445話 バテレンが来た! 七の段 またまたの饗応膳
4月は5話しか書けていない…。遅筆で申し訳ない。
ども、坊丸です。
柴田の親父殿が近江から急いで帰ってきてくれたのはありがたいんですが、バテレン達を饗応するっていい出しました。そして、いつもの無茶振りが自分の身に降りかかる有様。
ええ、わかってますとも、バテレンが驚く様な料理を作れってんですよね。
今までは、戦国時代の人が見たことが無い料理になるようにチョイスして参りましたが、今回はスペイン料理に近い雰囲気を狙いますか。
何故、南欧風の料理がここに!ってルイス・フロイスさんが感じたら面白いかなぁと思っちゃったんでねぇ。日本に来て故郷の料理に近いものが出たら驚いたり、郷愁を誘ったりするんじゃないかなぁ、と。
まぁ、食材は尾張美濃近辺で取れる旬のものに限られるから、いつものように元の料理とは別物になるんですけどね。
と、そんなことを考えながら厨へ向かいます。なんといっても柴田のお屋敷には自分の思いつきや前世の記憶にある料理をそれなりの形にしてくれるスーパー料理人のお滝さんがいますので。
今回もどうにかしてくれるはず。きっと、たぶん。
「お滝さん、います?」
「はいよぉ。どうしたんだい、坊丸様。また、無理難題かい?」
「まぁ、そんなところです。親父殿が明日、こちらに訪ねてくるバテレンを饗したいって。で、饗応膳ならお前だろうと、ご指名が。なので、お滝さんに相談しに来ました」
「やれやれ、うちの殿様にも困ったもんだねぇ。バテレンって、お妙や桃花が言ってた南蛮人だろう。南蛮人の口に合う料理なんか、あたしゃ知らないよぉ。坊丸様は何か知ってるのかい?」
「前に作ったプリン、甘い空也蒸しみたいなやつは甘味として喜ぶと思うんですよ」
「坊丸様。それは菓子膳だろう。饗応膳なら、一の膳、二の膳から頼むよ」
で、す、よ、ね~。
「一の膳は魚にしますか。南蛮人は生魚を食べるか分かりませんので、刺し身は外して、焼き物でいくのが良いと思います」
「焼き物ねぇ。水無月ならアユだね。長良川から捕れるやつは香りが良いからね。」
「それと…。生駒屋敷で伯父上が急にガツンとしたものを食べさせろと言ってきた時に使った大蒜を入れて熱した油、覚えます?あれにアサリやタコを入れて炊いたのを試したいんですが」
「生魚避けて、大蒜は大丈夫なのかい?確か、旬以外でも使いたいからって、坊丸様に頼まれて薄切り大蒜の干したのがあるから、それなりに香りはでるだろうけど…。そうだ、大蒜の芽も使うかい?そろそろ旬だからね。
それにしても、本当に良いんだね、大蒜油の料理なんて出して。知らないよ、あたしゃ」
大丈夫、大丈夫。オリーブオイルは使ってないけど、タコとアサリのアヒージョっぽい何かにはなるはずだから。きっと、たぶん。
「後一皿は…。何か旬の野菜を茹でるか、炊いたやつでお願いします」
「じゃ、茄子か芋茎を軽く炊いておくよ」
ん?ズイキかぁ。里芋の若芽、葉茎ね。乾燥させるとイモガラになるやつ。そうそう、大蒜の芽も旬だってお滝さんがさっき言ってたしね。虎哉禅師の薬草園では大蒜を生薬として育てているはずだから、そこから分けてもらおうかな。他に旬の野菜ってなんだろう。
「茄子、芋茎や大蒜の芽以外に何か旬の野菜ってありますかね」
「枝豆、空豆、紫蘇、大葉、茗荷、韮、つる菜。昨日の夕餉で出した筍なんかもあるね。そんなところかねぇ。」
むう。スパニッシュオムレツ的なものを作ろうとしたけど、なかなか、どうして。
平成令和にワイン飲みながら食べたスパニッシュオムレツの雰囲気だと、ジャガイモ、玉ねぎ、ほうれん草、ベーコンなんかが入ってた厚焼オムレツって感じだったからなぁ。ジャガイモも、玉ねぎもほうれん草も見たこと無いからなあ。まだ伝来してないのかなぁ…。
よし、ジャガイモの代わりに豆類、玉ねぎの代わりに大蒜の芽、ほうれん草の代わりにつる菜を採用。って、やっぱり全く別物になる予感。
「焼き物被りになりますが、二の膳は鳥の焼き物でいくしかないと思います。それと野菜の具をたくさん入れた厚焼の卵焼きを。後は昨日の筍の炊いたやつを流用するのでいいんじゃないですかね。全部新しく作るのは大変ですし」
「あいよ。鳥の焼き物は、城下で仕入れてどうにかするよ。それと筍はニラ味噌でも塗って焼いてみるかねぇ。大蒜油が大丈夫なら、ニラ味噌は、大丈夫だろうし。
焼き物ばかりになるけど、仕方ないね。とりあえず、大蒜油は今から作れるからね。タコやアサリの代わりに今、手元にあるカワエビでも入れて試作だね。具材をたくさん入れた厚焼卵も一度作るかね。
それと、中間の誰かを走らせて三郎の奴にタコやアサリ、ハマグリなんかを持ってくるよう伝えてもらわないとね。いやいや、うちの殿様にも坊丸様にも困ったもんだよ」
と言いながら、新作料理の試作が楽しくてしょうがない雰囲気がダダ漏れですよ、お滝さん。
「あ、そうだ。明日、自分は登城の日なんで、饗応膳の時は居ませんので、そこんとこ、一つ、宜しくお願いします!」
「なんだって!そりゃあ、今から試作すぐにかからなきゃいけないじゃないか!そういうことは、早く言っとくれよ!」
いやいや、そこは、ね。自分も困るんってるんですよ、お滝さん。試作だけして、本番にいないのはかなり不安ですし。なのに無理やり頼まれたんですってば、親父殿に。
まぁ、それはさておき、試作しちゃいましょう!
ジャガイモも玉ねぎも軽く調べた限りでは永禄年間には日本に伝来しておりません。ジャガイモはもう少し後の慶長年間、玉ねぎは江戸時代中期から末期に少しばかりは国内に伝来したようなんですが、観賞用&見向きもされず。本格的な普及は明治維新後からになります。美味しいのね、ねぇ。
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