第18話
そんなこんなで昨日リディアと話して早速行動した私は現在生徒会室にいる。
今は午後の授業中ということもあって誰もいない。
もしアルベルトがいたら私絶対うるさくなるもんなぁ……テンション上がりまくってしまって発狂してしまう。鼻息荒くなっている私にリディアがドン引きする様子が容易に想像できるわ……。
「あ、でも私リディアにアルベルトが推しだって言ってなかった気がする」
推しがなんなのかわからなくて「はぁ?」って言われそうだけど。
リディアに誤解させないために事前に説明しておいたほうがいいかもしれない。
なんならアルベルトとリディアが結ばれるところが見たいことも伝えておこう。その方がリディアの破滅を阻止するのを手伝う理由が明確になるし
「……というか、私手伝う理由明確にしてなかったよね?それなのに私の心配とかしてくれてるの?」
リディアも私に対しなぜ破滅阻止を手伝うのか聞いても来なかった。完全に信頼されてるわけではないと思うがあのリディアが簡単に人を信じるだろうか?
「性格もゲームと少し違うしそういうものなの……?」
ゲームではもっと言葉がキツかった気がするし、取り巻きもいたはずだ。でもここ数日みたリディアには取り巻きはいないように思えた。
以前グラウンドで見たときもグレースと一緒だったし……。
「なんだろう、この違和感」
設定も所々違うんだし、そういうものだと納得できそうなのになんだか腑に落ちない。
グレースのときだってあっさり私の話を受け入れてた。普通ならもっと疑ったり怖がったりそれこそリディアが洗脳されてるんだ、この化物を始末しなきゃ〜みたいな流れになりそうなものなのに。
「それはそれで嫌だけど」
グレースがただの面白そうなものが大好きな人間だっただけ?
……駄目だキャラの情報が少なすぎて判断できない。
「もっとキャラのことを理解する必要があるなぁ」
ぐるぐると思考していたのを一旦やめて改めて生徒会室を見る。
とても広い部屋でコの字に机が並んでいる。椅子などがとても高級そうで、教室の椅子より座り心地が良さそうだ。あたりは整頓されており散らかっている様子はない。
机が置かれている場所の隣にはちょっとしたお茶ができるスペースがある。応接室みたいなところだ。こちらはソファがコの字で置かれており真ん中にローテーブルがあった。こちらもふかふかそうなソファだ。体があったら座りたい。
「流石ゲームの中の生徒会室って感じだなぁ〜。普通の学校じゃここまで豪華にしないもんね」
壁を行き来してうろうろと生徒会室を眺める。掃除も行き届いているようで、ほとんどホコリも見つからない。
「すごい、誰が掃除してるんだろう?」
まさかリディア達が?……いやいや、そんなわけ無いか、掃除の「そ」の字も知らなさそうだ。
やはりメイドとかにやってもらってるんだろうか──
そう思っていたらいきなりガチャッと生徒会室の扉が開いた。
驚いてそちらを見ると、相手もこちらを見ていた。
「………………」
「………………」
……えっ?目あってる……?
部屋に入ってきたのは昨日リディアから聞いた、アルベルトの従者で生徒会の補佐なども努めているヴァン・フェルヴァークだった。
ヴァンは何事もなかったように私から目をそらしてスタスタと応接室の方向へ向かった。
部屋の隅にあった掃除用具入れを開けて雑巾などを出している。
ヴァンは無言で本棚の上や窓の縁などを掃除し始めた。
えっ?目合わなかった?気のせい……?
