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47話 豆腐と桃園の誓い

ども、坊丸です。

農業改革は、塩水選による種もみの選別による品質の確保と将来的な品種改良、各種たい肥の試作による土壌改良、農機具の改良による作業の効率化を柱とする方針が決定されました。一人ブレインストーミングとお千ちゃんのドジのおかげで。


ただ、実現するには、補佐役というか実働部隊というか、労働力というかが必要。農村での実働部隊と労働力は村の皆さんに期待するし、村での補佐役は仁左衛門さんがきっと頑張ってくれるはず。

あとは、農村以外の部分での交渉などで自分の代わりに交渉相手の矢面にたってくれる人、希望です。

某特攻やろうAチー夢に出てくる「ハッタリかまして、ブラジャーからミサイルまでなんでもそろえてみせるぜ!」ってくらいの交渉力の人、希望。

ま、補佐役兼代理の交渉人については柴田の親父殿に相談だな。


朝餉の後に、柴田の親父殿に今後の相談です。


「親父殿、農業改革の策、いくつか考えましたので、お時間をいただければ」


「ふむ、もう考えたか。そなたのことだ、昨日石田村を見て、一晩で考えた、というわけでは無いのか。殿にご下命いただいた後から、既に考えていたのだろう。聞こう。っと、その前に、今日は末森に行く予定であったからな、末森に使いを出してからだ、次兵衛殿に仔細頼んでしてくる、しばし待て」


柴田の親父殿は一度、広間のほうに向かいました。その間は、今一度、何を話すかまとめてっと。

壱、農業改革の総論。たい肥導入による収量の増加、農機具の改良での効率化、塩水選による種もみの選定の三本柱

弐、農業改革の各論。塩水選はそのままだとして、たい肥作成と農機具改良の詳細説明。

参、人材の相談。たい肥作成のために、酒かす、おから、干鰯の手配に必要な交渉力のある人材の手配、農機具作成についての木工及び鍛冶技術のある人材の確保について。


よし、脳内でプレゼンの骨子完成。あと、千歯扱きと備中鍬、鋤とシャベルの中間のようなもののイラストも準備したし。

大丈夫、できるはず。きっと、多分。


「坊丸、待たせた。で、石高を上げる策、さっきは農業改革とか言っておったが、貴様の考えた策を、聞こうか」


「はっ、親父殿。伯父上からご下命いただき、先日、実際に石田村を視察して考えたものでございます。

まずは、石田村の実情を鑑みるに、開墾した土地を2世代にわたって耕してきた割に土地が瘦せております。開墾しやすさを選んだ結果、思ったほど土地が良くなかったか、あるいは、肥料の使い方が悪いのか、効果の高いたい肥の導入が第一。次に農機具の改良による農作業の効率化が第二。最後に種もみの選別による品種の選定や改良。この三本柱をもって石高を上げる策としたい思います」


「農業改革の三本柱か。続けろ」


「は、一番労力がかからずに、ある程度の効果が見込めるのが、最後の種もみの選定です。濃い塩水に種もみをつけると、ぎっしり身の詰まったものは沈んだまま、身のつまりの悪い軽いものは浮いてきます。これを行うことで、より身の詰まった種もみのみを選別します。これを毎年行い、さらに特に身の詰まった種もみのみを植えた田んぼを作っていけば、特に身の詰まった稲の種類ができるかと思います」


「ふむ、実際に見てみないとわからんが、話の筋は通っている。しかも、準備は塩だけときた。金もかからんのも良いな。明日、石田村の仁左衛門のところに行って説明してみろ。」


「はっ。次にたい肥の改良です。石田村では、雑草をすきこむ緑肥、わらくずや敷わらで使ったものをすきこむこと、牛馬の糞の厩肥、あと下肥をつかっています。厩肥はいいのですが、そのほかは、肥料としてはちょっと弱いと思います。しかももともと土地が痩せていたところなので、十分な効果が出ないのではないかと思います。そこで、より効果の高い肥料を作りたいと思います。案は2つ。おからや酒粕、油粕をもとに、厩肥、もみ殻、わらくず等を混ぜて寝かせて、肥料としての質を高めたものを使う案が一つ。もう一つは、鰯や食用にするには微妙な小魚を干して砕いたものを使う案です」


