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54話 農業改革しちゃうぞ!

ども、坊丸です。玄久さんの奥さんの実家、富蔵さんの豆腐店からおからの手配をした後、酒作りを始めた小島弥太郎左衛門さんのところ、津島の網元で魚屋の三郎さんの親戚兼取引先の野々村さんのところ、清須城の料理頭の井上さんから紹介された油屋さんのところなどに交渉に行きました。

結論から言うと、酒粕と干鰯は安価で手配できましたが、油粕は駄目でした。

まぁ、最初から全部揃うと思ってなかったし、肥料の試作品ができる状態になっただけで良しとしましょう。あ、ゴマ油の油粕は肥料にするような量は無理だけど、ほんの少し分けてもらいましたよ。しょうがないので、麦芽水あめと合わせてゴマ餡というかゴマペーストを作ってみる予定です。まぁ、これはおいおい、別の機会に、ですな。

それはさておき、塩水選と集まった肥料の元を使っての発酵肥料作りです。


そんなこんなで、今日は中村文荷斎さんに二人乗りの騎馬にて石田村に連れてきてもらいました。


「仁左衛門さん、ご無沙汰してます」

「これはこれは、坊丸様、ご無沙汰しております。肥料の件などは、そこの中村様からご連絡を逐一いただけますので、いろいろと手配していただいてるのはわかっておりましたゆえ、大丈夫でした。ですが、うちの納屋に、手配いただいたおからと酒粕と干し魚がたまりますので、三種類のにおいが混じって独特の匂いがするもので、うちの連中からそろそろ苦情が出ております」

ですよね。納屋にためててくれたら、干し魚の匂いと酒粕の残存アルコールの匂いで独特の臭気がしますよね、きっと。


「肥料のもとになる素材の手配にかまけてしまい、もうしわけなかったです。とりあえず、どれくらい手に入ったか見せてください」


「はいはい、こちらの納屋です」


仁左衛門さんに案内されて、庄屋の屋敷から一番離れた納屋に向かいました。

ん?想定していた匂いと違いますね。なんというか、関西人に嫌いな人が多くて水戸で有名なあの食べ物の匂いが…。いや、坊丸の中身の人は関東出身者なので、全然大丈夫ですがね。しかし、何故だ?


納屋に入って理解しました。おからが俵に入れて積んであります。そして、どうやらおからは幾分湿っていた様子。俵の中の枯草菌がおからを発酵分解しはじめたんでしょうね。

あ~、むかし、父方の爺ちゃんから聞かされた納豆誕生の逸話を自然にやっちまった感じですね。

前九年後三年の役で出羽の国に出征した源義家公の軍勢が、農民から兵糧の一部として届けられた煮た大豆を俵に入れて、馬の背に乗せて運んだところ、馬の体温で発酵がすすみ、食べようとしたときには、煮た大豆は糸を引き独特の臭気を放つ豆になっていたってやつです。

腐ってしまったと思って、最初は捨ててしまおうとしたものの、兵糧が足りなくなったので食べたらめっちゃうまかったので、それ以降は意図的に煮た大豆を藁に包んで寝かせて納豆を作ったって爺ちゃんは言ってました。

「納めた豆」からできた食べ物だから「納豆」というんだと、蘊蓄を垂れていたのはいい思い出です。本当かどうかは知りませんが。

爺ちゃんは、常陸の国は水戸、台渡里寺の近くに住む長者の家に泊まった時のことだから、水戸は納豆が有名なんだといってました。でも、その後、歴史で前九年後三年の役を習った後に、その時のエピソードなら、東北地方での出来事なんじゃないかと思って調べたら、秋田県横手市に納豆発祥の地の石碑があるって見つけたときは、どっちが発祥の地なんだよって思いましたよ、えぇ。


それはさておき、おからが納豆にちかい何かになっているっぽいです。

ま、枯草菌は植物のセルロースを分解する能力をもっているから、肥料化にはいい役割をしてくれるはず。きっとたぶん。

細菌学の勉強をしなくちゃいけないのに、日本酒好きが高じて購入した発酵学の本に現実逃避した経験がまさかこんなところで活かされるとは思わなかったぜ。


酒粕は蓋をした樽や木桶、干した鰯や小魚は俵に入って積んでありました。


「さて、坊丸様。少しにおいがきついですが、これらをどうします?」


「そうですね、後で畑や田んぼにまくことを考えると、その近くに運んで発酵させたいですね」


「発酵?」って、この時代はまだ発酵って言葉ないんですかね?仁左衛門さんに質問されて思いました。


「微生物の力を借りてさらにいいものを作ることですね。肥料の場合は、いままで肥料としてつかっていたものを混ぜて、厩肥とかのなかにいる微生物の力を借りてもっと肥料として良質なものをつくることができますよ。ほかの発酵の例としては、蒸かしたお米に麹や酵母を作用させて酒をつくることなんかもそうですね」


「微生物?」と疑問形は文荷斎さん。


「微生物というのは麹とかのことです。麹はカビなんです」


「麹屋や麹の座の連中は、カビを育てているんですか。ほぉ~。麹屋はカビ屋だったんですか。実に面白いですな」


「とりあえず、肥溜めの傍に、運んでそこで発酵たい肥を作りましょう」


「わかりました、坊丸様。文荷斎様にも手伝ってもらって村人も運んでもらいましょう」


「あ、干した鰯や小魚は、発酵させずに、粉々に砕いて畑や田んぼにまきますから、肥溜めのところでなくていいです」


「わかりました。では、干した魚たちは後で、臼と杵で砕いておきましょう」


「それと、村の人たちに森からサルノコシカケやキノコを採ってきてもらっていいですか?」


「サルノコシカケ?あんなものどうするんです」


「サルノコシカケは、枯木を分解する力の強いキノコなんですよ」


「サルノコシカケがキノコですって?あんな硬いやつが?」


「枯れ木や木材を分解する白色腐朽菌ってやつなんです」


「ハクショクフキュウキン?なんですそれ?」


「サルノコシカケの能力からみた分類ですね。白色腐朽菌は植物の中のセルロース、ヘミセルロース、リグニンのすべてを分解できる数少ない菌類なんですが…」


「坊丸様?さっきから何を言ってるんです?」


「柴田殿が坊丸様は不思議なことを考えると言われていましたが、今がそれなんでしょうな」


「まぁ、難しく考えずに、枯れた枝や葉っぱを他よりも細かくする力が強いキノコって思ってもらえばいいです。なので、サルノコシカケをおからや酒粕、藁くず、牛糞なんかと混ぜればすこし早くたい肥化できるかもしれないと思うんです」


「ちなみに、今言ったの、全部混ぜるんですか?坊丸様?」


「う~ん、そうですね、おからと藁くず、牛糞のもの、酒粕と藁くず、牛糞のもの、4つとも混ぜたものの三種類をつくってみたいですね」


石田村のみなさんの協力で、肥溜めの隣に、三種類のたい肥製造場所を作ってもらいましたよ。

うまくいくと良いんですがね。

あと、塩水選は意外とすんなり受け入れられました。柴田の親父殿の屋敷だとみんな疑ったのに、なぜ受け入れてくれたのかはわかりませんが。


さて、たい肥化は後は時間と切り返しの手間しだいですね。時間と石田村の方々に手伝ってもらいましょう!

農業編 巻きたいのですが、伏線部分もあるので、巻けない…


早く浮野の戦いがしたい…

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