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49話 中村文荷斎、登場。文化祭じゃないよ!

ども、坊丸です。千歯扱きが普及する前は扱き箸で頑張って脱穀していたらしいです。おもに後家の方々が。後家の方々の生活も考えないと、千歯扱きを普及するのは許されない感じ。なにか内職的なもので、後家の方々に生活費を稼いでもらう方法を考えないといけないですな。

それと、柴田の親父殿は本気で親代わりをしてくれる感じです。てっきり、謀反人の息子を監視するしつつ養育もするっていう感じだと思い込んでいたんですが、どうやら違う様子。有り難いことです。


_______________________________________________________________________


「殿、末森に出した使者とともに末森城から中村殿がこちらに見えられましたが、いかがします」

と吉田次兵衛さんが、広間に顔を出しました。


「次兵衛、すまんな、先ほどの使者に渡した書状にて、中村にこちらに来るように申し付けたのだ。おお、そうだ、先ほど、玄久の話も出たのだ。中村と話す際に次兵衛も同席してくれぬか、のう、義兄貴殿」

義兄貴殿ってあたりの時には、すこし笑ってましたよ、柴田の親父殿。


「わかりました。とりあえず、ここに中村殿をお連れすればよろしいのですな」

さすが、次兵衛殿、柴田の親父殿のからかうような対応も簡単にスルーですね。


「中村文荷斎宗教、お呼びとのことで、馳せ参じました。坊丸様も久しぶりにございますな」

中肉中背、八重歯がチャーミングな全体的に優しそうなお顔の方ですが、どこのどなたですか?てか、文化祭?お祭りなのこの人の名前?


「ふむ、その感じでは、坊丸は覚えておらぬか。信行様の右筆を務めていたものなのだか…」


「はっ、信行様ご謀叛の後の仕置きにて、信長さまから忠義を認められ、右筆の身から末森城の城番の一人に取り立てていただきました。

まぁ、今は柴田様の与力みたいなものですな、おかげさまで今でも末森にて励んでおります。

坊丸様には、末森におられる頃、何度かお見かけしておりました」

あ、信行パパの謀叛を柴田の親父殿に知らせた右筆の人ね。うん、よく知らぬ。


「そうですか。末森の頃は、お世話になったこととおもいます」

あんまり覚えてないし、ほぼわからないけど、礼は失さないようにね。


「はっはっは。坊丸、覚えておらぬのであろうが、とりあえず取り繕ったかんじよな。まあ、良い。

先程坊丸には申したとおり、殿から坊丸にご下命のあった石高を上げる策を行うにあたって、坊丸のみでは、いろいろ困難になることと思われる。

ついては補佐が必要と思っておる。今までは、儂が坊丸の後見役としてついておったが、今後は様々なところと交渉したり、しばしば石田村に出向かねばならなくなるであろう。

さすがに、儂も次兵衛も坊丸に付きっきりというわけにはいかぬでな。そこで、じゃ。中村に坊丸の補佐を頼みたいと思っておる」


農業改革の実験を行う村の選定と交渉だけでなく、補佐役の選定も済んでいたんですね、柴田の親父殿。流石です。


柴田の親父殿は、某信長の矢bowだと脳筋キャラでガチガチの武闘派のイメージですが、この世界線だと行政官としても優秀ですよね。


まあ、信長伯父さんって、織田家四天王とかの面子を見るに単なる脳筋キャラは嫌いな感じなんだと思う。ま、個人の感想ですが。


「改めまして、中村文荷斎宗教でございます。

先日、柴田様より、内々に坊丸様の補佐のお話をいただきました。信行様のことにつきましては、大変遺憾ではございましたが、信行様の遺児である坊丸様の補佐をさせていただくのも何かの縁であろうと思いまして、このお話を喜んで受けさせていただきました。坊丸様、以後よしなにお願い致します」