「おからや酒粕、油粕をもとにいろいろな肥料を混ぜて寝かせるのか。なじませて、効果をあげるんだな。ただ、寝かせるとなると、時間がかかる。おからや酒粕、油粕の手配も必要だな。おからは豆腐屋か…。幼馴染の玄久のやつ、たしか嫁の実家が豆腐屋だったな。玄久は次兵衛の縁者じゃから、次兵衛に話してみるのがいいだろうな。酒粕、油粕はどうしたものかな…、まあ、おいおい考えるがよかろう。イワシや小魚を干したものは、漁師や網元次第よな。こちらは干して砕くだけだから、小魚が手配できれば比較的速やかに準備できそうじゃの」


「おからの伝手は、次兵衛殿にあるのですね!よかった!あとは、酒粕や油粕の手配と漁師や網元に鰯や小魚を分けてもらう手配です。こちらは、自分一人では何とも…」


「うむ、豆腐屋と縁のあるのは、儂の幼馴染で、次兵衛の縁者である玄久の奴なんだがな。奴の妻が豆腐屋の娘なのだよ。

で、玄久の奴とその娘が一緒になるのにな、町娘では格好がつかんというと言うことで、玄久の奴が本家筋の次兵衛に泣きついて、その娘を吉田本家の養女に一時したのだよ。

そのあと、祝言を上げたのだよ。まあ、玄久は次兵衛のところの一門だからな、義理の弟になってもまぁ、いいだろうということになったはずだぞ。

あの祝言では儂と玄久はお互い幼馴染で、お互い次兵衛の義弟だからな、どっちが兄貴分か決めるのに、呑み比べをして楽しかったなぁ」


「はぁ、ちなみに、吉田玄久殿と親父殿ではどちらが飲み比べに勝ったのですか?」


「当然、儂だぞ!で、儂が兄貴分ということで、幼馴染で義兄弟ということなった!周囲からは関羽と張飛だと笑われたわ!」


えぇっと、その流れだと、親父殿と玄久殿の義理兄は吉田次兵衛さんになるので、劉備は吉田次兵衛さんになるんですが、わかってますか?親父殿?


「では、おからの手配は、次兵衛殿を通じて、玄久殿に依頼ということで、良いですね。酒粕は酒蔵、油粕は油屋、干し鰯は漁師や網元なんですが、いうこと聞いてくれますでしょうか?」


「坊丸がいきなり行って相談しても、まぁ、むりであろうな。儂や次兵衛がいるときは良いが…、いつもついてやれるとは限らん。仕方ない、坊丸に石高上げ策のために下命があったこと、坊丸に協力すべきことといった内容で殿に一筆したためてもらおう。それがあれば、儂や次兵衛がいない時は、誰かにそれを持たせ、坊丸の供をさせればよかろう」


「申し訳ございませんが、親父殿。伯父上に一筆いただけるよう、手配をお願いいたします」

と言って、深く頭を下げてみた。


「良い良い。殿も、坊丸に指名で命を下したのじゃ、頼めば一筆書いてくれるであろう。あとは、農機具の改良か…」


「はい、こちらに案をまとめてございます。一番右のものは鍬の改良品です。今の鍬は平たい一枚板ですが、すこし先端を変更して三本、四本の櫛のようにします。刺さりやすくなるのと、土を起こすときに、櫛の隙間から土がほぐれて柔らかくなりやすいかと。また、鉄を使う量を減らせるかもしれません。鋤については、先端の部分の肩に当たる場所を大きく取り、踏むことができる場所を作ります。こうすることで、体重や足の力で先端を奥深くまで土に刺せますから、非力なものでも深くまで耕せるかと。持ち手を横棒一本から、穴の開いた感じにして握る場所を作るのもいいかもしれません。あとは先端をすこし匙状にすれば、起こした土を移動させるのにいいかと。そして最後が、一番の自信作、千歯扱きです。鉄製のこの台の上に飛び出した釘のようなものの間に稲を置いて、一気に引くと、脱穀がすぐできるという逸品です」


「うむ、農機具の改良は、一番最後じゃな。農民の作業の効率を上げるためにいろいろ考えるのはいいが、正直、あまり勧めん。良いか、坊丸。鉄製の農具は、一揆や落ち武者狩りの時は、本当におそろしい武器になるのだぞ。そこをわかっているか?可能なら、鉄製のものを取り上げて、木製のものを配りたいくらいじゃ。落ち武者狩りの時の鍬や鎌の怖いことと言ったらないぞ。それにな、一番の自信作といった、千歯扱きという農具、これは、ダメじゃ!」


え?え?なんで?



谷崎純一郎 盲目物語にあるエピソード 豆腐屋の玄久より引用

ブラジャーからミサイルまでは特攻野郎Aチームのオープニング フェイスマンの紹介より引用

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