同じ紋様を自らの手に刻み込んだのだ。

 他に何か、明確に特殊能力が、とかであったならとてもじゃないができなかっただろう。


 マリーベルはただ甘やかされていただけではない。淑女としての教育もオリヴィアに負けないように学ばされてきた。王家としては、オリヴィアだろうとマリーベルだろうとどちらがヘルムートとくっついたところでそこまで変わらないはずだった。

 フランドヴェアリ公爵家の後ろ盾がなくなるわけではないのであれば。

 いや、そもそも両親の溺愛具合を見ればマリーベルと結ばれた方がより確実であるとさえ。


 だからこそ、ありもしない虐めの噂も静観し続けた。

 オリヴィアがマリーベルを虐げているのだ、という噂はあまり露骨に過ぎないように注意を払って、ギリギリでありそうなあたりを狙って実に多くの者が流した噂だった。

 王家が静観している事で、それは正しい事なのだと周囲は勝手に思い込んだ。誰を見張りに置いたところでオリヴィアの身の潔白など証明しきれなかっただろう。


 婚約を解消、もしくは白紙にしなかったのには、オリヴィアが聖女であるという事もあってできなかった。古来より聖女は王家と縁付かせるように、としきたりが出来上がってしまっていたのだ。

 そのしきたりを今更無視してヘルムートとマリーベルをくっつけるとなれば、昔ながらの伝統を重んじる貴族たちの反感を買う恐れもあった。

 昔ながらのしきたりなど……と軽んじる傾向にある貴族も勿論いたけれど、しかし流石に聖女という存在を無視はできなかったのだ。


 だからこそ、オリヴィアに濡れ衣を着せてマリーベルこそが真の聖女であると知らしめ、真の聖女を王家に迎え入れるというシナリオが出来上がってしまった。


 オリヴィアの両親は実の娘だろうとマリーベル以下の存在としてしかオリヴィアの事を思っていなかったので、婚約破棄された後は国外追放されたとしてもどうでも良かったのだ。むしろマリーベルの幸せのための礎になれるのだから、それが当然であるとさえ。



「わたくし、いくら相手が神様といえど流石に反論いたしましたわ。

 王家の人間がそのような愚かな真似などするはずがない、と」


 堂々と言っているが、しかしその愚かな真似を今しがたされたばかりなのでまるで説得力がない。

 ヘルムートの不可解な死に方は、てっきりオリヴィアが何かしたからだと思って強気に問い詰めようとしていた国王も、「む……」と小さく呻いたきりだった。


 オリヴィアの言葉にそうだ、とも違う、とも言えるはずがないのだ。


 ヘルムートだったものに視線を移動させる。

 影のように残されたそれは真っ黒で、直前までそこにいたのがヘルムートだと知らなければ。

 そうであったなら、何か言えたかもしれない。


「神様は言いました。本当にそうだろうかと。

 わたくしは言いました。そのような愚か者に王族という立場が務まるはずがありませんと」


 淡々と語られるオリヴィアの言葉に、国王と王妃は何も言えない。

 本来ならば、オリヴィアの言葉は当然だと受け取るべきものである。

 こうもまっすぐに信じられている。揺るぎなき信頼。

 だが今は、その信頼がそのまま言葉のナイフとなって突き刺さってくるのだ。


「神様は言いました。では、賭けをしようと。

 もしそんな事になればその時点でそいつに王族たる資格なし。その時は我が力を持って裁きを与える。

 そうでなければそれでよし、我はこれからもこの国を守ろうと。

 わたくしは、その賭けに乗りました。えぇ、あの時はまさか本当にこんなことになるなんて思ってもいなかったのです……」


 オリヴィアの言葉を嘘だと叫んでしまいたかったけれど、しかし嘘だなんだと喚いたところで室内に突然発生した雷でヘルムートは消し炭となって死んでしまったし、オリヴィアの仕業だとするにしてもあまりにも人知を超えている。

