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467話 金創医坊丸 準備奔走中 禄ノ段

ども、坊丸です。


手術用の針ができました。なんとバネ孔つきです。

いつもながら、自分の無茶振りに応えてくれる加藤さんに最大級の感謝を。


そして、自分、見ちゃったんです!火鋏みという名の器械を!なので、それを元にペアン鉗子とモスキート鉗子を作ってもらうことに。ラチェット機構の説明がえらく大変でしたが、途中から加藤さんは分かってくれたご様子。鉤爪を二つ後から感じで対応するそうです。


あ、片岡さんはなに言ってるんだ?このお子様は?という表情から脱出できず。あとで加藤さんに詳しく聞いてください。お願いします。


で、数日後、加藤さんが柴田の屋敷に久しぶりに出仕。懐から取り出したのは…。

まぁ、なんということでしょう!自分が拙い絵で描き起こしたペアン鉗子とモスキート鉗子が、今目の前に!

しかも、直と曲がりが各々二本づつ。計八本の鉗子が。さっそく手にとって、ラチェット機構を確認。かみ合わせは問題無し。二つほど外すのに力を要しましたが、油をさして動かしまくっていれば少しは動きが良くなるでしょう、たぶん。


さっそく木綿糸、針、直のペアン鉗子で何かを縫ってみたいところ。お滝さんからもらったゴボウの端切れ二つを縫い合わせて…。うむ、完璧。

あ、木綿糸を使ったのは練習に絹糸使いたくなかったからですよ?絹糸高いし。


サクサク縫って端切れを繋げて遊んでいる様子をじっと見つめる加藤さん。


「自分が作った品々がこのように使われるのですなぁ。しかし、ゴボウもスッと通る針とは…。再度の火入れをしたので、針の切れ味が鈍ってないか心配でしたが、杞憂のようですな。さすが、姉小路針でございまするな」


いやいやいや、すごいのは加藤さんもだからね!

そういう言葉を加藤さんにかけると、いやいやいや、それがしはそれほど、とか言いながらはにかんで頭を搔く様子の加藤さん。褒めたんだからもっと素直に喜んでくれて良いのにぃ。


しかし、あれだね。加藤さんのお子さん、夜叉若君はたぶん加藤清正公になる人だからね。正史だと加藤さんのこの技術者魂、職人根性が伊都さんが語る父親の昔話として夜叉若君に伝わったんだろうねぇ。


まぁ、この世界線ではダイレクトに親子の絆として伝えてほしいところですがね。ウムウム。あ、夜叉若君には自分の小姓仕事とともに鍛冶仕事も覚えてもらわんとな。加藤さん親子が、二人で一つの玉鋼を叩いて作る坊丸専用の刀とか火縄銃とかロマンしかないし。


針と糸、手術用のペアン鉗子やモスキート鉗子が手に入ったので…。後はメス、西洋鋏、ピンセットだな。まぁ、刃物はこの時代、みんな腰に差しておりますからね。どうにでもなるでしょ。剃刀とか小柄を流用して作ってもらえばよさそうだし。

ペアンができたからね、そこに和鋏の技術を組み込めば、西洋鋏はなんとかなるだろうし。最悪、和鋏でも良いしね。ピンセットは箸の上が繋がっている感じで説明しますか。


「加藤さん、あと、必要なものはこんな感じのものなんですが…」


やれやれまだ何か作るものがあるのかといった顔になる加藤さん。しかし、自分が筆でピンセットと西洋鋏を紙に書き付けていくとすぐに真剣な表情に。


「ふむ。火挟み、火箸しと同じような形をした鋏ですか。なかなかに挑みがいのある代物ですな。で、こちらは箸のうえが繋がっていて、平たいと。この繋がった箸は一本板の鉄を薄く伸ばして曲げるだけなので、すぐにでもできますな」


さすが、加藤さん。その技術力にしびれるぅ!憧れるぅ!


「あ、あと、小型の刃物が必要ですね。刃渡り一寸から一寸半の小刀みたいなもので切れ味抜群なものが欲しいです。小柄だと少し大きいかなぁ、と思うんですが…。剃刀、とかかなぁ」


「小柄か剃刀にござりまするか…。剃刀ならば普通に買えまするな。ちなみに小柄だけ手に入れるのは、ちと難しいかと。三所物の一つでございますので、数物の打ち刀には普通はつきませぬし、三所物が付く様な刀は名のある刀匠に頼んで作るものですので…。普通は小柄だけを作るということは致しませぬ故」


「であれば、剃刀をどこかで手に入れるのが良いということですね」


「それが宜しいかと。で、あまり大きな声では言えませぬが、先日、師匠にして義父にあたる清兵衛殿が岐阜城下の寺寺に剃刀を納めております。その帰りに伊都と夜叉若の顔を見に来てそう申しておりましたので、間違いないかと。

師匠のことでございますので、頼まれた数より数本多めに作っておるはず。なので、師匠に声をかければ速やかに剃刀数本を手に入れられるかと存じまする。

手前味噌でございまするが、それがしの師匠は世には知られておりませぬが、その腕は関の名のあるの刀匠に勝るとも劣りませぬ。もし、坊丸様のお許しがいただけるのなら、師匠の剃刀を数本手に入れておきまするが…。如何致しますか?」


ふむ。加藤さんの師匠の剃刀ね。よし、良いね。じゃ、それ、下さい!


「加藤さんの師匠の作品なら問題無いでしょう。その剃刀二、三本手に入れて下さい」


「ありがたき幸せ。義父も喜びましょう。伊都や夜叉若に会える機会と、喜び勇んで品を納めに参りましょう。それと…。もし、坊丸様が三所物が付属した刀を必要とする、その時はこの加藤清忠、全身全霊。以て刀を打たせていただきたく。義父同様、関の名工にも負けぬ品を納めさせていていただく所存にござりまする」


そう言うと、深く平伏する加藤さん。


この感じ、小柄が欲しいとか言ったから、加藤さんのプライドを傷つけちゃったのかなぁ…。

よし、自分のお金で刀を打ってもらうときは、是非とも、加藤さんに作ってもらいますよ!必ずね!

鍛冶屋清兵衛は伊都さんのお父さん。なので、加藤清忠さんから見ると義父。加藤清正さんから見ると母型の祖父になるわけです。


小柄、コウガイ、目貫の三つを合わせて三所物。名のある刀には三所物が付属しております。



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