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457話 ちょっとお見舞いに

ども、坊丸です。

ルイス・フロイスさん達が京都に帰ってすこし、平穏な日常です。

『信長公記』の知識ではもう少ししたら、対北畠戦が開幕です。八月二十日に岐阜を出立して南伊勢、北畠家の本拠地大河内城を攻めるはず。

信長伯父さんのキャラからすると、八月半ばに軍議があって方針が示されるはず。きっと、たぶん。


そんなわけで、ここ一ヶ月程は平穏のはず。いや、平穏であってください。


そんなことを思っとりましたら、柴田の親父殿と吉田次兵衛さんが犬山まで、佐久間盛次殿の見舞いに行くから、一緒に来いと言う話に。

何やら、六角攻めでの傷がどうにも癒えず、良くなったかと思うとまた化膿してくるとのことで、それをどうにかできないかということらしいのです。

加藤さんや吉乃さんを治したことを評価いただいてのことらしいのですが…。


この時代の医師薬師は基本漢方薬ですからね。金創医という戦での刀傷や怪我をメインで診る方々もおられるようなんですが、伝え聞くところによると膠を創部に当てて油紙で保護、さらに(サラシ)で巻き付けるということをなさるようです。


そんなわけで、犬山城に到着。

前日に先触れを出していたので、速やかに御殿に通されます。さすが、吉田次兵衛さん。先触れなどの連絡業務もバッチリです。坊丸もかくありたいものです。


え?それは誰と比較してるのかって?

特に想定はしていませんが、伯父にあたる人物と学問の師匠にあたる人物でしょうかね。ええ。


ちなみに犬山城下はあの犬山城攻めでかなり焼失したはずですが、かなり復興しておりました。こういうところを見ると、佐久間盛次殿は内政官としてかなり優秀な人物であることが見て取れます。


自分は佐久間の名前で家老の末席に居るだけみたいな事を言っていた時期もありますが、なかなかどうして、堅実な働きぶりはも評価されて良いものだと思うわけですよ、自分。


まぁ、そういうところをキチンと評価したからこその犬山城城主抜擢なんでしょうが。脳筋の理助…、じゃなくて佐久間盛政殿がこれと同じ事できるんだろうか?できるようになると良いよね、ウンウン。


そんなことを考えながら犬山城表御殿を案内してもらっていると、大広間に到着。

お見舞いって聞いてたから、私室の方に通されるのかと思っておりましたが、大広間なんですね。


柴田の親父殿を中央に一段下がったところの左右に吉田次兵衛さんと自分が着座。柴田家家宰の吉田次兵衛さんと同格に近い扱いにすこしこそばゆいわけですが。まぁ、一応、織田家連枝だし、年少で小身とはいえ直臣だし、なんとかギリギリで同格…、いやぁ、やっぱり同格未満だな。


などと考えていたら、佐久間盛次殿登場。

杖をついて右脚をかなり庇うようにしてゆっくり歩いてきました。で、その後ろから理…佐久間盛政殿も登場。


「柴田家の皆様には、見舞いのことを感謝する。右脚の曲げ伸ばしで膝回りがとても痛むのでな、見苦しいとは思うが、右脚は伸ばしたままで、お許し願いたい。あわせて脇息も使用させてほしい。これも、お許し願いたい」


そう言うと足を伸ばして着座する佐久間盛次殿。そういえば、脇息も置いてありましたが、本来は私室でしか見ないものですからね。右足を伸ばして座るとどうしても重心が左に寄りがちになりますからね、左脇の下に脇息を置いて寄りかかるのは、合理的かと。


「佐久間殿には、足の不自由なところ、お出迎え、あいすまぬ。本日は縁戚である故に私室でもよかったのだが…。一応、先に勤めを果たすか。ごほん」


え?今回の訪問て単なるお見舞いじゃないの?