 認めるしかなかった。


 そして多くの貴族たちも、今目の前に存在している現実を認めるしかなかったのだ。


 偽りの聖女であるはずのオリヴィアは、かつて神と会っている。

 神が果たして偽りの存在にそのように接するだろうか。

 神をも謀ろうとした、とみて偽りの聖女であるなら何らかの罰を与えたっておかしくはない。


 そう考えると必然的に真の聖女だと言われていたマリーベルは……


 疑心に満ちた眼差しがマリーベルに向けられる。

 彼女は消し炭になってしまったヘルムートを見て、その現実を受け入れられないとばかりに首を横に振っていた。



 オリヴィアの言葉が真実ならば、オリヴィアは勝手に王族の命を賭けに使っているのだが、しかし賭けの内容を聞くにそもそも王家の者として正しくあったならばこんなことになるはずもない。

 王家に害を、だとかそれ以前に、聖女の信を裏切ったと言える。


 それに賭けを言い出した相手は神、となれば。


 そもそも断れないものではないだろうか。

 断るというのであればそれは神の言葉を認めたという事にもなりえる。

 そんな事はない、となればどうしたって賭けに乗ることになるだろう。



「神様は言いました。もし本当にそうなったのであれば、そのような愚か者を国の頂点に据えるような国など先はないと。もしそうなれば、神はこの国を見捨てるとも」


「な……っ」


 ざわり、と周囲がどよめいた。


 そして、国王は今更ながらに現状がどれだけ危機的状況であるかを悟った。

 神の加護、と言われてもそこまでハッキリとこれがそうだと言えるようなものはない。

 ただ、天候が落ち着いていて、魔獣といった人にとって脅威となる存在があまり人里にやってこなくて、それなりに平穏に過ごすことができるのが加護だ、と言われてしまえばあまりにも慎ましやかすぎて実感のしようがない。

 けれども、神が見捨てたとされる土地には加護がないからか、天候は常に不安定で荒れているし、魔獣もそこかしこで見かけるし、大層危険な場所なのだ。


 なんでもないような平和こそが最大の恩恵だと言われてしまえばそうなのだが、しかしそこで生活している者たちからすれば毎日そうであるので神に感謝をするよりもそれくらいは当たり前だと思い込んでしまうようなもので。


 だからこそ、聖女に濡れ衣を着せようなんて真似もできたわけなのだが。


 その加護がなくなる、となれば今まで当たり前のように享受してきた平穏は失われるのだ。

 それがどれだけの事であるか、わからない者はいないだろう。


「あ、それから。先程言いかけていらしたわたくしへの罰、国外追放でしたっけ。

 それについてはどのみちわたくしが賭けに負けた時点で、神の国へ行く事になっておりますので二度とこの国に戻ってくる事はないでしょう。つまり貴方たちがわたくしを見る事は二度とないのです。そこは安心してくださいね」


 にこ、と微笑んで言うが、神の国へというのはそれはつまり……

 と、真実にたどり着くよりも早く、更にオリヴィアは言う。


「この国に今後訪れる困難は、聖女の奇跡でどうにかなるとも言っていました。わたくしは偽の聖女らしいので、真の聖女であるマリーベルが頼りですね」

「えっ」


 マリーベルは確かに父と、オリヴィアの母に溺愛されて育ってきたけれど、決して甘やかされただけの馬鹿な娘ではない。だからこそ、その言葉の意味をすぐに理解した。


 自分は真の聖女などではない。確かに手にその証であろう痣はある。

 けれどもそれは、聖女であることを偽るための刺青である。実際特別な力などなくとも痣さえあればそうである、と周囲も認めるだろうから。

 今までは聖女としての特殊な力や奇跡などなくても問題がなかったからこそなのだ。


 だが、ここにきて聖女の奇跡が必要になる、というのはつまり。


 本来聖女ですらないマリーベルにとって、それは悪夢の始まりでしかない。

「あ、あの、お姉さま……?」

「昔からずっとわたくし使用人が生活する別館に押し込められてそもそもマリーベルとは一年に一度顔を合わせるかどうか、といったところだったので貴方の事を虐めたなんて、これっぽっちも心当たりがないのだけれど。

