エピローグ2
掃除をすませ、三人は墓地を後にする。そこでふと、啓太が小さい声で藍に尋ねた。
「なあ藤崎」
「なに?」
「前から思ってたけど、お前こうまで色々やっておいて、肝心の告白はしないよな」
「なっ……」
啓太にしてみれば、藍がいつ優斗に告白するのかと、内心ビクビクしていた。だがいつまでたっても藍が大きな動きを見せることは無い。
だから、それを疑問に思い聞いてみたのだが……
「わぁーっ!」
藍は大慌てで啓太の口を塞ぎ、少し離れたところを歩いていた優斗に目をやる。幸いなことに、どうやら今の会話は優斗には聞こえていなかったようだった。
少し安心し、それから小声で啓太に聞く。
「三島、知ってたの? いったいいつから?」
藍は心底驚いたようだったが、ある意味それを聞いていた啓太の方が驚いた。
「先輩が生きてた時からだよ! って言うか、気づかれないとでも思ってたのかよ!」
啓太にしてみれば、藍が優斗を好きなのはこの上なく簡単にわかる。そんなのは、藍に意地悪をしていた頃から知っている。
「お願い。ユウくんには言わないで!」
顔を真っ赤にしたまま恥ずかしそうに言う藍。だがわざわざ頼まれなくても、啓太には最初からこれを優斗に知らせる気はなかった。
「言わねえよ」
誰が自らの恋路の邪魔になるようなことなどするものか。それに藍の気持ちもわからなくはない。
「まあ、いくら想っていても、そう簡単には言えねえよな」
好きな相手に告白できないのは、啓太も同じだ。ずっと前から好きなのに言い出せなくてもう何年にもなる。
「三島も誰かそんな人いるの?」
「さあな」
当の相手がその想いに全く気付いていないのは、果たして幸か不幸か。
そこへ、いつまでも話をしている二人を見て優斗がやってきた。
「何話してるんだ?」
彼からすると、少し気になった程度のものだったが、話の内容が内容だけに、二人を慌てさせるのには十分だった。
「「何でもない!」」
「そ、そうか……」
口をそろえて言うと、優斗は面を食らっていた。
それからまた並んで歩き始めると、藍はそっと優斗を眺めた。
小さい頃からずっと好きだった人。生きていた頃はその想いは伝えられなかった。消えてしまうと思った時も、今は妹でいるべきだと思い結局最後まで言えなかった。
だけど未だ優斗が近くにいてくれるのなら、このまま終わりにはしたくない。また一緒にいられるのなら、これからもこの想いは持ち続けたい。
「どうかしたのか?」
じっと見つめ続けていたものだから、優斗がそれに気づいた。
「改めて、不思議だなって思って。ユウくんとまた会えたのも、こうして一緒に歩いているのも」
「そうだな。俺もだ」
一体いつまでこうしていられるのかはわからない。だけど出来ることなら、このままでいてほしい。妹でなく一人の女の子としての『好き』をちゃんと伝えられるその日まで。
(いつかきっと言うから。だからそれまで消えないでね、ユウくん)
今はまだ口に出せない代わりに、藍は心の中でそう呟いた。