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93話 勧誘

ども、坊丸です。

信長伯父さんの前でついに、早合のプレゼンが始まりました。何回か似たようなことをしているので、そこまで、緊張していませんが、時々、織田信長らしい圧を感じることもあります。

それと、加藤さんの鉄砲の腕前にビックリだよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「美濃や越前を利する必要は無い、と言うことだな、坊丸」


「はっ、いつぞや、伯父上に申し上げた通り、伯父上は天下を狙えるお方と、思っております。その際に、邪魔になる美濃の斎藤や越前の朝倉を利する必要はございません。故に、紙製の早合は諦めました。と、なると次善の策は竹筒となり申す」


「それで、油紙ではなく、竹、か」


「はい、それで竹でございます」


「しかし、美濃はわかるが、越前も邪魔になるというのか?坊丸」


はっはっは、確か織田信長って、朝倉を討ち取ってたよね。で、色々あって越前は柴田の親父殿に任されたはず。

まだ、桶狭間の戦いで今川義元を討ち取ってない状態の信長伯父さんとしては、まだまだピンとこない時期だよね。

致し方なし。とりあえず、それらしいこと言っておこう!


「はっ、伯父上が上洛し、京に兵を入れるとなれば、多分、朝倉は邪魔になるかと。

美濃の大垣から近江は瀬田を経由して京まで織田の旗を立てるとなると、京極、浅井、六角らを討つか、結ぶか、いずれにしろ抑えねばなりません。

柴田の親父殿に以前教えていただいた感じですと、朝倉は浅井の後ろ楯みたいなもんらしいですから、浅井を討つにしろ結ぶにしろ、何かしら動いてくるかと。

しかも、朝倉のことですから、朝倉は斯波の越前での守護代、しょせん織田弾正忠家は、尾張の守護代の奉行の家柄と下に見てくるやもしれません」


「ふむ、朝倉とことを構えるのは、近江まで我が領地となれば、だな。とりあえず目先の敵は、駿河の今川と美濃の斎藤よ。

だが、火縄銃を相手よりも、早くに、数多く揃えれば、有利な地で野戦を行うのもいいかも知れんな」


待ち受けての鉄砲斉射っすね。それ、あんた、史実だと長篠でやってるから。まだまだまだ先の話だけどさ。


「して、この竹の早合を生かすのに、伯父上にお願いしたき儀がございます」


「ん、なんだ、坊丸。申してみよ」


「はっ、恐れながら。この早合を使うのは、たぶん一般の小物・足軽になるかと存じます。

伯父上や故橋本一巴殿、専門の鉄砲衆であれば、自前の火縄銃を持つかと存じますが、小物足軽らには当家より戦のたびに火縄銃を貸し出すことになるかと。

そのような火縄銃は数をそろえることになるかと存じますが、口径や弾の大きさを統一した規格にしたものを揃えていただきたく存じます」


「ふむ、早合を兵がもついずれの火縄銃でも、使えるように、統一せよということか。

国友や堺に火縄銃を発注する際に、口径、弾の重さや大きさを同じ大きさにするよう注文すればよかろう。しかし、足軽に配るために大量に注文する、か」


「先程、伯父上もおっしゃっていたように銃は大量に一気に撃つことが肝要かと。そのためには、大量に所持しなければなりません。そして、弾や火薬も。当然、早合もたくさん作らねばなりません」


「弾や火薬、早合もか」


「伯父上のことですから、すでにお考えとは存じますが、火薬の手配もお願いします」


「坊丸、それはすでに儂が考えておる。むしろ、早合の数を揃える手段はどうする?」


「はっ、竹や竹の葉、竹革を集めるのは、農家の老人や後家に買い取るから集めよ、と申さば良いかと。

火薬と弾を詰めるのは、武家の後家や戦で怪我をおったもの、隠居したものに申し付けるが良いかと存じます。

後家には夫の仇をこの早合で討つ為に頑張れ、無念を晴らす為に今これを作るのだと、言い聞かせ、出来た数に応じて銭を配れば、無念の思いが強いもの、銭の欲しいものは、よく働くでしょう」


「ふむ、後家も戦の下準備に駆り出すか。しかも、夫の無念を煽って、とな」


「戦は、戦場での兵の数、士気、槍働きを行う者共だけで成り立つものでは、ありません。

兵達に食わせる兵糧の準備や輸送、そういった後方があっての戦です。

武家の妻が、戦で亭主を失い、後家になることは、やむを得ない事でございます。見映良いもの、若い者なら再嫁する道もありましょうが、そうしないもの、できないものも、おりましょう。

そういった者共をただ尼にして、夫の菩提を弔うだけにしておくのは勿体なきことかと。

そういったものも早合を作らせることで、織田を支える力に変える、そういうことが出来るのではないかと存じます」


「夫が亡くなった後も織田の力になれ、か。面白い、面白いな、坊丸。

だがな、後家の多くが早合の作り手となっては、米の収穫後の脱穀が進まんぞ」


「それにつきまして、この後、お見せする道具にて、対応できるかと」


「ふっ、既にそこも考えておったか。ならば、よし。ところで、加藤とやら、お主の鉄砲の腕前、見事、どうだ、お主、儂に仕えぬか?」


よし、加藤さんを鉄砲の撃ち手に指名したかいが、ありました!

加藤さん、これでもう一度、侍に戻れるかもよ?

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