 でもこれでようやく二度とわたくしと会う事もなくなるのだから、そういう意味で貴方が安心できるのならそれでいいと思うのよ。

 まぁ、その上でまだ虐めがあるのであれば真犯人を見つけるしかないのでしょうけれど。

 今までは聖女といっても特に何をするでもなかったかもしれない、けど……これからは大変ね。きっとやることがたくさんあるわ。頑張ってね」

「ちょっ、お姉さまぁっ!?」


 オリヴィアのその言葉が終わると同時に、オリヴィアの姿が忽然と消える。そんな人物など存在しないとでもいうように、本当に煙のごとく消えたのだ。


 マリーベルは咄嗟に姉に縋ろうとして腕を伸ばしたが、届くことなく空振った。

 自分は聖女ではない。

 必要とされる聖女は神の国へいってしまった。

 残されたのは聖女とは名ばかりの偽物である。


 聖女としての力などあるはずがないし、奇跡など勿論起こせるはずもない。

 それはつまり、大勢の前で真の聖女であると宣言されたマリーベルにとっての死刑宣告にも等しいものだ。


 神の加護を失うこの国は、これから様々な困難に見舞われる。

 だが、聖女がいるのであればそれは本来緩和されるべきはずなのだ。

 しかしマリーベルは聖女ではない。つまりそれは、自分こそが偽りの聖女で真の聖女を陥れたと周囲に見なされる未来が待ち受けている。


 助けを求めるようにマリーベルは父と、義母を見た。

 二人もまさかこんな事になるなんて思っていなかったのだろう。

 今から聖女だと思ったのは何かの間違いでした、と言おうにもただインクで描いただけではない。刺青としてしっかりそこに痣がある。ここまでして、聖女であると偽った、と周囲は見るだろう。

 今まで王家までもが公認していたはずの聖女マリーベル。

 しかし一転してその評価が覆るのは言うまでもない。


 一番助けを求めたかった最愛の男性はもういない。

 あるのは真っ黒な消し炭だけ。


 次に自分が助かるために助けを求めるべき相手は、一瞬のうちに消えてしまった。

 真の聖女である義姉。しかし彼女を追いやったのは紛れもなく自分たちで。


「違う、ちが……こんなはずじゃ……」


 貴族間の派閥争いだとかであるならばまだしも、流石に神の加護だとか、迫りくる大自然の脅威をどうにかできるだけの力などマリーベルは当然持ち合わせていない。

 思い描いていた未来とは真逆の破滅へとまっしぐらである、という事実に。


 マリーベルはみっともなくその場にへたり込んだのであった。






 ――神の国、と言われても別段楽園のようだ、とかではないのだなとオリヴィアは思った。

 案外そこらの国と変わらないように見える。神の国ではなく他の大陸の国です、と言われたらきっと素直に信じただろう。


 あっという間に召喚されたオリヴィアは、かつて自分と賭けをした神の前にいた。


「本来なら神の加護ってそんな一瞬でなくしたりできるものではないんだけどさ」

「はい」

「あの後、きみを呼び出してあの場からきみがいなくなって。

 すごかったよ、義理の妹に本当に聖女ならなんとかなりますよね、って縋りつく人とか、自分が聖女じゃない事をよく知ってる義妹の動揺っぷりだとか。


 無理もないよね、姉の婚約者を奪うだけで済むはずが、国の命運肩に背負わされる事になったんだ。突然の重圧にただの小娘がすぐ適応できるはずもない。王妃になる、くらいなら覚悟はしてたと思うけど。

 愛しい男も死んで、全部の重圧が自分に向けられて、両親に助けを求めようにもただの人間にできる事なんて限られてる。義妹を救う事ができるのは真の聖女だけ。でもその真の聖女は自分のせいで遠い国に行ってしまいました。

