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465話 金創医坊丸 準備奔走中 四ノ段

ども、坊丸です。


はい、そんなわけで些少な俸禄から針を購入いたしました。お妙さんと桃花さんの分も。

おねだり上手な大人のおば…、お姉さんのお妙さんの口車には勝てませんでした。それと桃花さんおねだりモードの上目遣いにも。

坊丸、チョロいなとか言わないでくださいよ。自分が一番わかっていますから。トホホ。


で、桃花さんたちとは城下で別れましてね、針をもって加藤さんの自宅兼工房に訪問。

一応、自分の家臣扱いですが、鍛冶師としても活動するために足軽衆の住んでいるエリアではなく他の工房もあるエリアにご自宅はあります。

そして、色々と自分の要求に答えてもらうこともありしっかりとした設備を整えてもらえるようにそれなりに資金を投入しております。坊丸君、ブラックじゃないからね!


そして、鍛冶作業を手伝うのに加藤さんの弟弟子に当たる方が鍛冶の助手兼若衆扱いで伊都さんのお父さん、鍛冶屋清兵衛さんの下から派遣されたご様子。

あ、鍛冶屋清兵衛さんは美濃在住なので、娘家族が岐阜に住むようになってから時々遊びに来ては孫の夜叉若君の成長する様子を肴に酒を呑んでるそうです。


それはさておき、加藤さん宅の鍛冶場の側にて、自分、手術用の針を簡単に筆書きしてみせるわけです。

曲がり具合とか。一応、バネ孔の様子とかもね。


「ふむ。坊丸様。つまりは釣り針の如く曲げよということですな。して、この孔はどうなっているのでしょうか?針穴の真ん中に溝が切ってあるのは分かりまするが、それだと、糸がスルリとその溝から抜けてしまうのでは?」


あ、そう思いますよね。自分も学生実習とかで手術用の糸針を見せてもらった時、不思議だったもの。切れ目の入ったスポンジとか縫合の練習で何度も縫ったなぁ、学生時代。


「それはですね。この溝の部分、下の方に行けば行くほど両脇からギリギリ寄せている感じなんです。糸を上から差し込むと滑って入るけど、出ようとすると孔の両脇から寄せた部分が抵抗になって出ていかないという。なので、わざわざ孔をじっと見て通さなくても良いという代物なのです」


本当はバネ孔の金属部分を周りより低くして針と糸の間に抵抗を少なくしたいけど…。それはさすがに今の金属加工技術では無理かもしれないので、求めはしない予定。


「ふむ、これは正確に真ん中でなければなりませぬか?少しくらいズレても良ければこの溝切もできなくはありませぬな」


「で、できるですか?」


「我々は刀に銘を刻みまする。タガネの一番小さいもので試せば、できるやもしれませぬ。ただ、全部正確にというのは無理でござりまする故、何本か試してうち壱、弐本出来れば御の字というところでしょうか」


よしわかった!本日購入の針のうち十本はそちらに回そう。で、弐、参本でも出来れば良しとしましょう!


「では、早速。片岡殿、鍛冶場に火を入れておいてくれるか」


「兄弟子、いや、清忠殿。今はそなたの家臣扱い故、庄右衛門と呼び捨てにしてくれて良いのですぞ。それと、出来れば、清忠殿の主君、坊丸様に紹介と挨拶をお願いしたいのですが。それがし」


「う、うむ。坊丸様。既にお気づきとは思いまするが、当加藤家でもこれまで以上に坊丸様のお役に立てるよう、人を雇い入れ申した。これなるは、片岡庄右衛門国秀と申しまする。生国は近江にて、我が鍛冶の師匠にして義父の清兵衛殿の遠縁にあたりまする。鍛冶の弟弟子でもありまして、此度岐阜に居を構えるにあたり、鍛冶の手伝える人手を義父に無心したところ、当家に仕える次第となり申した。宜しくお見知り置きのほど、お願い申し上げまする」


「なんだ、清忠殿。やればできるではないか。さて、ご紹介に預かりました片岡庄右衛門国秀にございまする。当家の主、共々宜しくお願い申し上げまする」


そう言うと自分に頭を下げる片岡庄右衛門殿。


「丁寧な挨拶、痛み入り申す。津田坊丸にござる。今後とも宜しくお頼み申す」


挨拶には挨拶できちんと返しておかないとね。


「さて、ご挨拶も済んだし、炉を温めておきまするぞ、清忠様、坊丸様」


ニヤッと笑うとそう言って鍛冶場に向かう片岡殿。

ちょっと加藤さんと片岡殿の立場と関係性がまだよくわからないですけれども、鍛冶が出来る血縁者ですか。最高の家臣ですね、加藤さん。


「いやはや、なんとも。やっと坊丸様の家臣としての立場に慣れたと思いましたが、人を使う立場にはまだまだ慣れませぬな」


そう言って苦笑いしながら頭をかく加藤さん。


「いえいえ、いずれは慣れてもらわねば困りまするぞ。何と言っても加藤清忠殿はこの坊丸の筆頭家老になる人物。この坊丸、伯父上のもと立身出世して城持ちになるつもりでございますから!その時には加藤さんも大禄で大身の織田家陪臣になるはず!ですからね」


そう言って呵呵と笑ってみせるとと、加藤さんは苦笑いをさらに深くするのでした。


片岡庄右衛門国秀は片岡清左衛門の父で実在の人物。片岡庄右衛門、片岡清左衛門ともに伊都、鍛冶屋清兵衛の遠縁にあたる。

片岡清左衛門は正史では加藤清正に仕え、加藤可重と名乗り加藤家重臣になる人物です。


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