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信孝なんかに『本能寺の変』のとばっちりで殺されていられません~信澄公転生記~   作者: 柳庵


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493話 南伊勢攻略戦 演技

少し余裕が出たので、3月は二話目が書けました。

できればもう一話書けるといいんですが…。

織田家本陣では、滝川一益に対し東陣地を指揮する織田家家老格二名からの叱責が続いていた。


「柴田殿、温泉地の開発に関してご依頼とご協力をいただいたことは感謝しております。しかし、それとこれとは話が別でござろう。それに、あの温泉旅館という物については、まず一番に殿をお迎えしてご供覧、ご使用していただくと話がついていたはず。この戦で勝ちをおさめたあとに、殿にご足労いただくつもりでござったのだ。ここでの戦が始まる前に木下殿にも使っていただく話が出たが、当然、殿の後に、と考えておる」


「おお、そうだった。確かに、そういうように話がついておった。だが、一益。今のお主の顔、よく見てみよ。そんな顔でまた無謀な策を立てて突撃でもされてみろ。そこから大河内城の包囲が崩れては元も子もないぞ。

温泉旅館の初披露を信長様に、と決めているのであれば、いっそ、お主が湯の山温泉に行くときに殿もお連れして温泉旅館とやらで歓待いたしたら如何かな。

儂なんぞより知恵の回る一益だ。温泉にでも入り少し離れたところで殿と二人で話せば、楽に大河内城を落とせる策の二つや三つすぐに出てくるやも知れぬからのぉ」


柴田勝家は、やや嘲る風を装い、滝川一益に一度前線を離れるよう促す。


「で、ですが!」


「ですがも、田楽味噌も無い!柴田殿の好意を無にするか!本来ならば、筆頭家老たる儂はそなたの失策を責めて、今回の魔虫谷攻めにかかわった他の将兵の助命のため、滝川、そなたの首一つで勘弁してくだされと信長様にお願い申し上げねばならんところなのだぞ!それを柴田殿は儂なんぞよりも温情のある対応を示しておる!何が不満か」


「そ、それは…。確かに怪我を負った伊勢衆を戻してやるのは良いとは、思いますし…。それがしが城攻めを離れるのも、致し方がないとは思いまするが…」


武辺者二人に責められて、徐々に小さい声になる滝川一益。最後は、困ったように呟きつつ、信長の顔色を伺うのだった。

その視線の先には、片目をつぶりつつ場の成り行きを見守る信長の姿があった。


人の心の機微をいまいち感じ取りきれない信長ではあるが、配下の武辺者二名が常と違うような雰囲気を出していることはわかっていた。


そういえば、ここ数日、何故か、尺限馬廻り衆や小姓衆の間で湯の山温泉の話が雑談の中でちらほら出ていたのを何とは無しに耳にしていた。

大河内城攻めの前に秀吉に褒美として温泉での療養の話が出ていたこともあり、信長自身も湯の山温泉に少し興味を持ち始めてもいた。


そして、今、滝川一益の魔虫谷攻めの失策に絡めて、またもや、その名前が出てきたのだ。流石にこの流れには何かあると信長は勘付いた。


わざわざ自分の言葉を遮ってまで話す森可成と柴田勝家の二人には違和感があるし、その話しぶりの大仰さからも何やら考えがあるのは見て取れる。 


今までの話しぶりを見るに、どうやら、滝川一益を一度前線から下げたうえで、自分と滝川一益で大河内城攻めに対する策を湯の山温泉という後方にて練って来てほしいということなのだろうとは、思う。


そして、あの武辺者二名から見ても、自分が大河内城攻めで熱くなりすぎ、かかり過ぎに見えている、ということなのかもしれないと、思い至る。


やや離れたところで策を練るのは悪いことではないかもしれないという思いがストンと胸に落ちたのだった。が、それ以上に温泉への好奇心や興味もある。やはり、信長は好奇心旺盛な人なのだ。

