第30話
前回までのあらすじ。壁こと私、安藤美那はリディアの授業を受けてる姿を見ようと教室を覗き込むと、リディアの隣にアルベルトがいた。
そしてリディアは顔を赤くして困っているような表情だった。かわいいねぇ〜〜〜〜!!!!!!
……と、鼻息を荒くしておりました。
全く状況はつかめていません。現場からは以上です。
「で、なんであんなことに?」
「わたくしも知りたいわよ!!」
授業が終わり休み時間になったため私とリディア
、そしてグレースはいつもの中庭のベンチで集まっていた。
グレースもリディアの反応を面白がっているようでにこにこ笑っている。
「ここ数日、殿下がリディアに話しかける頻度は増えているなとは思っていたのよね」
「そうなんですか!」
グレースは頷くと自身とリディアが一緒にいるときもこちらを見ていることがあると話す。
「生徒会にお手伝いに行ったときも以前よりリディアを気にかけているように見えるわ」
「それは気のせいでしょう」
グレースの言葉に顔を赤くしながらリディアが否定する。
「あの方は誰にでも気を遣う方よ」
「そうだけど、以前とは違うってリディアは思わない?」
「それは…………」
リディアが困ったような表情をして俯く。リディアがアルベルトを諦めると話していたことを思い出し、リディアが今複雑な心境であることが察せられた。
「リディアさん……」
「わたくしは……」
私の問いかけにリディアは弱々しい声で自身の心境をこぼし始めた。
アルベルトのことはもう諦めたいし好きでいるのに疲れたこと、まだ諦められていない自分に嫌気が差すこと、なのに今回のようにアルベルトから急に距離を詰められて何か裏があるのではと疑ってしまうのに、それを嬉しいと少しでも思ってしまうこと……。
「心が全然落ち着かないの……嬉しくて気持ちが舞い上がるのに、もやもやしてしまって」
リディアの言葉にグレースと私は顔を見合わせた。どう返せばいいのかわからない。
「えっと……」
「──じゃあ逃げちゃいましょう」
ポンッと片手に拳を作りそれを掌に押し当て、名案!とでも言うようにグレースが言う。あまりに急だったので私とリディアは呆気にとられた。
「えっ……?」
「逃げるって、どうやって……」
私とリディアの反応が面白かったのか、グレースが表情を和らげて話しはじめる。
「勿論完璧に隠れる、逃げるって話ではないのよ?できる限りの範囲で、ということね」
「例えば……?」
「まず席は常に私がリディアの隣を占領します。リディアは窓際に座るといいわ。それから、登下校も基本一緒にしましょうか!殿下がリディアを誘えないように」
「ええ……?」
グレースの言葉にリディアが少し困惑している。この学園は席が決まっていないようで好きな席に座れる。隣を独占……たしかに悪い案ではないと思うが、登下校の際は王族から誘われたら断るなんてできないのでは?
「そもそも登下校で誘われたことなんて一度もないけど……」
「今後リディアをできる限り殿下から離そうとしたら誘ってくる可能性は十分あるわよ」
「でも断るのは流石に……」
「あら?リディアの立場なら十分断れるでしょう?私と約束があるからと言えばいいのよ」
「でもそれじゃあ貴女に迷惑がかかるわよ」
「殿下やヴァンが私を脅そうだなんて考えこそすれど行動するかしら?」
その言葉にリディアは首を振る。万が一脅されてもグレースから脅し返すなんて余裕ということなんだろうな……。
味方だとこんなに心強い人はいないが、敵だとめちゃめちゃ怖い。
超乗り気なグレースと納得の表情をしていた私の顔を交互に見やったあと、リディアは吹きだした。
「……ぷっ、あはは!そうね、そうしようかしら。心の整理がつくまでお願いしてもいい?」
「もちろんよ。今まで追いかけてきた分、殿下には追いかけてきてもらわないとね?」
(あ……)
グレースはリディアの気持ちをわかっているんだな。リディアは諦めたいけど、諦めなくてもいいのなら……もしも少しでも可能性があるのなら、一緒にいたいと思っているんだろう。ただそう思う自分の未練がましい態度に嫌気が差している、今の状況から少しでも離れたいという気持ちを汲み取って、グレースは先程の提案をしたのだろう。
「美那さんも協力してくれるわよね?」
「はい、もちろ──」
グレースの言葉に快く肯定しようとして私はハッとする。ヴァンとの約束を忘れていた……!
「美那さん?」
「アッ…………えぇっと……」
どうしよう……ヴァンとの約束を守れなきゃもしかしたらリディアに護衛をつけてくれないかもしれない……!いやまさかそんなことはないと願いたいが、ヴァンはリディアのこと好きじゃないらしいし……。それに私はリゼのところにも行かなきゃならない
「……できる、範囲で……」
「あなたの体からしてそうなるわよね……それに、わたくしは反対だけどあの女のところに暫くはいるんでしょう」
私が冷や汗を流しながら応えるとリディアはさほど気にした風でもなく納得したように言った。
確かにこの体じゃできることって少ないだろうし、当然の反応なのかもしれない。
グレースはというと、私の反応にリゼ以外のことでも何か察してくれたのかリディアと一緒に頷くだけだった。
その後二人はいつものように教室に戻っていった。戻る際に今度はまたあとで、とはグレースは言わずにこちらに目配せするだけだった。
また二人で話せるときにヴァンとの約束について話せればいいかな、何かしら察してくれたみたいだし……
「さて、私はリゼの様子を見てくるかな〜」
一息ついて私も動き始める。
……そういえば、さっきのアルベルトと距離を置く作戦っていつからするんだろう?あの感じからすると多分すぐに実行するよね……?
でもそれだと私がグレースにヴァンとの話をしていないから、距離をおいてる様子を見たらヴァンに何か言われるかもしれない
「うーん、どうしよ……」
私はこの後面倒なことがおきそうな予感がしたのだった。
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今年中には再開させていただく予定ですので、申し訳ございませんがお待ちいただけますと幸いです




