460話 信頼と決断と
だいぶ空いてしまいました。
色々と下調べをしていると、そちらが楽しくなってしまうのは、自分の悪い癖、ですね。
ども、坊丸です。
佐久間盛次殿のお見舞いという名の、軍権や出陣の際の相談と診察に行った二日後、南伊勢の北畠家を攻めるというご下命が信長伯父さんより発令されました。
柴田家の御屋敷もそれに向けて色々準備するわけですが、坊丸くんはあくまでも預かりな上に奇妙丸様の小姓役なわけで。
奇妙丸様が留守居をするなら、自分も留守居なわけです。
それと、佐久間盛次殿の右脚の怪我というか腫れというかを治す算段をしろという柴田の親父殿のご依頼もあるわけで。
なので、今回は加藤さんは出陣させずにこちらの手伝いをしてもらう方向で柴田の親父殿や吉田次兵衛さんの許可を取りました!主に鍛冶師として。
まぁ、北畠攻めはなんだか知らないけど長引くのを信長公記のデータで知ってるからね。加藤さんが討ち死にするリスクを減らしたいなんて、一欠片くらいしか思ってないよ!ホントだよ
柴田屋敷も出陣準備でバタバタはしてはいたんですが柴田一党の留守居役として中村文荷斎さんが残るということが判明しました。
ですから、いつものように名目上の代表人になっていただき、再びご機嫌伺い、お見舞いという触れ込みで佐久間盛次殿の診察に向かいました。
小姓役の貴重なお休みを消費して、ね。今回は、信長伯父さんからのご下命ではありませんから、小姓役の通常業務はそのままになっております。
ご恩と奉公の中世的主従関係に加えての、預かり親からのご依頼という超ブラックな労働環境に血涙もんですよ、ええ。
しかも今回は、虎哉禅師にご同行いたただきました。それと今後のことも考えて顔見せがてら加藤さんもご一緒に。
で、盛次殿に面会して、創部を確認。
本日の盛次殿は、過日の時よりも少し動くのがつらそう。創部も赤く腫れております。
そして、やっぱり何か硬いものが筋肉の中にある感じ。
虎哉禅師のご意見も聞きたいので、見てもらいますが…。
「古傷が腫れておるな。いくら拙僧といえども金創医の如き技は無し。医薬の心得は多少なりともあるが、治りきらぬ傷を癒すのは、ちと、難儀よな」
なんのかんのと言っておられますが、漢方薬での対応はできるけど、傷開いたりはできないってことですね。
まぁ、本業は禅僧ですからね、無理を言ったらバチが当たるというものです。
「先日に続き、確認させていただきましたが…。傷の中に何やら硬いものがある様子」
「槍を受けたあとに転んだでの。小石でも傷に紛れ込んだやも知れん」
「と、なれば、その小石が傷が治るのを邪魔している公算が高いかと。傷を開いて取り出せば、或いは治るやもしれませぬが…」
「治るか?」
「良き金創医を見つけていただければ、或いは。なんぞ伝手はございまするか?」
「金創医、か。正直、伝手はない。美濃は知らんが、尾張には名のある金創医はおらんからな…。で、坊丸、そなた、治せるか?」
くっ。治せるか、と言われれば、道具さえあれば、たぶん、できる。創部を切開して、筋肉のなかから異物を発見、止血しつつ、閉創。ミッションコンプリート。
でも、道具がなぁ。何かあっても責任もとれないし…。
「盛次殿、お戯れを。それがしは、単なる小僧にございます」
「そこに居る加藤とやら、それに吉乃様の病は治せたのにか?」
くっ。それはそうだけど、二人は内科系の疾患、それに対して盛次殿は外科手術が必要な状態。同列には語れないよ…。
「過分な評価ありがたいのですが、それがしの家臣、加藤清忠を癒したのは、こちらにおられます我が師父の虎哉禅師にございまれば。それがしはあくまでもきっかけをつくり、禅師につないだまで。吉乃殿は体に足りないものを補っただけにございまする。ほかの地方や京であれば、良き金創医がおられるやもしれませぬ。そのような方をお探しいただきたく」
「そなたの話、よくわかった。だが、断る。儂はそなたに頼みたい。例え、どのような結果になろうとも、だ」
くっ。その信頼に応えたい。『信頼は時として実力以上の力を引き出す源となるのだよ』と言った人が宇宙な世紀でスターがダストでメモリーな作戦にか関わった人が居たとか居ないとか。
命を果たしてこそ侍。信頼に応えてこその武士。
「ほ、本当によろしいので?なんの実績もない小僧ですぞ」
「儂はこの傷をおった戦場で初陣の盛政にその背を預けた。何の違いがあるや?」
いやいやいや、自分の子に戦場で命を預けるのとはかなり違いがあると思いますが?
「もう一度お聞きいたしまするが、本当に宜しいので?」
「ふっ。坊丸。お主、自信がないのか?」
「盛次殿は、織田家の柱石。家老格の一角でござりますれば。自信がないわけではありませぬが、万に一つ、と思うと、いささか尻込みいたしまする」
「自信がないわけではない、か。ならば、良し。お主に任せる。やってみせよ」
最後は、歴戦の将として圧を放って来た盛次殿。病で体が小さくなったとはいえ、ここ一番での気迫みたいなものはまだ衰えてはいないご様子。
「わかり申した。津田坊丸。盛次殿の体の中の異物を取り除くのに全力を傾ける所存。なれど、傷を治すことをこの坊丸に任せるという一文、熊野誓紙にていただきたく」
一応、同意書的なものをね、いただきたいかと思います。念の為、ね。佐久間盛政くんに親の仇とか言われたくないしね。
「あいわかった。そのようなこと、お安い御用だ」
そう言うと細くなった体を揺らしてカラカラと笑う盛次殿。うん、やっぱりこの人を治す為に頑張ろう。
「信頼は時として実力以上の力を出す源となるのだよ!」は昔、機動戦士ガ▷ダ△ スターダストメモリーにて聞いた記憶がある一言。
が、スターダストメモリーの名言集などには出てこないので、自分の記憶違いかも。
「たが、断る」はジョジョに奇妙な冒険、第四部の露伴で岸の方にいる漫画家な人の名言。使い方がちょっと違うのは分かってますが、どうしても言わせたかった。
少しでも「面白い!」「続きが気になる」と思った方は、下の★でご評価いただけると、作品継続のモチベーションになります。
宜しくお願いします。