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441話 バテレンが来た! 参の段

年度末・年度始めの多忙と疲労、それに花粉症シーズンが加わって作品の事を棚上げにし続ける日々でした。

やれやれ、だぜ。


そんなわけで、ボチボチ再開していきます。

ども、坊丸です。


現在、岐阜城下は柴田家の御屋敷にて、柴田勝定さんと一緒に日本人修道士の方と面会しております。

この日本人修道士さんは、洗礼名ロレンソさんで、本名は了斎さんというのだそうです。

で、普段はロレンソと呼んでほしいとのこと。


このロレンソ了斎さん、目元から頬に痘痕(あばた)が多く、目も少し落ち窪んでおります。何らかの疾患で視力が悪いのかも知れません。もしかしたら、失明しているのか、それに近い状態なのではないでしょうか。

しげしげと、ロレンソさんを観察していると、勝定さんから膝を小突かれました。あ、そんなに見るのは不躾過ぎるということですかね。すいませんした。


「それがしのような者に、丁寧な挨拶をいただき、おそれ入りまする」


「して、昨日、当屋敷を訪れたのも、そこもとでござろうか?」


あ、勝定さん、こちらにこの会話や交渉を丸投げするつもりではないんですね。よかったぁ。じゃ、とりあえず、大人しく話流れを見とこうっと。


「はっ。昨日、柴田勝家様にお目通りしたく、お願いに参りました」


「先程、申した通り、当家の主、柴田勝家は現在、岐阜にはおらんのだ。すまんが、目通りは叶わんということになる」


「では、この書状を柴田様にお渡し願いたく存じまする。我がイエズス会の畿内地区布教責任者たるルイス・フロイス司祭が和田惟政様よりいただいた柴田様宛の書状にございまする。どうか、お(あらた)めください」


そう言うと、ロレンソさんは、懐から大事そうに書状を取り出し、こちらに向けて差出しました。

って、今は親父殿付きの小姓衆、毛受兄弟が屋敷に居ないので、この取次は自分がやるやつっすね。

では失礼してっと。書状を受け取って、勝定さんへお渡しして、着座ですな。


「坊丸殿、すまんな」


「いえ、奇妙丸のもとで小姓仕事は慣れておりますので」


「主、柴田勝家に代わって、書状を(あらた)めさせていただく」


そう言うと、書状を開けて目を通して行く勝定さん。何が書いてあるのかなぁ。って、読み終わった書状をそのままこっちに渡して来たよ。つまり、坊丸も目を通せってことですかね。

では、失礼して。


え〜、なになに。

時候の挨拶からの、二条御所造営の際には色々と相談に乗ってくれてありがたかった、と。

で、今回、京都で日乗らがキリスト教の禁教、伴天連追放を求めて活動し、それを支持する綸旨を得たために、伴天連達が苦境に陥っている、と。


って、日乗って誰だ?まぁ、それは置いといて、読み進めよう。


日乗らの動きを受けて、ルイス・フロイス司祭ら数名が信長様に京都での布教許可を求め岐阜に行くので、岐阜にて伴天連達の支援をしてほしい、と。

自分の取次は大津伝十郎殿、佐久間信盛殿が務めることになっているので、両名宛の書状も書いたが、念の為、仲の良い柴田の親父殿にもこの書状を(したた)めた、と。


で、日付と摂津守護 和田弾正。最後の最後に花押。

和田惟政殿の花押は見たこと無いからこれが正しい花押か知らんけど。

和田殿って、摂津守護以外に朝廷の官職も持ってるんだぁ。流石に和田殿クラスだと自称の官位じゃないだろうしねぇ。


しっかし、こっちの時間線に慣れたとはいえ、行書からの崩した仮名文字を読み取るのはなかなかに骨が折れます。明朝体フォントの楷書の漢字と平仮名が懐かしい今日この頃。

って、そんな事は置いておいて、書状を勝定さんに戻さないと。


「で、坊丸。どう思う」


って、ここで丸投げモードが来やがったか!仕方ないなぁ。


「はっ。親父殿だけで無く、大津殿、佐久間殿にも取次の依頼はされているご様子。何故、当家を頼られたのか、気になりましたが」


と、当然の疑問を投げかけてみるわけです。


「ということだ。大津殿、佐久間殿にも取次を頼んであるならば、まずはそちらからが筋になるのではないか?当家は和田殿の取次ではないのでな。あくまで和田殿と権六殿の友誼によるもの。何かあった時に頼むという感じの依頼であるからな」


「はっ。大津様、佐久間様の御屋敷にご挨拶申し上げ、取次のお願いをいたしたのですが、お二方とも岐阜におられぬとのこと。それで、柴田様に藁にも縋る思いでお願いに参った次第にございます」


わざと憐れみを誘うように大きく(かぶり)を振りやや芝居がかった口調で困惑していることを伝えてくるロレンソさん。


「事情は、あいわかった。なれど、当家の主の権六殿も家宰殿の吉田殿も今は近江におられる。さすがに、正式な取次でもない上に家臣である我らの判断で勝手に動くわけにはいかぬ。申し訳ないが、信長様への取次は致しかねる。権六殿が戻られたら、ルイ…、何とかという司祭殿が岐阜に参っておられること、先程の事情を話し、書状をお渡ししておく。我らにできるのはここまでじゃ」


お、だいたい言いたいことは同じですね、勝定さん。

こちらもロレンソさんに対抗して、腕を組んでややオーバーに大きく頷いて見せました。


「当地に来ているのは、ルイス・フロイス司祭にございます。どうか、知り置いていただきたく。

しかし、柴田様もご不在とは…。いたし方ございませぬ。それでよろしいので、柴田様が戻られたら、よろしく此度のことお伝え願いまする」


ま、そう言うしか無いよねぇ。柴田の親父殿は現在、岐阜に居ないんだし。

あ、そうだ、一応、滞在先聞いとこう。まぁ、和田惟政殿の岐阜の屋敷だとは思うんですがね。どっか移動とかされると連絡取れないし。


「ロレンソ殿。ルイス・フロイス司祭とそなたは和田殿の屋敷におられるので、宜しいのかな?」


「はっ。坊丸殿の申される通り、我らは和田様に便宜をはかっていただき、和田様の岐阜屋敷に滞在しておりまする。柴田様がお戻りになられたら、和田様の屋敷までご一報いただきたく、宜しくお願い致しまする」


「では、そういうことにいたす」


勝定さんが終いに入ったので、自分もウンウンと大きく頷いておきます。


「此度は、話だけでも聞いていただきありがとうございました。では、失礼致しまする」


立ち上がったロレンソさんは杖で足元を確認しながら柴田の屋敷を後にするのでした。


ふぅ、とりあえず、ロレンソさんとの面会はどうにか終わったぞ!

しっかし、取次の大津長昌殿と佐久間信盛殿の両名ともに岐阜に居ない上に、念の為にお願いの書状を書いた柴田の親父殿も岐阜に不在って、ルイス・フロイス一行はどんだけついてないんだか。

さてさて、後は、親父殿にどう連絡するか、だな。

ロレンソ了斎さんは元琵琶法師らしいので、それらしい描写をチョイチョイ挟んでおきました。


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