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72話 橋本一巴殿の遺言状…という名の依頼?

ども、坊丸です。橋本一巴さんの墓参りの後に形見分け?してもらったら、なんと拳銃サイズの火縄銃でした。

あと、書状。しかも宛名が、信長伯父さんから露骨に書き直されているやつ。

なんとなーく、ハズレの予感がしてきます。


それはさておき、拳銃サイズの火縄銃ですよ。

火縄銃って、ライフリング無いし、球状の弾丸だからね、銃身が短いと、弾道のブレが大きいと思うんですが‥。まあ、前込めの銃だし、ライフリング切れないよね。

しっかし、なんつうか、この銃ってキワモノなんじゃないすか。

何でコイツを手に入れちまったんや、橋本一巴さん‥


「小型の火縄銃の様子ですが、危なくはないのですか、沢彦禅師?」

「一応、改めさせては頂いたが、弾は入っておらんし、火薬も火縄もない。大丈夫じゃろ」

子供に銃をわたすわけないですよね。そうですよね。


周囲も安心した様子だし、拳銃サイズの火縄銃を、いろいろいじっていると、

「書状についてであるが、どういたす?坊丸殿は、短い変わった火縄銃をいじっておるが?柴田殿か中村殿が、代わりに目を通しておくか?」


そう言って柴田の親父殿と中村さんを交互に見る、沢彦禅師。

柴田の親父殿が目礼した後、中村さんのほうに掌を向け、中村さんが読むように促した様子。

いや、拳銃をいじっていても、周囲は確認してますよ。

大人たちは、子供が変わったおもちゃを手に入れて、集中して遊んでるかのように見えるかもしれませんがね。

「では、それがしが、失礼して。ふむふむ」

と、中村文荷斎さんが、言った後、すこし無言の後、書状に向かい、わずかにわずかに礼をしました。

「では、それがしが橋本殿の書状、読み上げさせていただきます」


『この書状が、坊丸殿やその後見役の柴田勝家殿の目に触れている場合、残念ながら自分は此度の戦で命を落としたということになるであろう。


本来ならば、それがしが亡くなった際には、それがしの所有する火縄銃はすべて殿に献上するというお約束ではあるが、この書状と同封させてもらう短い火縄銃は、あまりにも命中しないので、殿のお怒りや鉄砲に不信を持つ原因になりそうなので、あえて献上しないことといたした。

それがしの形見と思って、坊丸殿にお納めいただきたく、存じる。


殿にご依頼いただいた早合の調査については、まだ途中となっており、悔しいが殿に報告できる状態とはなっていない。

大変申し訳ないが、途中まで調べた内容をここに記載するので、どうすれば尾張で使い物になるか坊丸殿に続きを考えていただきたくお願いする。


本来ならば、まだまだ幼い坊丸殿ではなく、弟子のだれかに引き続き調べてもらうのが筋なれど、幼いにもかかわらず、火縄銃のことを何故かよくわかっている坊丸殿のほうが、良い結果が出るものと信じているので、早合のこと、あえて坊丸殿に託させていただきたい。


このようなことを頼むのは、迷惑千万とお思いになられるとは思うが、坊丸殿、柴田殿には、この橋本一巴の末期の願いと思い、了承していただくことを切に願い申し上げる。

また、先ほどの形見となる短い火縄銃を使って早合を完成させていただきたく、存じる。


なお、他流の鉄砲術の早合は、銃身とほぼ同じ太さの竹を用いて筒状とし、その中に火薬と玉を詰めたものと聞く。そこに何らかで栓をして用いるらしい。栓を外して、火薬、玉の順で銃身に注ぎ込むものであるとのことである。

他の流派では、油紙を用いることもあるらしい。


この方法であれば、火薬、弾と別々に銃身に詰めるよりも、一手短くできるので、良いと思うが、まずは竹のような筒状のものを集めるところから始めなければならないので、そこをどうするか、坊丸殿には考えてもらいたいと存じる。


願わくは、此度の岩倉攻めの後、この書状を破り捨て、早合の報告書を殿にご報告申し上げることができることを   永禄元年 文月一日 橋本 一巴』

と、以上でございます」


「中村殿、ご苦労様でございました。先の書状を踏まえ、今一度、この場にて、橋本殿のご冥福を祈りたく存じる。皆さま、合掌としばしの黙とうを」

と沢彦禅師がそういったので、手に持った短い火縄銃を丁寧に畳の上に置きました。

銃が畳の上に置かれたのを待ち、沢彦禅師が声を掛けます。


「合掌」


その場にいる6名が今一度、橋本一巴さんの冥福を祈り、ただただ静かな時間が流れます。


「さて、坊丸。どうする。橋本殿の遺志であるが、受け取る、で良いか?」

長かったような短かったような黙とうの時間が誰からというわけでもなく、終わりをつげ、皆で顔を挙げお互いに日本人らしいアルカイックスマイルが浮かんでいるのを見たのち、柴田の親父殿が切り出しました。


「橋本一巴殿の鉄砲に対する思い、受け取りました。形見となる短い火縄銃をいただくとともに、早合の実用化に向けて、この坊丸も知恵を絞りたく存じまする」


橋本一巴さん、信長伯父さんの宛名を書き直した書状だったから、最初、何やらきっと良く無い予感がしてましたが、なんというか、ごめんなさい。

橋本一巴さんの思いと早合のご依頼、この坊丸、引き受けさせていただきます。

元日から昨日まで感想を受け付けていましたが、残念ながらのノーリアクション。

ちょっと寂しいので、あと数日、感想受付しておきます。

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