第29話
翌日、私は学園でヴァンを探していた。
ヴァンになんと言って協力してもらえば良いのか考えたがいい案が思い浮かばず、結局当たって砕けろ(砕けたくない)で行くことにした。
この前話したときだって然程私とは会話してくれてないし、相手が私の話を信頼してくれる可能性は低い。協力をお願いしても却下されるだろう。
(でも……)
それでも、一応リディアは未来の皇妃だ。ある程度気遣ってはくれるのではないだろうか?
そんな期待を持ってヴァンを探す。
ヴァンは生徒会室にはおらず1年生のクラスにもいなかった。
(……あれ、ヴァンって何年生だっけ……?)
ファンブックで何年生って書いてあったっけ……?姉の言っていたことを思い出そうとするが、ヴァンの学年については話してなかったのか全く思い出せない。
移動するのをやめ、考え込んでいるとふわふわとひと粒の光が近寄ってきた。
(あ……)
精霊だ。最近見かけていたときは群れになっていたのに、今日は1匹だけなのか。珍しい……そう思っていると声が聞こえた。
「ヴァンは2年生だよ。でも特別生徒だから基本どこの教室もいない、アルベルトの補佐をしているからね」
「えっ」
「でも今は中庭にいるみたい。アルベルトのお気に入りの場所を整えてるみたいだよ」
「ちょっ」
──精霊が喋った!!?
「それじゃあね」
「あっ!ちょ、ちょっとまって!」
引き留めようにもその喋る精霊はふわ〜と飛んで消えてしまった。
精霊が喋るのって確かゲームのシーンで出てきたよね……リゼと一緒にいるときだったと思うけど、まさか私に話しかけてきてくれるなんて……
いやいや、今はそれは後にしよう。ヴァンを探さなきゃ。
私は一旦考えるのをやめて精霊が言っていた場所へと向かう。
(中庭って言っても広いんだよな……)
少しため息をついて、壁を蔦いながら中庭を見渡していく。
……見つからんが?外側からじゃ見えない位置にいるのかな?少し奥にあるガゼボに顔を出すよう念じて移動する。すると──
「うわ!?」
「わぁ!?」
移動した瞬間に大きな声が聞こえたので、驚いてそちらを見るとヴァンがいた。
「あー!いた!やっと見つけた」
「…………………」
ヴァンは私の言葉にすごく嫌そうに顔を顰めている。そんなに顰めなくても……
「ごめんなさい、私怖いですよね」
「別に怖いとは言ってないけど、気持ち悪いだけで」
「いきなり言葉の暴力振るってくるじゃん……」
ヴァンの直球の言葉に私は心に傷を負った。
皆気持ち悪いって言うんだよな、確かにクリーチャーみたいだけどさ……
「リディア様の使い魔が俺に何か用?」
「あ、自己紹介まだでしたっけ。美那っていいます。その長い名称よりこっちの名前で呼んでくださったほうが楽かと」
「じゃあ壁で」
こいつ……!!2文字なの変わらないんだから名前で呼んでくれてもいいじゃん!
「それで?何か用?」
「ああ、はい。単刀直入に言うとリディアさんの件で協力してほしいんですよ」
私は少し態度が雑になりながらも協力してほしい旨を伝える。
「リゼ・ホワイトがリディアさんに逆恨みしてるようで、リディアさんに害をなそうと計画しているようなんです」
「それを食い止めたいから協力してって?なんで俺?」
「ヴァンさんに協力してほしい、というのも勿論なんですけど、アルベルト殿下にも協力して頂けるならしていただきたいです。未来の皇妃のためにも」
「ああ、なるほど橋渡し役ってことか」
私の言いたいことをすぐに理解して話を進めてくれることに驚いた。なんてスムーズに会話が進んでいくのか……流石アルベルトの侍従で生徒会の補佐を務めるだけあるな
「簡潔に言えばそうです。それ以外にもお願いできるならしたいですけど……」
「ふーん」
ヴァンは気のない返事をしたあとこちらは見ずに宙を見ている。考えているのだろうか?と思ったがそこにふわりと黒い粒が現れた。
(あ、これって闇の精霊?)
闇の精霊はヴァンの目の前を少しふわふわ合図するかのように飛んだあとヴァンが差し出した指にとまった。
「どうやら嘘はついてないみたいだね」
「今のでわかるんですか?」
「うん……っていうか君、精霊も見えてるのかぁ……まぁ君の存在自体精霊とはさして変わらないのかな」
精霊と然程変わらないなら私も精霊みたいに見た目をもう少しマイルドにしてほしかったな……
「……丁度いいや、協力するよ。その代わり君も俺に協力してよ」
そう言ってヴァンはニヤリと笑う
「協力?」
「そう、あのね──……」
◇◇◇◇◇◇
まさかの急展開だ。
私はそんな言葉を頭の中で浮かべつつ先程いたところからは少し離れた場所で呆然としていた。体があれば手と足を大の字に広げていたところだ。
(まさかリディアとアルベルトの仲を取り持ってほしいなんて)
どうやらヴァンはアルベルトに私が見えるようにするつもりはないようで(それはそれで悲しいが)リディアにアルベルトの良いところやアルベルトがリディアに対してどう想っているかを何気なしに話せという内容だった。少しでも好感度を上げたいということなんだろう。
(それで生徒会室でアルベルトを覗き見ていたのをチャラにしてくれるとは言ってたけど……)
リディアもまだアルベルトのことは好きなはずだ。私がわざわざそんなことをしなくてもとは思うけど……まあそれで協力を得られたんだからいっか!
その後も私とヴァンは話を続け今の状況やどうしたいかを話、ヴァンからアルベルトへとリディアの護衛についても話してくれることになった。もしかしたら王室のなんか超強い護衛とかつけてもらえるかもしれない。そういう組織ってあるよね?多分……
もうほぼほぼ私ができそうなことは終わったのではないだろうか
私はまだ終わってもないのにやり遂げた気分になったのでご褒美という名のリディアの顔を見に行くことにする。
(アルベルトのご尊顔も拝みたいけど、ヴァンに覗き見のことめちゃくちゃ怒られちゃったんだよな〜)
人間だったら暗殺してたとヴァンに笑顔で言われた。あれは絶対本気の目だった。めちゃめちゃ怖かった。
その時の光景を思い出しゾッとしながら移動していると、どうやらリディアがいる教室までたどり着いていた。廊下の壁からいい具合に教室が覗ける柱に移動して教室の様子を窺う。
(ん?)
リディアを見つけた私は、いつも授業中真剣な表情をしているリディアの様子を眺めようと思ったのだが、なんだか様子がおかしい。頬が赤く困っているように見える。かわいいな……じゃなくて
(んん!?)
リディアの隣にアルベルトがいる!!しかもここから見てもめちゃめちゃ距離近くない!?パーソナルスペースって知ってる?
教科書を指差して何か話しかけられているようで、リディアが小さく相槌を打っているのが見えた
な、な、な……何事〜〜〜〜ッッ!!!
私は変にテンションが上がってしまって授業が終わるまでその光景を目に焼き付けるのだった。
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