第22話
昨日のお茶会から日が変わり、朝リディアの部屋で目覚めた私は違和感を覚える。
なにか、目の前を無数の光の粒がふよふよ飛んでいるのだ。しかも白い光だけではなく黒い光も。
最初は虫かと思ったが、羽音もせず虫でもなさそうだった。
「なんだろう?これ……」
腕を出し振り払ってもみたが、少しふわっと離れるだけでなんなら腕に止まってきた。
じっと観察してみても光の粒のようにしか見えない。
「んん〜?」
「うわっ、朝から腕を出してじっくり見るなんて……どうしたのよ」
そこに制服に着替えたリディアが戻ってきた。私の行動に引いているのか顔を顰めている。
私がいるからかずっと別室で着替えているようだ。……着替えると言ってくれれば移動するのになぁ
「いや、見てくださいよこれ。手のひらに今いるんですけど……光の粒みたいなのが沢山ふよふよしてて」
「光の粒?」
私の言葉に不思議そうに私の手のひらを見つめるリディア。だが、何も見えなかったのか首を振る。
「何もいないわよ」
「ええ?」
リディアには見えていないのか。こんなに沢山いるのに……
「目に傷でも入って光の反射でそう見えるんじゃないの?」
「あ~、なんかそういうのありますよね」
光視症だとか飛蚊症とかもあるしそれの類なのかな?だとしたら最悪手術とか聞くし嫌なんだけど……。
「…………」
「?……なに?」
私はじっとリディアを見る。リディアの周りにもふわふわと光の粒が舞っている。
「きれいだなーって思って」
「はっ!?」
私の唐突な発言にリディアは驚いて顔を真っ赤にする。褒められ慣れているだろうに真っ赤になるのか。可愛い〜!!!
リディアは私がニヤニヤと表情を緩めているのに気づいてバッと顔を背ける。
「何気持ち悪い顔をしているのよ!わたくしはもう行くわ」
そう言ってそっぽを向いたままリディアは学園に行ってしまうのだった。
私もどっちみち学園に行くので一緒に馬車で行ってくれてもいいのに……。
──さて、私も動こうかなと思ったのだがさっきから気になるものがある。
そう、言わずもがな光の粒である。あまり気にしなくてもいいのかな〜なんて思いたかったが1匹?が妙な動きをしているのだ。まるでついてこいと言うかのような、私の目の前でせわしなく動いたかと思えば少し離れたところへ行き、私が動かないとまた同じような動作をする。
「んん?」
私がその光の粒の場所へ移動すると、また同じように私の目の前でせわしなく動いたあとまた少し離れたところへ移動する。
……ついていってみるか!
そう思った私は腕をしまい光の粒についていくのだった。
◇◇◇◇◇◇
光の粒について行き、たどり着いた場所は教会だった。
「なんで協会?」
先程の光の粒は協会の中へと入っていく。他の光の粒たちも私の周りをふよふよと飛んで、中へと入っていった。
「??」
私はわけもわからず協会の中へと入るが、そこはいつも通りであろう光景が広がっている。
祀られた像に頭を垂れ両手を組み願う人たち。
今日もステンドグラスが光輝き、まるで像から後光が差しているように見える。
そういえば、この像誰なんだろう?
見た目は女性に見える。だが顔付近は目深く被ったフードによってよく見えない。その像は両手を広げており、まるで人々に何かを与えているようにみえる。
「祝福でも与えてるのかな?」
私は辺りをキョロキョロ……とは見渡せないので天井に向かい光の粒たちを探す。
どうやら祈っている人たちの周りにはいないようだ。どこに行ったんだろう?となんとなしに像の頭を見ると──
「いや、外からの光かと思ったら君たちが後光の役割してたの??」
像の後頭部に光の粒たちが集まっていた。なんで後頭部?