結論として、武辺者二名が必死に作ったこの波に乗るのも悪くない、信長にはそう思えた。


そして、瞑っていた片目を開き、滝川一益の方を見ると、いつも沈着冷静なはずの鉄砲指南役が、情けない顔をして、そこに、居た。


「一益。儂も少し温泉、温泉旅館とやらに興味がある、勝ったあとではなく、明日にでも、その温泉とやらに案内せい。

その間に一益は、配下の伊勢衆は怪我人を戻し、留守居をしていた者共を城攻めの兵として駆り出せ。

本来なら、そなたを叱責するつもりであったが、どうやら、可成が存分にやった様子。森可成の言葉を胸に仕舞おけ。こたびは一度居城に戻ることと儂をその温泉宿とやらで歓待する事を以て罰とする。首から比べればかなり緩い罰であろう。そうなるように場を仕向けてくれた可成と勝家に感謝せい」


「ははっ」


「しかし…。本来なら、魔虫谷攻めについての責めと今後の話をするつもりであったのが…。

まぁ、良い。儂が戻るまでは、大河内城をしかと囲め。飢え攻め、渇え攻めじゃあ。誰も、そして何も城に入れるな!当然、誰も城から出すな!良いな!」


「「「「ははっ」」」」


本陣に集まった諸将は、信長の命を受け、一斉に頭を下げた。下命を受ける諸将の引き締まった表情の中には、力攻めがしばらく無いことへの安堵の色がわずかばかり隠れているのだった。


「一益、可成、勝家。そなたらは残れ。それと…。五郎左、勝三郎。そなたらも残れ」


気心のしれた古参の家臣だけとなった後、信長は森可成と柴田勝家の事をからかいながら、その真意を聞き出すことになる。

二人は信長の問いにしどろもどろになりながら答え、軍議の場で全力で演技していたことを暴露した。そして、信長の言葉を遮るようなことをしたことを平身低頭謝罪する羽目になるのだった。


その様子を最初は真面目に、後半はニヤニヤしながら見ていた丹羽長秀と池田恒興であったが、大河内城への夜襲と魔虫谷攻めでの陽動を頑張った褒美の代わりだとして、湯の山温泉への同行を突然命じられることになる。


なお、ニヤニヤ笑う信長より柴田勝家と森可成にも湯の山温泉への同行が命じられたのだった。しかし、東陣地の主将と軍監の両方を連れて行くのは如何なものかと丹羽長秀が信長にやんわりと諫言。

その結果、尺限廻番衆や小姓衆の面前でじゃんけんをさせられ、じゃんけんに負けた柴田勝家の同行が決定した。


湯の山温泉への出立と旅程の詳細を詰める話の場には、拳をグーの形に握ったまま、その拳を見つめる柴田勝家と真面目くさった顔をしながら湯の山温泉への同行を回避することに成功して安堵する森可成の姿があったという。

大河内城から湯の山温泉までは約70キロ、亀山城下の古刹(石上寺あたり)にて一泊して湯の山温泉に向かった体です。常歩、速歩と短い休憩をうまく組み合わせれば1日でギリギリ行ける距離ですが、先触れして温泉での食事や警備の準備もあるので、2日に分けております。


稲葉良通も丹羽長秀、池田恒興と同じくらい大河内城攻めでは頑張ってはいますが、温泉には呼ばれていません。城攻めの褒美とか言ってますが、信長はうつけ時代からつるんで居る二人と一緒に温泉に入りたいだけです。


そして、道中ずっとからかわれることになることが確定した柴田勝家。合掌。


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三国志の「陳到叔至」に転生して色々やらかす話とか「李儒文優」に転生して「曹全碑」の曹全景完さんを支えて董卓の代わりになる様な話も思いついてプロット考えはじめたんですが…。特に後の方は「仏ょも」先生の「偽典・演義」とか「いいよかん」先生の「糜芳andアフター」との差別化が難しそうだから諦めました。

ていうか、三国志話を本作と並列で書くは無理だとすぐに気がつけってお話ですよ。んがくっく。

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