第19話
私、壁こと安藤美那は生徒会室から出てリディアがいる教室前の廊下の天井に出てきていた。
どうやら授業は普段通り行っているようで自習などでもないようだ。
「なんであの人授業中に生徒会室掃除してたんだろう?」
実は生徒ではないとか?従者ならありえるんだろうか。ゲームではどうだったかと思い出してみるがそういやいつでも助言してくれてたような気もする。生徒だとしても少し特殊なのかもしれない。
さて、このあとどうしようかなと思ったとき丁度授業終了のチャイムが鳴った。
ぞろぞろと生徒たちが出てくる。その中にグレースもいて周りをキョロキョロと見回していた。
……?どうしたんだろう?
なんて思いつつ見つめていると、グレースが天井を見上げる。私に気がついてニコリと笑った。
グレースは方向転換したかと思うと廊下を歩いていってしまう。行く先を見ようとしたが視線移動で自然とグレースの後を追ってしまい、慌てて瞬きをする。
リディアは出てこないのだろうか?教室の中が見える位置に戻り確認すると、リディアは数人の令嬢と一緒にノートに向き合っていた。
再度グレースを見ると、グレースは離れたところからこちらを見ており、どうやら私を待っているようだった。私の顔を見てまたニコリと笑う。
ついてこいってことかな……?
そう思った私は黙ってグレースについていくことにしたのだった。
◇◇◇◇◇◇
グレースについていくと校舎裏で止まった。場所が場所なだけにカツアゲとかされるのかなと思ったがそんなことはなく、グレースが明るい声で話しかけてきた。
「ごめんなさいね、今日もいるのかしらと思ってあたりを見回したらいたものだから、少し話したくて」
「いえ、とんでもない」
「あなたには色々と聞いてみたくて、休み時間じゃなくてどうせなら私の家でお茶でもしましょうって誘いたかったの」
「勿論リディアと一緒でどうかしら?」とグレースはそう言って小首を傾げる。
見た目が大変麗しい方なのでめちゃめちゃ様になる。綺麗だなぁ〜!
「あ、ハイ是非。私もグレースさん達のこともっと知っておきたかったので」
「いい返事が貰えて良かった。お茶会のときにリディアとの関係も教えてくださる?」
「はい、勿論」
その後は食べ物は食べられるのかとか、好きなお茶はあるのかと話が続いたが、どれも試したことないしお腹もすくことがないという返答をするとグレースは大変驚いた様子だった。
「せっかくなら食べれるか試してみましょうよ!」
「うーん、壁とか汚れる可能性ありますよ」
「構わないわよ?面白そうだし」
何が面白いんだろうか……と思いつつも甘いものはやはり食べれるなら食べてみたいし、と私は承諾した。
「リディアはあなたにお茶一つ出さなかったの?」
「いやぁ、幽霊に出すほうがおかしいんじゃないですかね」
「あなた幽霊なの?」
「うーん、多分……?」
自身が幽霊だろうなとは思っているけれど本当に幽霊かと言われるとわからない。鼻とか腕とか出てきたしな……、どちらかというとクリーチャー寄りだと思うんだけど。
そういえば、グレースにはどうして私が壁になったのかという話はしていなかった。なのでとりあえずグレースには気づいたら壁だったことを説明した
のだが、それがツボに入ったのかグレースは終始笑いを堪えていた。
「そ……んふ、そうなの。気づいたら壁に……ふっ」
「そんな笑います?」
グレースは悪びれる様子もなく「ごめんなさい」と口だけの謝罪をする。
「いえ、別にそれはいいんですけど……なんだかイメージと違ったので」
「イメージ?」
私の言葉にグレースが首を傾げる。笑いはある程度収まったようだ。
「もっとクールというか、笑っても口角だけ上げて目は笑ってないような人なのかと」
自分で言っててだいぶ失礼なことに気がついた。慌てて「思っていたより親しみやすい方なのかなって!」と訂正する。
グレースはさほど気にしていないようで「大丈夫よ」と言ってくれた。
「たしかに、興味がないものに対してはとことん興味がない質だから、あなたの言うように口角だけ上げて流してることも多いわ」
「それこそ社交界とか退屈でしかないし」と思い出しているのか、考え込むように答えるグレース。
私は社交界とか詳しくないけど、なんだか面倒臭そうなイメージはある。
「クール、という印象だったということは誰かがそう話してたのかしら?だとしたらそれは、私がその人に興味がないという態度を取った結果でしょうね」
その言葉を聞いて、ゲームでリゼと話すときはほとんど表情を変えなかったグレースを思い出す。
ゲームのときからリゼに興味がなかったのであればある意味ゲーム通りなのかもしれないが、リディアに対してもグレースの態度はあまり変わらなかったはずだ。
やっぱりゲームと違うのかも……。私から見たリディアとグレースはとても仲良く見える。
「リディアさんとはいつから仲がいいんですか?」
「幼馴染なの。昔はお兄様と一緒に三人でよく遊んだわ」
グレンとグレースとリディアで!?幼馴染の設定はあったと思うけど三人で遊んでたなんて話は知らない。絶対可愛い……見てみたかったな。
「グレースさんは興味がある人に対してよく笑って話すってことですよね?リディアさんもやっぱり興味引かれるところがあったんですか?」
「そうね、だって面白いもの」
面白い……?リディアが?
リディアのどのあたりが面白いのか気になった私はどうやらわかりやすくキョトンとしていたようで、グレースが少し笑いながら話してくれる。
「まず一途で好きな人とはベタベタしたいのに、それを必死に抑えて相手に合わせようとしてるところが可愛いし、完璧主義で努力家なのに時たま魔法の授業中とかに失敗したりするところは面白いわ」
「しかも失敗したことを誤魔化すんだけどあとから誤魔化したことも含めてへこんだりね」と付け加えながら楽しそうに話すグレース。
……確かにそれは可愛い。リディアも勉強とかでやらかすことあるんだな〜。しかも誤魔化してその後へこむって想像しただけで愛おしさが湧き出て来る。
「あと、実は人にきつく言うときも後からへこんだりしてるのよ。直そうと思ってるけど直せなくて、色々いっぱいいっぱいになった時にこんな自分嫌いだ〜ってうわーんって泣いたり」
泣いたの!?うわーんって!?話盛ってるのかわからないけどその姿はめちゃめちゃ見たい。
「もう可愛いわ面白いわでね〜」とまるで孫を語るお婆ちゃんのようににこにこと話すグレース。
グレースの中でリディアは幼稚園児並みに小さくて成長を暖かく見守っているのかもしれない。
「あといじり甲斐があるわ」
前言撤回。この人ただの愉快犯だった。
「そ、そうなんですか」
「反応面白いでしょ?前だって私が美那さんにリディアのこと話そうとして必死になって止めてたじゃない」
ああ〜!あったなぁ!可愛かったけど、リディアの為にもここはノーコメントで乗り切ることにした。
その後もリディアの話をそれはもういい笑顔で話したあと、休み時間が終わるチャイムが鳴ったのでグレースとはそこで別れたのだった。
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