像の後頭部からひと粒がぴょんぴょん跳ねて私になにやら合図をしているようだ。ちょっと面白い。
「はいはい、行けばいいんでしょ〜」
なんてこぼしつつ、念じて後頭部に移動する。祀られている像の後頭部に顔を出すって中々不敬な気がするが今回は目を瞑っていただきたいな……。
「来たけど……それで私に何をしてほしいの?」
光の粒たちは何やら後頭部から移動し始める。今思ったけどこの子達って普通の人に見えないのかな?
先程後光が差しているといったが、近づいてみればさほど光ってはいなかった。もしかして明るさを調節してくれてたりするのだろうか。
光の粒たちの後ろをついて行って、たどり着いたのはすぐそこにあった像の顔である。
「いや!不敬すぎる!!」
私はつい大きな声で叫んでしまった。
なんで顔!祀られてる人の顔!?そこに私の顔を出してなんの意味があるって言うんだ!!
私の声は他の人たちには聞こえないのかみんな静かに祈っている。
私は慌ててその場所から離れようと視線移動しようとしたが、動かない。
「えっ」
そういや初めて来たときも視線移動ができなかった。気のせいとかバクとかじゃなかったってこと?
光の粒たちはわらわらと私の周りに集まったり、近くを飛んだりしている。
何が起こってるのかわからない私はキョロキョロとあたりを見回すことしかできない。
「なに?!私に何をしてほしいの〜!?」
そう叫んでいると自分の身に異変があるのを感じた。体はないのだがなんだが体がポカポカしてきている。
「???」
そしてなんだか調子が整った感じがした。肩こりとかだるさが取れたような感覚だ。
なんと言えばいいのだろうか、温泉とかに浸かったあとみたいな……。
「えっ??なに??」
戸惑っているとふわふわと光の粒たちが天井に登っていってしまう。そして天井を超えていった。
「ちょ、待って!」
私は慌てて念じ、教会の屋根へと移動する。
移動できたことに少し安堵して先程の光の粒たちを探す。するとすぐそこに光の粒たちはいたのだが、まるで私に挨拶するようにくるくると回ると四方八方に散っていってしまった。
「……なんだったの?」
私は呆然とその姿を見ていることしかできなかった。
◇◇◇◇◇◇
今朝の不思議現象を気にしつつも私は今日も今日とて学園へと来ていた。
「そろそろリゼの家にも行って監視したいところなんだけど……」
他のキャラの情報も集めていきたいところでもある。ヴァンの目がなんとなく気になって生徒会室ではほぼ隠れてアルベルトを眺めているので他の生徒会メンバーであるセルジオとその婚約者のマリーを全然観察できていないのだ。
「確か……セルジオは眼鏡キャラで真面目で頑固。マリーは温厚……、マリーの情報少なすぎる気がするなぁ」
セルジオは姉から聞いたことをなんとなく覚えているのでどんなタイプの人間か、どんな思考回路をしそうかは予想がつくがマリーが温厚という情報と記憶にある立ち絵、印象が薄いと言われていることくらいしかほとんど知らない。
「まずセルジオとリゼのイベントがどこまで進んでいるかもわからないし……」
諸々確認して、予定を立てて破滅フラグをとにかく潰しておきたいが、如何せん何から手を付ければいいかわからない。
こういうとき漫画とかの主人公はほとんどゲームのこと覚えてて行動できるのに私は全然覚えてないんだもんなぁ……。
「はぁ……」
とりあえずリゼから情報を集めていこう。
そう思った私はリディアがいる教室へと向かう。
リディアにもリゼの家にスタンバることを伝えなければいけない。
するすると壁を移動する。そこでふと気づいた。
「……あれ?」
視線で行き先を見なくても、行きたい方向に向かえている……?
「えっ、嘘……」
私は信じられない気持ちで、少し上を向く。
「…………」
以前のようにいきなり上に急上昇したりしない。
まさか、本当に……?
私は一人廊下で感激に震えるのだった。
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