第14話 『リゼの狙い』
リディアとグレースが教室へ戻ったあと私はリゼを探していた。
なんとあの主人公、教室にいないのだ。どこいったの。
「まぁ、ゲームのときはしょっちゅう授業中だろ!って時に別の場所でイベント発生してた気がするけど……」
しかもゲームだから学力に関しては勉強するコマンドを何度か押しとけば勉強できる子に勝手になっていた。ゲームってすごいなぁ〜!!
というか、リゼはアルベルト狙いではないということだろうか?リディアが悩んでたくらいだからそれだけアピールしてるということだと思っていたが……
「今日はグレンのイベントに関してなんか言ってたもんなぁ……あ。」
二人に共有することを忘れていた。……いや、この場合はリディアにだけ教えとけばいいんだろうか?
グレースにいきなり、あなたのお兄ちゃんとリゼがデートしますって言っても意味わからないもんな……
「……一旦この事は置いといて、どこを探そうかな」
考えるのを放棄した私はとりあえずうろうろと校舎を移動する。だがやはりというべきか、闇雲に探しても見つかるわけもなく……。
──数十分後
「見当たらないな〜……どこいったんだろう。他のキャラがいるところに行くとしても……どこだろうなぁ」
アルベルト以外を攻略していない私は他のキャラがどこでイベントが発生するかもわからない。
姉から聞いた情報しかないのだ。
うーんうーんと、特に働きもしない脳みそを回転させて、思い至ったのはグレンがいた図書室だ。
「グレンの話をしていたし、グレンに会いに行ってるかも……」
そう思った私は今朝行った図書室に向かうのだった。
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「何故俺が君と街に出かけなければいけないんだ?」
「だ、だからグレース様の誕生日プレゼントを一緒に選んでほしいからで……」
「それは俺じゃなくてもいいだろう。友人と選びに行ったらいいじゃないか」
そういうとグレンは席を立ってあたしの横を通り過ぎていく
「お、お待ちください!あたしはただ──」
慌ててあたしはグレンの袖を掴んで引き止める。
ここで承諾を得れなければデートイベントが発生しないからだ。それは困る!
「それに君は、いつもアルベルトと一緒にいるだろう。グレースと一緒にいるところなど見たこともないが?」
「っ……それは……」
グレンはスッとあたしの手を袖から離し、去っていってしまう。あたしはその後ろ姿を呆然と見つめていた。
バタン、と図書室の扉が閉まる音がする。
それを聞いたあたしは今この場に誰もいないことを良いことに叫んだ。
「……なんで、なんでなんでなんで!!」
どうしてこうも上手く行かないの!?イベントを起こすために今まで色々とやってきたのに!
ゲームでは初めにグレンに会ったときにリゼがグレンに言った言葉がきっかけで二人は徐々に仲良くなった。ちゃんとその通りにあたしも行動した。最初こそ冷たかったけど、話してる内に笑ってくれることもあったし、イベントフラグはちゃんと立ててた!
「どれもこれも……グレースとリディアのせいよ……!!」
グレンの好感度を上げるにはグレースと仲良くなることが必須。だからグレースと仲良くなろうと何度も話しかけて歩み寄ろうとしたのに、グレースはまるであたしに興味が沸かないと言いたげにいつも話を無理矢理終わらせる!そして何事もなかったかのようにリディアの側に行き、楽しそうに話すのだ。
ゲームではこんなにグレースとリディアが仲が良い場面なんてなかった。ファンブックには仲が良いことは書いてあったけど、結局アルベルトルートでグレースはリディアを見捨てた。だからそこまでの仲ではないと思っていたのに……!!
「アルベルトの好感度だって全然上がらない……他のキャラもそう。何がどうなってるの?」
握った拳が力を入れすぎてわなわなと震える。このゲームは主人公のためのものでしょ?どうして誰もあたしに振り向かないの?
「あたしは、リゼ・ホワイトなのよ……?」
──そう、あたしはこの世界の主人公なのだ。
ある日目が覚めたら、あたしは元の姿とはかけ離れたとても可愛らしい少女になっていた。
鏡を見てすぐにこの顔が誰なのかわかった。
見たこともないはずなのに知っている景色、今までのこの体の記憶。そして人を癒やすことができるこの力……。
「リゼ・ホワイトまんまだ……」
あたしは死んだのかな?そんなことはすぐどうでも良いと感じた。これが所謂異世界転生なら……あたしは──
「人生勝ち組じゃん……!」
今までの人生が人に馬鹿にされ、親に愛されることもなく、大した学力もお金もない、負け組の人生だったなら
今のこの体の人生はどう考えたって勝ち組だ。
どうせなら色々欲張ろう。ここはゲームなのだ。ゲームのとおりに行動すれば逆ハーレムだってできる。皆に愛される存在になれる……!
「そう、思ってたのに……!なんでこうも思い通りにならないの……!!」
そう悔しそうに叫んだリゼは思いっきり壁を叩く。私はその殴られた場所ギリギリの箇所にいた。
「あっぶねぇ〜……!」
あれ当たってたらどうなってただろう?鼻血でたかな?もし私に冷や汗が出たならば今めちゃめちゃ出ていると思う。それはもう壁紙が湿るほど。
「想像すると気持ち悪いな……」
そう思った私は気を取り直してリゼに説教の言葉を送る。
「物に当たるのは良くないと思うよ!」
「はぁ〜……くそっ、グレンは一旦後回しで別のキャラ攻略するしかないか……」
やはりリゼは私の声が聞こえていないらしくブツブツとまた独り言を言っている。
ああ……私の中のリゼというキャラが崩壊していく。ゲームではあんなに優しい子だったのにな……くそとか言わないもん……。
リゼは胸ポケットから小さなノートを取り出し、
ペラペラとページを確認したあとその場を離れていってしまった。
「これはリゼは私のことが見えない、で確定かなー……」
怒ってるときでさえこの壁の顔を無視することなんてあの性格ならできないだろう、多分。
ノートを確認して場所を離れたということは別の攻略キャラのところに行ったのかもしれない。
「追いかけるべき……?でもなぁ」
リゼの性格がある程度わかったのと、少なくともグレンとアルベルトの好感度は思ったより高くない。それに行動から見るに特定の一人と結ばれるのではなく、逆ハーレムエンドを目指しているようだし……
「逆ハーレムエンドってどんな条件満たしたら迎えれるんだっけ……」
こういう時に自分がこのゲームをそこまでやりこんでなかったという事実が痛いなと感じる。
姉はなんて言っていたっけ……?
「うーん、思い出せないな……。というか今日は色々ありすぎてなんだか疲れちゃった」
ここで思っていたより自身がヘトヘトになっていることに気がついた。確かにあちこちリゼを探し回りはしたが、そんなに疲れることをしただろうか……?と疑問に思いながら強烈な睡魔を感じて、私は一旦ブランチェット邸に戻ることにしたのだった。
2024/1/6加筆修正
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