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悪役令嬢plus壁  作者: 緤 めぐみ
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第1話 『壁(物理)』


「推しを眺める壁になりた〜い!」



 そう口に出した瞬間にドンっと体に重い衝撃が走った。


 私の記憶はそこで途切れている。







 ハッと、それは学校を遅刻する時間帯に起きてしまったときのような感覚で目を覚ます。



「………?」



 目を開いて見えた光景は、どこか中世ヨーロッパを思い出すような、豪華な部屋だ。

部屋の装飾は派手で、赤色と白色の家具が多く少し目がチカチカする。



「どこ、ここ?」



 全く記憶にない場所に自分がいることだけは理解した。

 記憶が途切れる前、体に強い衝撃を受けたことを思い出し、怪我がないか手のひらなどを確認しようとしてみる……がそこで手が見えないことに気がついた。



「んん?」



 腕を上げようとしても、脚を上げようとしても何も見えない。体の感覚はあるような気がするのになぜ?


 ──まさか体がなくなったとか?嫌な想像をしてゾッと背筋が凍る。

それにしては自分は今立っているように見える。

床に横になっていない。


「……?」



 自分が今どういう状態なのかわからない。

とりあえず部屋の中央に移動しようかと思い、動こうとしたが、動けないことに気がついた。



「なにごと?」



 脚やっぱりないの?と痛みは感じずとも嫌な感覚にドキドキとしながら下を見ようとした。

そのときだった。

 


「うおおっ!?」


 

 下を見ようとした瞬間、視界が一気に下がり床が間近に見えるようになった。

猫や仔犬ならこのくらいの視点なのかもしれないと呑気に思ったがそこは別に問題じゃない。



「なになになになに!?」



 急な出来事にパニックになった私は今度は上を見上げるように視線を動かした。


その瞬間視点がブレて、天井が間近に見えた。

とんだセルフジェットコースターだ。視点がいちいち変わって酔ってしまう。



 「うっぷ………」



 こみ上げてくる不快感に思わず声を漏らす。本当に何が起こっているのか。


 ふと、気持ち悪さを抑えようと目を伏せたときに視界がドレッサーを捉えた。

鏡を見たら今の私がどんな状態なのかわかるのではないか?

どうやら壁?を動けるようだし……。

そう思いついた私はなんとかドレッサーの鏡に自分が映るよう移動しようとした。



──15分後



 セルフジェットコースターをコントロールするのに時間がかかり、鏡に映ろうとするだけで時間を費やしてしまった。

どうやら見る方向に進むらしい。加減が難しすぎて大変だった。

今の私の顔はきっとげっそりとしており実年齢よりだいぶ老けて見えるであろう。


 

 さぁ、私の体はどうなっているのかな!

ドレッサーを見るとそこには──



 「いや、ホラーすぎでしょ。怖いわ!」



 思わず叫ぶほど怖くてシュールな光景が映っていた。



 映っているのは少しくすんだ、でも上品な白色の壁。そしてお洒落なタンスや椅子などが映っている。

そこまではいい。別に何も問題じゃない。



問題なのはその、白色の壁に眼と口が写っている。首一つじゃない。本当に眼と口だけ。

しかも私の顔のパーツそのままだった。



 鼻どこいってん。そういやにおい何も感じないけど。

セルフツッコミが止まらない。

この顔……顔?が先程まで上下左右にすごい速さで移動していたというのを考えるとすごく気持ち悪かった。



自分の顔に自信なんてさほどなかったけど、この光景を見て更になくなった。泣きたくなってしまうな。


しかも思っていたとおりではあるが体はない。

どこぞのぬりかべより酷い有り様だ。

だって手も足もないからね!畜生!


 

──考えたくはないけど、もしかして私は所謂トラ転というものをしたのではないか?もしも、もしもそうだとして……



「なぜ壁」



 一度考えたらもう思考が止まらない。

壁に転生ってなに……?今までに聞いたことがないよ。可愛さもかっこよさもない。気味の悪さしかない。せめて生物にしようよ!

これじゃあただのホラーだよ!



転生した先もしかしてホラーゲームの中とか?!

私クリーチャーになっちゃったとか!?

というか本当にここどこ?



 世話しなく一人で考え込んでいたがどんどん眠たくなってきた。

生来私は考えることが苦手だ。妄想という名の現実逃避だけは得意分野なんだけれど。



 ──部屋の窓を見るに夕刻だろうか。

誰かが部屋に入ってくる様子もないしこのまま眠ってしまおう。

なんならこれは悪夢で、起きたら今まで通り自分の部屋の布団で起きているかもしれない。



私はそう期待して瞼を閉じたのだった。



2023/12/15 加筆修正

お読みいただきありがとうございます



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