先程の思い出話の時とは違い、仕事モードになったのか、一度居ずまいをただした上で、両の拳を床板につき、深々と頭を下げる文荷斎殿。

その近くで、今回の事とは距離を取れそうだとホッとした表情の吉田次兵衛殿。

はっはっは、勉学の時間が減るわけではないので、気苦労の量はあまり変わらないと思いますよ。

って、気苦労の種から言われたくないかもしれませんが。


で、その後、柴田の親父殿から促されて、文荷斎さんと次兵衛さんに今回の農業改革の素案を説明することになりました。


「塩水を用いて、種籾を選別するのですか…。本当にそれで、良い種籾を選べるのですか?」と疑問の様子の文荷斎さん。

うん、比重の概念とか理解してないといきなりわかれって無理ですよね。


「後で実際に見ていただきたいと思います。特に塩水が濃くなると卵が浮くさまを見れば、塩水でスカスカの種籾としっかり詰まった種籾を見分ける感じがわかると思います。ただ、そのまま、種籾を使うと塩害が出てしまうので、しっかり塩抜きをしないといけないですが」


「さて、あとは肥料のことですな」

は、話の転換ありがとうございます、次兵衛さん。


「うむ、そこで、次兵衛の出番よ。先ほどの坊丸の説明に会った通り、おからや酒粕、油粕、鰯や雑魚を肥料に使いたいとのことだ。おからについてだが、お主の縁者の玄久、あやつの嫁の実家が、豆腐屋だっただろう」


「ああ、それで私もここで話を聞けということだったのですな。確かに、玄久の嫁の実家は、豆腐屋でしたな。そして、我が家で一度、養女にしてから、玄久に嫁いでおりますれば、当家と玄久には豆腐屋に伝手がございますな。玄久の嫁の実家に連絡して、おからを手に入れたい、と殿と坊丸殿はお考えなのですね」


「そうだ、頼まれてくれるか、次兵衛」


「わかりました。それがしが玄久の嫁の実家に委細頼むと、書状をしたためておきます。後、玄久にも話を通しておきます。できれば、豆腐屋に行くときは、玄久にも同道させたほうがいいでしょうからな」


「うむ、頼んだ」「次兵衛殿、よろしくお願いいたします。」


「おからの手配はそれでよいでしょうね。その際には、私は同行しなくてもよいですか?」

と、文荷斎さん。


「いや、今後のことを考えると、繋ぎを作っておくほうがいいでしょうな。それがしと玄久だけでなく、文荷斎殿も同道していただいたほうがいいでしょう」

たしかにそうですね、次兵衛さん。次回以降のことも考えられる大人な判断ですね。


「酒粕や油粕はどうする?何か案はあるか、次兵衛、文荷斎」


「そうですね、酒粕は造り酒屋、油粕は油屋ですよね。しかも、肥料を作るために手に入れるのなら、そこそこ大量に必要になりますね」と思案顔の文荷斎さん。


「そこよ。当家で付き合いのある酒屋や油屋でもいいが、出来れば大量に手に入る大店か話の通じやすいところが」


「大店か話の通りやすいところですか…」


「殿、清須城に出入りの造り酒屋、油屋に話を持っていくのはどうでしょうか?幸いなことに、殿も坊丸殿も清須の包丁頭の井上殿に面会できる資格をお持ちのはず。そこから、ご紹介いただくければ…」


「清須に出入りのものに話をもっていくのか。清須城と取引のある店ならば、信長様のご下命で、と説明すれば、協力してもらえる可能性は高いな、次兵衛」


「清須出入りの造り酒屋ではないのですが、知り合いに酒造りをしているものがおります。犬山の近くにいる小島の弥太郎左衛門というものなのですが、最近酒造りを始めたものなので、酒粕を安く買い取るといえば、廃棄の手間が減るので乗ってくると思います。あと、将来は、犬山にしっかりした店を構えたいと言ってました。上昇志向のあるものなので、柴田殿や織田家とつながりができるということを考えると、必ず乗ってくるでしょう」


「では、油粕は、伯父上からご下命の文面をいただいたうえで、清須の井上殿からの紹介をいただく、酒粕は文荷斎殿の知り合いの小島殿をあたるという案で行きましょう」


「うむ、それでよさそうだな、坊丸。後は、鰯や小魚を干したものの入手方法、か。漁師や網元には伝手はないか?次兵衛、文荷斎?」

中村文荷斎宗教さんは、北の庄城の戦いで負けた柴田勝家を介錯した人。

右筆の中村の名前で、既に登場していますよ。

文荷斎さんの知り合いの小島さんは、犬山の小島醸造さんをモチーフにしております。


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