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75話 上司への報告って、大切。

ども、坊丸です。虎哉禅師に浮野の戦いをいろいろ解説してもらいました。


なんか、今回の浮野での戦は、次の戦いの下準備としての戦いだった可能性が高いらしく、次の戦こそは活躍するぞ!って息巻いている柴田の親父殿が、すこし暑苦しいです。


そして、虎哉禅師の分析力には素直に感服です。

柴田の親父殿と虎哉禅師の両方から火縄銃を形見分けしてもらったことを信長伯父さんに申告しておけって言われて、もう自分のものだと思っとったのにぃ…と思っている坊丸です。


「さて、昨日の話の通り、今日は清須にいくぞ」


「昨日の今日で、伯父上にお会いできるでしょうか?」


面会出来なければ、行く意味無いもんねぇ~&できるだけ先延ばししたいなぉ、という思いを込めて、せめての抵抗です。


「安心せよ!昨日のうちに、沢彦禅師に書状を出してもらっておる。それに、儂の連名で名をいれてもらっておるからな。少しは、待つかもしれんが、たぶん、大丈夫だろうよ」


「はははっ、さすが親父殿。すでに面会のご手配いただき、ご配慮のほど痛み入ります」


なんだ、あのあと、沢彦禅師となにか話していると思ったら、アポイントメントの連絡いれる相談だったのねぇ。


これは、諦めて清須城に火縄銃ゲットの経過説明に行くしかないですね。


で、橋本一巴さんの遺言状ぽいものと拳銃サイズの火縄銃を持って、柴田の親父殿と騎馬二人乗りにて清須城に向かいます。


さすが、信長伯父さんの教育係、沢彦禅師からの書状でアポイントメントとってあるおかげ。


四半刻ほど待ちましたが、その日のうちに信長伯父さんに面会できました。


「勝家、坊丸、待たせたな。沢彦禅師より書状をいただいておる。橋本一巴から形見として短い火縄銃をもらったとか」


「畏れながら申し上げます。橋本一巴殿より、ここに控える坊丸宛に遺言状のような書状と形見分けとして短い火縄銃をいただきました。一応、殿にご報告をと、思いまして。こちらが、橋本殿の書状と短めの火縄銃でございます。お改めください」


と、平伏しながら、柴田の親父殿が信長伯父さんに答えるので、自分もあわせて平伏しときます。


「で、あるか。長谷川、書状と銃をこれへ」


「はっ」


柴田の親父殿が、自分の前に並べた書状と火縄銃を長谷川橋介どのが回収し信長伯父さんに渡しました。


信長伯父さんは、橋本一巴さんからの書状が、自分宛の宛名から坊丸宛に書き直されているのを見て、一瞬、眉をひそめましたが、すぐに表情を消し、書状を読みすすめていきます。


書状を読み終わると、興味津々で短い火縄銃をいじり倒してます。

満足したのか、一つ頷いたあと、こちらに顔を向けました。


「勝家、坊丸。一巴の書状の主旨、あいわかった。一巴としては、早合の調査、改良を坊丸に頼みたいということであるが、坊丸、良いか?そして、できるか?」


「はっ、伯父上、この坊丸、橋本一巴殿の遺志を継ぎ、早合の調査、研究を行いたいと存じます」


「坊丸、そなた、石高を上げるための農業の改良もしているであろう?今一度、問うぞ、出来るのか?」


「農業の改良については、後は稲穂が実るのを見守るだけであれば、早合について調べる時間はございます」


と、農業の報告も少しだけ入れつつ、早合も研究可能、と伝えておきます。


「で、あるか。して、現状、稲の様子はどうじゃ?」


「それについては、それがしより、申し上げます。当家の領地のうち、石田村にて坊丸殿の指導にていろいろ試しておりますが、連年より稲の出来が良い様子。実りの方も期待できそうでございます」


お、柴田の親父殿が代わりに答えてくれました。ラッキー。


「ならば、よし。何を行ったか、どれくらい変わったか、収穫の後に報告せよ。早合についても、一巴のこの書状に書いてあることを踏まえ、お主に託す。

勝家、後見役として、早合についても見守れ。それとな、勝家だけで良いから、適宜、報告せよ。石高のことと違い、途中でも使える施策ができれば、すぐに報告せよ。

適宜、こちらで試す」


「「はっ」」


柴田の親父殿と息を揃えて、信長伯父さんの命に応じつつ、平伏します。ここら辺は、この時代に合わせてなんとなくできるようになってきました。


柴田の親父殿や、中村文荷斎さんにはできて当たり前、って言われますがね。


「それと、この火縄銃は、早合の試験の為に、坊丸に預ける。幼子には、まだうまく扱えぬとは思うがな。

この火縄銃、万一、火をつけた上で儂の方に向けたときは、坊丸、お主のみならず、そなたの弟達の命、どうなるかわかっておろうな。


勝家が付いておる故、ゆめゆめ、そのようなことはないと思うが、この火縄銃の扱いによっては、勝家も含め、数多の人間に迷惑がかかると思え。

今一度言うぞ、この火縄銃を預ける、この信長の信に応えよ、坊丸」


「はっ、この銃に火をつけるときは、伯父上のために用いることを、坊丸、ここに誓います」


「で、あるか。して、この銃、一巴の書状ではあまり当たらぬ、とあったが、お主ら撃ってみたか?」


「撃っては、おりませぬ」と間をおかず素直に答えました。


「はっ、まずは、殿にご報告を、と思いまだ使うてはおりませぬ」


それを聞いて、こちらを咎めるような目で一瞬見た柴田の親父殿が、平伏しながら丁寧に答えました。

あ、そう答えるのが正解ですか…。すいません。


「ならば、儂に撃たせよ。良いな、勝家、坊丸」


「はっ」

「はっ、殿の思し召しのままに」


柴田の親父殿とまた、二人で平伏しながら答えます。

ま、信長伯父さんが撃ちたいなら、もう、それはほぼ主命ですからね、仕方ないんですが…。

撃ったあと、やっぱり、「これは俺の」って言い出されたら嫌だなぁ…


「よし、橋介、良之、庭に的を用意せよ。試し撃ちをいたす」

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