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96話 柳の蔭にて呑み候う

ども、坊丸です。


信長伯父さんに、千歯扱きの売り込み成功しました

やっぱり実演って大切だよね。

実演販売とか、セールストークだとわかっていても目の前の実演の結果を見るとひきこまれて、欲しくなるもんね。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


さて、鉄砲の修練が終了したので、引き払って、清須城に向かうことになりました。


加藤さんは、もうこれ以上、信長伯父さんの前で緊張するような羽目に会いたくないということで、千歯扱きを解体して荷車とともに撤収ということになりました。


いやはや、お疲れ様でした、加藤さん。


投扇興のセットは、中村文荷斎さんに持ってもらい、自分は柴田の親父殿と焼酎をもって一緒に清須城に向かいます。


「親父殿、伯父上に焼酎を献上するにあたり、毒見のことがありますので、包丁頭の井上殿と相談したいのですが」


「そうだな。清須城に入ったら、厨のほうに先に向かいたい旨を城番のものに伝えることにいたそう」


清須城に到着すると、城番に声をかけ、厨で準備をしてから、包丁頭の井上殿とともに、信長伯父さんに焼酎を献上する意向にであることを伝え、信長伯父さんと包丁頭の井上殿にも連絡してくれるよう頼みました。


で、包丁頭の井上の了解を取り付けると、柴田の親父殿と一緒に厨に向かいます。


ちなみに、中村文荷斎は、そのまま、広間の方に向かってもらうことになりました。


「井上殿、お久しぶりです。伯父上に献上する酒、酒粕を蒸留して作った焼酎のことでご相談がございます」


「これはこれは、坊丸殿。お久しぶりでございます。以前の饗応以来でございますな。こたびは、西国で呑まれていると言う、焼酎をお持ちになられたのですか。して、ご相談とは?」


「はい、焼酎を献上するにあたり、伯父上の酒の好みを知りたく存じます」


「酒の好み、ですか?」


少し怪訝そうな顔をする井上殿。

献上するにあたってリサーチしたいんですよ、信長伯父さんの好みを。


「はい、普及している濁り酒、それがしが工夫しました清酒、それと、伯父上が呑んだことがあるなら、味醂など、どのような酒を好むか、です」


「ふむ、その3つであれば、清酒、味醂、濁り酒の順にて好みますな。

ただ、信長様は、それほど酒を嗜まれませんぞ。

急に酒を所望になることもありますので、常にある程度は、在庫を抱えております。

まぁ、多くは呑まれませんので、各々一升程度ですな」


ふむ、やはり、その順番か…

そして、清須城には、味醂が在庫である、と。

なら、試してみる価値はありそうだな、和風カクテルの柳蔭を。


「井上殿、焼酎の毒味をお願いします。濁り酒や清酒よりも強い酒になりますから、お気をつけ下さい。親父殿、井上殿に毒味いただきますので、懐の焼酎をお願いします」


「おう、わかった。井上殿、こちらが焼酎だ。献上する品であるからな、毒味でたくさん呑むなよ」


と言って、懐の徳利を井上殿に渡す、柴田の親父殿。


毒味なんだから、がばがば呑むことはないに決まってるじゃん。

柴田の親父殿じゃあるまいしさぁ。


「では、いただきます」


柴田の親父殿から渡された徳利を押し戴き、配下のものから、小さめの盃を受け取った後、盃に焼酎を注ぐ、井上殿。

香りを確認するように嗅ぎ、一口、焼酎を口に含む、井上殿。一瞬、顔をしかめますが、呑みきりました。


「ふぅむ、この焼酎とやら、口の中でピリッといたしますな。そして、喉にもヒリッとしますな。確かに、強いと言うか、キツいと言うか、そういう酒ですな」


「美味いだろう、焼酎は」


笑顔で、井上殿に同意を求める柴田の親父殿。

いやいや、井上殿の言い回しや雰囲気から見ると、美味いって雰囲気ではないと思いますよ。


「どう思います?井上殿、忌憚なく教えていただきたく」


「坊丸様には、申し訳ないが、正直に言って、信長様の好みと言う感じではないかと…」


「やはり、そう思いますか」


「いやいや、キツくて強くて美味いだろう、焼酎は」


今、包丁頭の井上殿と大切な話をしているので、少し黙っていてもらって良いっすか?呑兵衛の柴田勝家さん?


「いえ、そう言っていただいて、ありがとうございます。自分でも、伯父上の好みでは無いと思っておりました」


「どう致します?今回の献上は、取り下げますか?

わざわざ苦労して手に入れたのでござろう、この焼酎を。

献上して、好みでない、不味いと言われて、覚えを悪くすることも無いかと存じますが」


うん、そう思いますよねぇ。普通は。

あと、この焼酎は、酒粕から蒸留して作ったって言ったのに、なんか頑張って手に入れた感じのご理解になってますね。


さて、このまま、焼酎を献上しても、信長伯父さんの評価は芳しく無さそうなので、味醂と焼酎を使って、一工夫してみますか。

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