勤めを果たすって何?聞いてないけど。

それはそうと咳払いの後に、姿勢を正した柴田の親父殿が切り出しました。


「信長様より佐久間盛次殿に内々に確認してくるよう申しつかったことがある故、本日罷り越した。八月下旬に織田家の総力を挙げて南伊勢の北畠具教、具房父子を攻める予定であるとのことにござる。佐久間盛次殿におかれては、此度の軍に加われるか、否か。とのことにござる」


そう言うと、かしこまって頭を下げる親父殿。内々に聞いてくるなら、そんなにかしこまらなくてもいいんじゃないかなぁ…、とか思いますが。こういうの意外とキチンとやるんだよね、柴田の親父殿って。


「北畠攻めか…。それとなくは聞いておったが、八月、か。もうすぐであるなぁ。

柴田殿、正直、儂は厳しい。最近は馬にも乗れん。それどころか、長く歩くだけで翌日は右脚が痛くなるし、傷の回りが赤くなってまた膿を持ってくるようじゃての」


「ふぅむ。お主が率いるのは無理か…」


「そうなるな。が、殿には当家を家老として遇していただいておる。兵や将を出さぬわけにもいかぬ。そこで、じゃ。隣に控えおる嫡男盛政を陣代として当家の軍を率いさせる。誰ぞ家臣に率いさせても良いが…。柴田家における吉田次兵衛のような人材が当家にはおらんのでなぁ。若く血気に逸るところがあるが、やはり盛政に率いさせるしかあるまいて」


「相わかった。そこに居るので聞きづらくはあるが、盛政に佐久間の全軍の指揮はちと荷が重すぎんか」


一瞬、唇を噛み、何か言い出そうとする理…盛政殿。

それをさっと制するように盛次殿の左手が盛政殿の体の前に上がったのでした。


「盛政。皆まで言うな。できる、と言いたい気持ちはわかる。が、観音寺城の戦いでのそなたの動きをみるにまだ、当家全軍の指揮は任せられん。猪武者のごとく己の武功を焦り、それを支えるために家臣を無駄に散らすがオチよ」


容赦の無い父の言葉に唇を強く噛んでただ俯く盛政殿。だが、反論をしないところを見るに自分でも思い当たることがあるのでしょう。


「さて、それを踏まえて勝家殿にお頼み申す。今回の伊勢北畠攻めでは当家の軍は勝家殿の寄騎として預かっていただきたい。過日、佐々成政殿とともに戦い、教え導いたように、当家の盛政めも一軍の将となれるよう、指導していただきたいのじゃ」


そう言うと、態勢をすこし整えて頭を下げる佐久間盛次殿。


「頭を上げてくだされ…盛次殿。儂に将器をなすよう教え導く才があるかどうかは、わかりませぬ。わかりませぬが、盛次殿の思い、受け取り申した。此度のみ、佐久間家の兵と嫡男盛政殿を寄騎としてお預かりいたしたく存じまする。盛政、それでよいな」


「はっ。織田の武の柱石である柴田勝家殿の指揮下にて戦えるは、喜びにござりまする。なにとぞ、宜しくお願い致しまする」


そう言うと、深く頭を下げる理…、盛政殿。元服後、父の負傷後、織田家家老の嫡男として求められることを受けて、すこし変わったところもあるようです。


「さて、犬山佐久間における次の出陣のこと、今の内容で殿に伝えておきまする。一応、盛次殿からも、同じことを伝えおいてほしい。宜しくお頼み申す」


「承った」


そう言うと、お互いに頭を下げ合う親父殿と盛次殿。義理の兄弟とはいえ、織田家重臣としての振る舞いをする二人。

でもね、そんな話するだけなら、自分いらないと思うですがね。なんでここに居る必要あるのかな、自分は。


「さて、公の話はこれで終いじゃ。盛次殿、足の怪我が治りきらんこと、化膿や腫れをぶり返すことは先程聞かせてもらった。今日は坊丸を伴った。吉乃様の病や咳で死にかけた家臣を癒したこともあるでな、傷の様子、坊丸に診せてみてはいかがと、母上が仰られておられてな。まぁ、なんだ。一度、形だけでも、な。坊丸が診ても治るとは断言できんが、母上に納得してもらう為、宜しく頼む」


今までの織田家重臣の顔がいきなり消えて、困ったような顔でそんなことを言う親父殿。さらには顔の前で手を合わせて盛次殿を拝み倒しておりますよ。


って、婆上様からのオーダーだったのかよ、今日ここに居るの!

「坊丸もかくありたいものです」はNHK大河ドラマ 伊達政宗の「梵天丸もかくありたい」より


タイトルの「ちょっとお見舞いに」は、となりのトトロ、メイちゃんの「ちょっとそこまで」の影響が。



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