 うん、人間って身勝手だなぁ」


 それを貴方が言うのですか、とはオリヴィアも言えなかった。

 人間以上に身勝手であろうとも、相手は神なので。

 力のある存在が傲慢である事なんて、よくある話だ。


 ヘルムートだって、あの瞬間までそうだったのだから。


「結局、その身勝手さで真実が明らかになって、あの場は一転責任をとれと糾弾する者たちによってあっという間だったよ。

 何も知らない民草が犠牲になる前に、王家の人間もきみの両親も義妹も、国を亡ぼす原因を作った、って事で処刑一直線。その後は家財道具を持ってそれぞれ散り散りになって国を逃げるように去って行ったよ」


 聖女がいないのであれば、加護を失った国の環境は不安定のまま。

 元凶を処刑したからとて、加護が戻ってくるわけではないのだ。


「まぁ、きみを陥れる側に回ってた連中もその罪を暴かれてタダでは済まなかったようだね。

 神の寵愛を与えられてる存在を虐げて、どうしてこうなるって想像がつかなかったんだろうね?」

「愚かだから気付かなかったのでしょう。かつて貴方が言ったように」

「それもそうか」


 オリヴィアは彼らが愚かな存在などではない、などとかつて賭けをする前に言っていたが、実際のところ神がそう言うのであればそうなのだろうな、と思っていた。

 だからこそ、こうしてその結果が目の前に迫ってきた時もとっくに現状を理解して受け入れていたのだ。


 一応やんわりと忠告もしていたのだが、彼らの耳には届かなかった。

 届いていたならこんなことになってはいない。


「加護が完全に消滅するよりもあの国がなくなるのが先かもしれないな。うーん、他の国でもやらかしてるところが増えてきたし……いっそ全部の加護をなくして新しく作り直した方が手っ取り早いかもしれないなぁ」


 そんな風にぼやく神に、神様も完璧というわけではないのだな、とオリヴィアは思ったけれど。


 やはり下手なことは言うものではないと言葉には出さなかった。


「ま、いっか。そんな事よりも、他の国から回収してきた聖女や聖人もそこそこいるからさ。紹介するよ、おいで」


 自分と同じように神の国にと呼ばれた相手が他にもいる、というのは何とも言えない気分になったけれど、それでも同じ立場の仲間がいるのは何となく心強い。

 そのうち気に入った人間以外を破滅に導いて、そうして新たに世界を作ったとしてもオリヴィアは驚かない自信しかなかった。


 まぁ少なくとも、ここではきっとやってもいない罪をきせられたりすることはないし、根拠も何もない悪い噂をばら撒かれてひそひそされる事もない。してもいない虐めについての叱責だって受ける必要もなければ、両親の顔色を窺う事も、婚約者だった男の心無い言動に傷つく事も、それ以外の嫌な事もきっとないのだから。


 だからこそオリヴィアは微笑を浮かべて神の後をついていくのであった。

 補足。

 マリーベルの母親はオリヴィアの母のお気に入りだけど平民だったよ。ちょっとだけ身体が弱かったけどオリヴィア母が薬とか融通して生きてたよ。お気に入りのお人形みたいな扱いだったけど、あまり長くないなと思われた事でオリヴィア父と無理矢理子供を作らされる結果になったよ。

 人権? そこにないならないですね。


 次回短編予告

 乙女ゲーム転生しちゃったヒロインちゃんがバッドエンド迎える系のよくあるテンプレ作品だよ。でも恋愛がないからいつものようにその他ジャンルにぶち込む予定だよ。


 最近何かいっぱい感想もらうようになってありがたいけど忙しくなってきたのもあってお返事できる感じじゃなくなってきてるよ。でも見てるよコメントくれた人ありがとうね。お返事できる範囲で少しずつ返していければいいなと思ってるけどどこまで返事したかサイトリニューアル後はわかりにくくなっちゃったから見落としとかあってスルーしちゃうかもしれないけどこいつのコメント気に食わないから無視しよ、とかではない事だけは先に言っておくね。

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[一言] まぁ神目線で言うと、シムシティ的箱庭ゲームにおいて今回の主要NPCのステータスが「知性:0 良心:0 策謀:-50(裏目に出る)性欲:100 信仰心:0」みたいな感じなの見えてたから、「あ、…
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