461話 金創医坊丸、準備構想中
ども、坊丸です。
佐久間盛次殿からの無闇に厚くて篤くて熱い信頼を寄せていただいた坊丸です。
この信頼に応えねば、と思うわけです。
が、自分の外科医として技量はスーパーローテーションで回った外科数カ月と何度もこなした救急外来、そして外科系マイナー科医師として培った皮膚縫合と皮下縫合の技量のみ。
しかも、この時代ですからね、医療器具もゴム手袋もないわけで。どうする、坊丸。
とりあえず、必要そうな器具を洗い出してみることに。
針と糸。できれば持針器。
メス。
鑷子。
鋏。
モスキートやペアンの類。
ゴム手袋。
生理食塩水。
麻酔薬。
などなど。
うん、どこから手を付けようか?
糸は…。吸収糸とかナイロンはもちろん無理なので、絹糸一択ですね。
ええっと、これは婆上様とかお妙さんに頼めば良いかな。貴重な絹糸をそんなことに使うなんて!って怒られること確定ですが、ね。
針は…。釣り針ってわけにもいかないし、縫い針は直針だろうし。
ただ、普通の裁縫用と違って手術用の針ってだいたいバネ穴だったんだよなぁ。普通の裁縫用みたいな穴もあるようだったけど、少数派だった記憶が…。
バネ穴だからこそ、糸の装着が楽なんだけどね。
最悪、縫針を湾曲させる加工だけしたものでどうにかするしかないでしょうね…。
まぁ、ここらへんは加藤さんの鍛冶師の腕に期待しつつ相談だな。
メスは小柄を代用すれば大丈夫そう。でも、自分、小姓役をする際に護身用、警備用として持たされた懐刀はあるけど、あれだと三十センチくらいあるんだよなぁ。正直、刃先が二、三センチあればいいから、小柄でも十分長いんですがね。
元服前ですからね、三所物が揃ったようなきちんとした拵の刀はまだ所持が許されておりませんので、自分用の小柄はないわけで。
小柄だけつくるわけにもいかないですからねぇ。誰かの小柄を借りるしかないでしょうな。
ピンセットは…。毛抜きを代用するしかないかなぁ。
毛抜きをベースに加藤さんに改良してもらうしかないなぁ。って、また加藤さん頼りだな。
鋏は…。
こっちに来てから、いわゆる握り鋏しか見てないんだよなぁ…。u字型のいわゆる和鋏ってやつですね。洋鋏はあるんかなぁ…。見たことないしなぁ。
和鋏って、使用しない時は開きっぱなしだからね。洋鋏が入ってきた時に一気に置き換わったのはこのあたりが原因かもね。
それはさておき、これまた、和鋏の先を少し湾曲させたもので代用かな。あ、また、加藤さん案件やなぁ…。
モスキート、ペアン、持針器は…。
洋鋏がないのに、さらにそれを変形させたような器具があるわけもなく…。図面を描いて加藤さんに相談だな。最悪、無くてもやるしかないだろうし…。
ゴム手袋は、無理ですな。国内にゴムの木なんてあるわけないし。手袋なんて戦の時のゆがけか鷹狩りの時の革手袋くらいしか見たことないし。以前見たゆがけも素材は革みたいだったし。両方とも繊細な指先の感覚や作業には向いてなさそうだしなぁ…。
あれか、諦めて素手、か。佐久間盛次殿が感染症持っていないと良いなぁ…。
創部の洗浄するのに生理食塩水も欲しいけど…。尺貫法でどうしろと…。まぁ、何とかそれらしいのを作るしかないだろうけど…。尺貫法の重さって一貫とか何匁とかでしょ、液体は一升とか一合だからどう整合性があるのかいまいちわからんのよ。尺貫法を使いながら、うまいこと近似させるしかないよねぇ。
麻酔薬は、さすがに根本的に無理。無理の無理無理ぃぃぃ。三国志演義で見た関羽と華佗の手術の逸話しかないか。濃いめのアルコール呑ませて軽く泥酔してもらうか、盛次殿に。
さてさて、どこから手を付けたもんだか…。
とりあえず、絹糸と針については、まずはお妙さんに聞いてみよう!
え?桃花ちゃんに聞かないのかって?あの子、忍びだしなぁ…。武器として針を使うことはあるかもしれないけどね。あ、あと、普通の娘さんにしている時に、裁縫くらいしてるだろうけど、その場合は針や絹糸の購入には関わらなそうだし…。
婆上様にいきなり聞きに行くのも、ねぇ。
「お妙さ〜ん。いますかぁ?何処にいるかなぁ…。あ、お滝さん、お妙さん見ました?」
「ん?どうしたんだい、坊丸様。お妙を探してるのかい。それなら、伊勢攻めの前に柴田の幟旗のほころびを繕うって、言ってたよ。縁側でやってるんじゃないかい」
「ありがとうございます!お滝さん!行ってみます!」
よっしゃあぁ!ちょうど良いことに針仕事しているようだぞ!行ってみよう!
手術用の針は、バネ穴、弾機孔という形になっています。細溝を滑らせるように孔に入れると、二つの返し部分で抜けづらくなっているのです。
気温4℃の時の水の密度が1立方センチメートルあたり1グラム。これは定義なので仕方ないんです。とりあえずそういうもんだと覚えてください。てか、覚えてますよね?
少し短いですが、キリが悪くなりそうなでしたので、ご勘弁を。
少しでも「面白い!」「続きが気になる」と思った方は、下の★でご評価いただけると、作品継続のモチベーションになります。
宜しくお願いします。




