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477話 金創医坊丸 執刀医頑張ります! 弐ノ段

ども、坊丸です。

桃花さんの柔らかくて温かな背中越しのご配慮により、明けでも眠くならずに犬山城まで到着できた坊丸です。


で、婆上様のご配慮により出していただいた先触れと先日のお手紙により、スムーズに盛次殿と面会。

政治向きのことではないので奥御殿にて会うことになるわけです。そして、柴田の親父殿のお姉様もわざわざ同席してております。なんてプレッシャーだ!


此度(こたび)はお目通りさせていただき有難く存じます。後ろに控えるは我が筆頭家臣の加藤清忠。それと助手として柴田家腰元の桃花を柴田家大奥様のご配慮により貸し出していただきました。明日の施術には両名を伴いますので、見知りおきを」


「うむ、義母上(ははうえ)から詳細を記した書状をいただいておったので、だいたいは知っておる。して、この足の治療の支度が整ったとあったが」


「はっ。先日、足の具合を見せていただきましたところ、観音寺城攻めで負った槍の傷に何やら異物が入り込んだものと見立てました。本来ならば、名のある金創医に取り除いてもらうのが良いかとは存じますが、盛次殿よりこの坊丸に取り除いて欲しいとのご希望でございますれば、(それがし)の思いつく術を尽く準備いたしました。それと、これを」


自分の脇に置いて置いた二合徳利をそっと盛次殿の前に置きました。


「ん?なんだこれは?」


「柳陰と言うカク…酒にございます」


「坊丸殿?明日の施術の前に酒を渡すとは如何なる了見ですか?」


盛次殿の奥方様にして柴田の親父殿の姉上様から少しばかり怒気を含む視線とお言葉が。

やだなぁ、それで軽く知覚鈍麻してもらうだけですよ?アルコールで酔っ払っていただいて。出来ればいびきをかいて寝ていただけると幸いです。


「は、三国志演義の故事に名将関羽が酒を呑みながら碁を打つことで名医華佗の施術の痛みを誤魔化したというものがございます。

それにならい、焼酎と味醂を混ぜた柳陰をお持ち致しました。

数滴青柚子をしぼり混ぜてありますれば、強さの割には飲みやすくなるよう調整しておきました。今晩は一舐め、二舐めしていただき味に慣れていただくのが宜しいかと。それと今晩は明日のことが心配で眠れないこともあるかと思いまする。そんな折にも、この酒の力を借りれば、速やかにお休みいただけるものと存じます」


「そうか、痛みのことも考えてくれておるのだな。儂も痛みの対策になんぞ噛み締めて我慢しようと思い麻布の束なんぞを準備しておいたが、いらなかったか」


「あ、いや。一応、痛みに耐える為、ご準備いただいたのです。それも使えるようにしておくのが宜しいかと。では、こちらにて準備いたすものもございますので、厨に向かいたいのですが…。よろしゅうございますか?」


「あいわかった。誰ぞ、厨に坊丸一行が向かうと知らせよ。厨の準備もあろう。しばし待つ間、義母上や権六の近ごろの様子を聞かせてくれぬか?それに坊丸は奇妙丸様の小姓をしておるだろう。あわせて岐阜城の様子なども聞かせて欲しい」


「しからば…」


柴田家屋敷の様子や岐阜城にバテレンが来て大変だったことをなどを話すと、盛次殿の奥方様が意外な事にバテレンの話に食いついたので四半刻ほど雑談することに。早く準備して、一眠りしたいんだけどなぁ…。


雑談の後に訪れた厨では、生理食塩水の作り方を指導して、六升ほど作ってもらうよう頼みました。他に手指洗浄用に湯冷ましなどを依頼。ラテックスやニトリルの手袋が無いから、時々手指洗浄しようかと考えております。


そして、なんと、犬山城の方々も色々と手配していただいたようなのでした。が、出産の時に準じてのご用意だったので、ちょっとよくわからないものも混じっております。


盥、晒し木綿の束、油紙、綱というか荒縄。などなど。


うん、盥はわかるんだ。出産の時にお湯や水を張って使うんだろし。有難く使わせていただきたいと思います。

晒し木綿の束。当方でも準備してきましたが、ガーゼがわりできるので、本当にありがたいです。

油紙。ええっと…。後産を受け取るときとか使うんですか…。異物や切除片を受け取る膿盆がわりになるかな?

綱?綱?なんで、綱?あ、はい。出産の時に梁に結びつけて垂らすんですか。で、それにつかまって分娩すると。産綱、力綱と言うんですか。準備していただいて大変ありがたいんですが、この綱は使う場面なさそうなんで、片付けていただいて、結構です。


さてさて、あとは加藤さん桃花さんと打ち合わせだな。


柳陰をカクテルと言いかける坊丸君でした。

江戸時代の出産は座産と言われるもので産綱につかまって分娩したそうです。

しかも、声を出すのははしたないということで声を押し殺して出産したらしいですよ。

調べた限りでは、鎌倉・室町・戦国時代も出産風景はだいたい同じ様です。仰臥産になったのは明治以降だとか。


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