私は混乱しながらその様子を眺める。っていうか今授業中じゃないの?なんでいるんだろう……。
私は沢山のクエスチョンマークを頭の中に浮かべながらひとまずこの部屋から出ようと思い、じりじりとヴァンから距離を取る。その間も黙々とヴァンは掃除に励んでいた。
私は瞼を閉じて部屋の外、リディアの教室前の廊下に出るよう念じる。
そうして私は生徒会室から退散するのだった。
◇◇◇◇◇◇
生徒会室の扉を開けたら目の前の壁に顔があった。
少し驚いたが、多分いつも俺が見ているものの類だろうと思って見てみぬふりをした。
いつもなら目があった瞬間「目があっただろう?そうだよな?」なんて言ってくる存在たちだが、今回はただ俺の様子を窺っているようだった。
それはそれで気味悪いけど……。
今までの奴らは人型か、もはや人型ではなく黒い靄だったりしたけど壁に顔だけというのは初めて見たかもしれない。
しかも地味に壁移動して俺から距離を取ってるし……。マジで気味悪いな。
俺は一切そちらを見ようとせずいつもの掃除をこなす。
掃除って面倒だけど綺麗なところにはあまりそういう類のものが寄り付かないから良い。
そういう点で言うと王宮は最高だった。地下とかは別として殿下の部屋などは掃除が行き届いているのもあってそういうのを見かけるのが少ない。暗い場所はうじゃうじゃいるが、それはそれ。近づかなければいいのだから。
そんなことを思っていたからか、昔の殿下と出会ったときのことを思い出す。
俺は元平民でもっと言えば貧困層、路地裏暮らしだった。
そうやって貧しい生活と周りには見えない存在のせいでちょっとやさぐれていた時に出会ったのが、お忍びで街に降りてきていたアルベルト殿下だった。
当時の殿下は顔色が良くなくて肩とかにはそれはもうすごい量の気味悪い奴らが乗っていた。
俺は当時、流石に見過ごせない量がついている奴らに肩こりや頭痛の症状を聞いて、「有る」と答えた奴らの肩などに乗っていたそれを祓ってやっていた。
やり方は簡単で、少し自身の手のひらに力を集めてその気味悪い奴らに手をかざすだけだ。そうするだけで奴らは消えていった。
それで痛みなどが消えたという奴らから小銭を稼いでいた。
なので、そのときも軽い気持ちで「あんた調子悪いだろ。特に肩」と声をかけた。
殿下はキョトンとしていたがコクリと頷き、少し離れたところから大人が近寄ってきていたのを片手を上げて制していた。
この時に気味の悪い奴らのせいで隠れて見えていなかった仕立てが良さそうな服装や、護衛であろう大人を複数連れていることからそこら辺の貴族よりもっと上の貴族に声をかけてしまったことに気がついた。
「……それ、消してやるから何かよこせ」
そこら辺の貴族だったらまず俺の話も聞かないだろうに、当時の殿下は俺の話を聞いてくれていた。俺の要望にも答えてくれて「よくわからないけど、消してくれたらさっき買ったパンを上げる」と言ってくれたのだ。
丁度その日食えるものに困っていたから俺はそれを了承し、殿下の肩についていたものを祓った。
殿下はその様子に驚いていたが、俺に肩や体のだるさがなくなったと礼を言って俺の名前を聞いてきた。俺は自分の名前を言うか迷ったがどうせこんな貴族に会うことももうないだろうし恩は売っとくものだと考えて「ヴァン」という名前を伝えた。
それから数日経ったある日、俺はなぜか王族に拾われたのだ。王族に、と言っても王族に使える貴族の養子として迎えられ第一王子の従者に任命された。
そしてあの日出会ったのが第一王子のアルベルト殿下だったと知ったのだ。
俺は当時魔法が見えてなかったが、どうやら俺がやっていたお祓いは珍しい闇属性の魔法を使ってやっていたことらしい。
それに気づいた殿下は自身の父である皇帝陛下に俺の存在を伝え、俺をそばに置くようにしたというわけだ。
……懐かしい記憶だな。と俺は掃除していた手を止めてため息をついた。
今は殿下のそばで色々と勉学にも励んだお陰か、それとも力をコントロールできるようになったからか魔法も見えるし以前よりもっとできることが増えた。
気味の悪い存在を祓うこともできるし、影を使ってちょっとした距離なら移動もできる。
それにその君の悪い存在の中にも使役できる奴らがいて、本で読むところ闇の精霊らしい。こいつらを使って情報収集も可能だ。
「……そういえばさっきの変なやつ、精霊が何も反応しなかったな」
闇の精霊は俺に害があるものや良くないものが近づいていたら教えてくれる。
何もなかったなら特に害のない存在だったということだろうか。
俺はまぁいいかと考えるのをやめて、自分の仕事に戻るのだった。
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次回から美那視点に戻ります




