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信孝なんかに『本能寺の変』のとばっちりで殺されていられません~信澄公転生記~   作者: 柳庵


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485話 南伊勢攻略戦 分析

今回は説明回みたいなもんです。

永禄十二年九月、大河内城の四方を囲むように陣を敷き、更には二重三重に鹿垣や柵を作り上げ、城への連絡、物流を絶った。


信長の対北畠氏の方針は先年、対六角戦、観音寺城攻めでの成功体験を踏まえた戦略だった。


観音寺城の時と同様、敵の本拠地である城郭に電撃的に攻め寄せる。そして重要な支城を落とし、敵の戦意を挫く。

籠城戦は後詰あってこそ、勝利が掴める事はこの時代の人間ならば百も承知のことである。


大河内城への包囲網を完成させた信長は、北畠氏に後詰を出せる戦力、勢力が居るかを今一度、本陣にて地図を前に確認していた。


北畠氏は南伊勢五郡と志摩国、大和国宇陀郡近辺、伊賀国の一部を勢力下に持つ。

紀伊国熊野にも勢力を持っていると北畠氏は吹聴していたが、滝川一益に調べさせた限りでは、それほど強固な関係ではなかった。


滝川一益の調査内容によると北畠氏は過去に紀伊熊野の堀内氏や有馬氏の争いを調停し従えた時期があったらしい。

が、熊野有馬氏が内輪揉めと当主の早逝が重なり、滅んだ後は堀内氏が熊野地区の国人衆とした熊野の宗教勢力と結びつき独立勢力となっていたのである。

この情報を鑑みるに、熊野方面からの後詰は考えなくてよい、と信長は判断していた。


本拠地である伊勢、とくに南伊勢の勢力については大河内城よりも北、長野氏、神戸氏は先年の伊勢侵攻にて既に織田の支配下にある。

そして、木造氏も織田に寝返っており、伊勢国の中部、雲出川以北は織田の勢力下である。


雲出川以北にも今徳山城に籠もる奥山常陸介など山側にいくつか籠城している北畠方の勢力はあるが、その勢力と兵力は多くなく、その上、海沿いの平野部は織田方の勢力が押さえている。

山沿いの勢力を集め少数の兵で進めば後詰という形は取り得る得る。だが、総勢七万を超える自軍を打ち破れるほどの軍は集まらないだろうと信長は考えている。


そして、志摩国も九鬼嘉隆に軍を預け攻略中であり、さらには伊勢多気郡にある大淀城を攻めさせている。

(大淀城は現在の多気郡明和町大淀にあった城で、伊勢神宮の北西の海岸沿い、街道沿いの城)

つまりは多気郡大淀城よりも西の伊勢及び志摩国の軍勢は後詰に来る可能性は低いと言える。


近江に目を向ければ、南近江、琵琶湖南岸は自国領である。甲賀に逃げ抵抗を続ける六角氏は足利義栄派で、北畠氏は足利義昭の擁立を支援したことを考えれば、両者は対立していることになる。さらに言えば、既に六角氏の戦力は他国を救援できるほどではない、と判断していた。


南伊勢、現在の尾鷲市や紀北町に居るであろう北畠氏寄りの国人衆については、渡会山地を抜けなければ救援はできない。さすがにそれらの国人衆は小勢力であり、その兵力は恐れるに足りない。それらの国人衆に対して大河内城を囲まれた北畠氏が手も足も出ないことを喧伝し続ければ、本領安堵を求めて織田方にすり寄ってくる、と信長は読んでいた。


信長は、広域の地図を見ながら、大和方面についても考える。

南朝勢力として活動していた北畠氏は伝統的に大和国で過去に南朝勢力して活動した国人衆とも親密であることは、滝川一益の調べで知っていた。

事実、この時点でも大和国宇陀郡の秋山氏、沢氏を北畠氏は配下としているようであったのだ。


が、これに対しても信長は手を打ってあった。そう、松永久秀の大和国支配への支援である。


永禄十一年十月に松永久秀はあの大名物「九十九茄子茶入」を手土産に信長に拝謁を求めてきた。

信長は、三好政権にて三好長慶の寵臣であり、長慶亡きあとは三好三人衆と並び家中で重要な役割を果たしてきた松永久秀を油断ならない人物であると思っていた。

しかし、永禄九年の段階で松永久秀側から親交を求めてきていた経緯と足利義昭を支持したことを踏まえ、信長と久秀の会談の後、信長は「大和一国は久秀進退のまま」と久秀による大和国の支配を認めていたのだ。

先年、信長の援軍を得て大和国を席巻した勢いをそのままに、松永久秀は宇陀郡の秋山氏、沢氏、芳野氏に圧を加えていた。このため、大和国からは秋山氏が少数の援軍を大河内城に送ったに留まっている。


「読めんのは、伊賀、か」


信長は地図上の伊賀国を閉じた扇子でトントンと叩きながらつぶやいた。

伊賀は伊賀六十六家とも言われる小領主、国人、さらには農民が団結して惣国一揆を形成していたが、一部は北畠氏寄りの姿勢をみせる国人衆もいたのだ。


「奴らはどう動くかわからん。下手に刺激し無いが吉、か。

あとは、霧山城とその麓の北畠御所に残る連中だな…。あ奴らが居ると大河内城とは別の動きをするやも知れん。

しかし、北畠の連中が霧山城という逃げ込める場所があると考えれば、大河内城にて決死の思いで籠城をせず、退散させることもできる、か。

どちらが、得策か…。思案のしどころよな…」


そう呟くとと、じっと地図を睨みつけるようにして見ながら考え込む信長。周囲の小姓衆も音を立てることなく、控え続ける。

信長の横顔を篝火の照り返しが染め、ただ篝火の爆ぜる音だけが本陣に響くのであった。

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