94話 誠に申し訳ありませんが貴意に添えかねます
2月は、週三回の更新を続けることができました。
3月もできれば同じペースで投稿していきたいです。
尚、いましばらく、朝8時の投稿を続ける予定です。
ども、坊丸です。
早合のプレゼンをしていたら、信長伯父さんが、加藤さんを勧誘し始めました。
加藤さんの鉄砲の腕前、すごいもんね。
早合の準備の時に練習で数発撃ってもらったけど、そのときは、ここまですごいとは思ってなかったんですがね。
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「加藤とやら、お主の鉄砲の腕前、見事。どうだ、儂に仕えぬか?」
「はっ、大変ありがたい話なれど、中村文荷斎にご紹介いただいたように、それがしは、足を痛めておりまする。それに、長良川の戦いのおり、胸を強打し、走ることもままなりません。戦でお役に立てるとは、とても…」
「坊丸、以前にお主が言っておった、鉄砲の腕が良ければ、腕力、体力が無くとも戦力になる、場合によっては怪我をしたものでも戦力になると言うのは、この者のようなことだったのじゃな?」
えぇっと、具体的に加藤さんを想定していたわけではないですが、なんか、話の流れで、そうですって言っておいた方が格好がつく感じ?
「はっ、伯父上のお察しの通りにございます。加藤殿の鉄砲の腕前ならば、遠方での戦に向かうのは厳しくても、城を守る兵としてや敵兵を待ち受けた状態で火縄銃を使うのであれば十分に戦果をあげられるかと」
まぁ、加藤さんなら、鉄砲隊の頭くらいならば行けるんじゃないでしょうか?
戦国時代にはスナイパーって職業はまだ無いですよね?ゴルゴダの丘で13階段のヒトとか。
ガンマン?あれは職業じゃなくて生き方だって次元が大好きな、大泥棒の相棒の人が言ってました、確か。
うん、脇道に逸れたね。
「さて、今の話を踏まえて、今一度聞く、加藤とやとやら、儂に仕えぬか?」
「大変ありがたいお話なれど、やはり、お断り申し上げます」
「加藤さん!」
「正右衛門、何故だ?
信長さまの配下になれば、武士に、侍に戻れる!
さすれば、中村でともに過ごした昔に話したように、一緒に仕事ができるのだぞ!
信長様の下でともに轡を並べて戦える日もくるのだぞ!」
おおっとぉ、自分よりも、文荷斎さんの方が加藤さんの仕官話に対して、熱い、熱いよ!
「信長様、坊丸様、このような怪我をしたものに声をかけていただきありがとうございます。仕官のお話、大変ありがたいお話なれど、やはり、お断り申し上げます。
それがしも、中村を出た後は、腕が一本で成り上がれると思っておりました。が、長良川の戦いの後、怪我をして、鍛冶屋としてもの作りを生業にしてからは、この手は、人を殺すために有るのではなく、ものを作り出すために有るのだと思い至りました。
武士として今一度、名を上げたいと言う気持ちが全く無いと言えば、嘘になりますが、今は、坊丸様の考え出すものを、一緒に作り出したいと言う気持ちの方が強うございます。
信長様、せっかくのお話、お断りして申し訳ございません」
そういうと、加藤さんは、石の川原のゴツゴツ場所したにもかかわらず、信長伯父さんに向かって平伏し、頭を必死に下げています。
自分と一緒にもの作りをしたいと言う加藤さんの言葉にグッと来たので、加藤さんのために、信長伯父さんに何か言わなきゃ、と思うんですが、どうしていいかわからず、体が動きません。
すると、今までのやり取りを静かに見守っていた柴田の親父殿が、信長伯父さんと加藤さんの間に進み出て、片膝をつき頭を下げます。
「殿、加藤の言葉にお怒りになるのは、ごもっともと思います。
なれど、平に、平にご容赦を。
坊丸と坊丸の連れてきた加藤の無礼は、坊丸の後見役として、それがしの不手際にございます。
二人に与える罰は、それがしが引き受けまする」
ええっと、少し驚きましたが、柴田の親父殿、後見人とはいえ、信長伯父さんの怒りをを一身に引き受けるような、お言葉、ありがとうございます。
っていうか、いくら後見役とはいえ、漢やぁ。漢前やぁ。
「勝家、儂は怒っておらん。加藤の鉄砲の腕は惜しいがな」
床几から立ち上がった信長伯父さんは、目を細目ながら、柴田の親父殿を静かに見下ろします。
「信長様、侍として、直接お仕えすることは、致しませんが、坊丸様の作り出すものを通して、尾張の役に立つ様、お約束申し上げます」
柴田の親父の後ろで顔を上げ、信長伯父さんに言上する加藤さん。
よく見ると、地面においた両手は震えています。
「で、あるか。ならば、よし。坊丸、加藤の身柄、よく采配せよ。
それと、勝家、今の話の如くであるから、貴様に特に罰などはない。
代わりに、だ。二人扶持を加増する。加藤は坊丸の専属鍛冶屋となりたいと申しおるようだからな、坊丸に専属鍛冶屋を雇えるくらいの扶持を出す。
ただ、坊丸はいまだ、お主に後見される身だ。故にそなたに二人扶持を加増する。
それに、坊丸に金や扶持を渡すと何を始めるか分からんからな。
勝家、坊丸分の扶持、そなたが、よく管理せよ、良いな」
正直、お、怒られると思ったのに、何故か、扶持がもらえる流れに。
何故だ?
「伯父上、ご配慮ありがたく存じます」
「信長様、叱責いただいてもおかしくないところ、お許しいただいた上に、坊丸に扶持をいただき、ありがとうございます」
「信長様、ありがとうございます」
「信長様、ありがとうございます。うぅぅぅ。」
えっ、なんか中村文荷斎さんがなんか一連の流れで一番感動してらっしゃる。
「加藤とやら、坊丸の下、励め。坊丸、尾張の為になるものを考えよ。そして、加藤とともにキチンと形にして、儂のもとに持ってこい、良いな」
「「承りましてございます」」
1570年 元亀元年に杉谷善住坊に信長伯父さんが狙撃されちゃうのは、また、別のお話。
毛利の悪小次郎など、鉄砲の腕で成り上がった例もあります。




