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438話 甲賀の周りのこと、聞き取りです

ども、坊丸です。


桃花さんの表情の変化に色々戸惑っている坊丸です。

なんか変なこと言ったかなあ?


「甲賀のことを聞きたい、と。たとえ坊丸様でも、以前に話した以上のことはお伝えできません。甲賀衆は忍んで働くことこそ、命。こればかりはご勘弁を」


裾を払って着座した途端に、めちゃくちゃ、真顔でそう答えられたわけですが、やっぱり話が噛み合ってない感じです。

うん、自分の言い方が悪かった。ゴメンナサイ。


「あ、いや。甲賀衆のことを聞きたいのではなくて、ですね。甲賀の土地とその周りの地理について聞きたいのですよ」


一瞬、ポカンとした桃花さん。

いつもの忍びらしい場に合った表情を取り繕う感じではなく、素が出てますよ。まぁ、そんな顔も可愛いけど。


「甲賀とその周辺の地理を聞きたかったのですか?」


「そうです!そうです!忍びとしての甲賀衆についてではなく!甲賀の話聞くのに、皆の前だと桃花さんが甲賀の忍びだとばれてしまうかもしれない。そう思ったので、二人っきりで、と言っただけです」


「委細、合点がいきました。余計なことに気を回しすぎました。すみませぬ」


そう言うと、頭を下げる桃花さん。二人っきりというところと甲賀の話というところで誤解があったことがよくわかりました。やれやれ、だぜ。


「で、甲賀周辺の地理とは、どういった事でございましょうや?」


「甲賀衆ならば、既に聞き及んでおるやもしれませぬが、この度、柴田の親父殿や家老格数人が南近江に配されることとなりました。親父殿は近江は蒲生郡に配されるとのこと。

で、近江蒲生郡付近から北伊勢に抜ける様な道が無いかと調べておりまして。甲賀衆ならば甲賀近辺から北伊勢への街道、抜け道その他諸々を知っているのでは、と思った次第です。なので、そんな感じの街道や抜け道を知りませんかね?」


「南近江から北伊勢、ですね。と、なると鈴鹿の山々を抜ける峠道となりましょう。八風峠を通る八風街道と根の平峠を通る千種街道が名の知られた峠越えの道でざいます。この二つは商人達が通るのでそれなりに手入れはされているはず。馬に荷を載せて運ぶものもおりますから、軍馬等も通れるかと。それより北には石榑峠、それよりも南には安楽峠と鈴鹿峠がございます。鈴鹿峠は一番平坦で東海道の主道。安楽峠はその副道とといったところです」


「ご存知かと思いますが、鯰江城には六角義治が、甲賀の山中には六角義賢が立てこもっております。なので、この二つを避けるような道はありませんか?」


「と、なると、甲賀近辺に抜ける鈴鹿と安楽の峠は難しいかと。八風街道も鯰江の近くを抜けますので…。その甲賀も鯰江も避けるとなるならば、千種街道が一番無難かと。それと…、あまり商人たちが通らない道で、他の道より険しいのですが、千種街道の少し南に湯の山越えという道がございます。蒲生郡は日野から伊勢の鹿の湯、湯の山の温泉の側に抜ける道になります」


「ふぅむ。千種街道か湯の山越えがよさそうですね。後で、親父殿に伝えておきます」


「坊丸様。くれぐれも私から聞いたことは内密に」


「お桂殿に聞いたことにしておきますよ。実際に軽く聞いてみますし」


お桂殿から裏が取れれば良し。取れなくても一度聞いたという事が大切だし。そこからの流れで滝川一益殿に協力依頼の一報を入れておいてもらう形になれば、ね。


「桂様が答えてくれるでしょうか?素直にお答えにはならないやも…」


「詳しく教えてくれなくても、一度聞いたという形が大切なんですよ。こういうのは、ね」


お桂殿に何処から確認がはいった時に、坊丸から質問されたってだけ答えてくれればいいわけですよ。詳しくは教えてないと言っても、確認した人間は坊丸が知っているって事実から勝手にお桂殿がそれなりに教えたと思い込んでくれるだろうし。クックック。


「坊丸様、笑顔が黒いです。美しい顔が台無しでございますよ」


はっ!いけない、いけない。余計なことをお桂殿に押し付けられるかもおと思ったら、少し暗黒面が漏れ出したようです。


「鹿の湯、別名湯の山の温泉は、甲賀衆は怪我をした時などに使います。伊勢からの湯治客は時々いますが、さすがに近江から鈴鹿の山々を越えて湯治に行くのは甲賀衆の御老体くらいなものですね」


湯治!温泉!素晴らしいじゃないですかね!

千種街道の整備だけでなく、是非そちらもそれなりの道になるように整備してもらわねば!

そして、親父殿の領地を見学した後、鈴鹿山脈を山越えしてからの、疲れた体を湯治場で数日ゆったり!ビバ!スパ!ビバ!温泉!ビバ!湯治!


そう考えて居ると、桃花さんがスッと体を寄せてきました。

いや、さっき言ったよね!そう言う意味で二人っきりになりたいわけじゃないって。


「坊丸様。近くで聞き耳を立てている者がおります」


あ、忍びモードで小声で伝えてくる桃花さん。うん、でも、近い近い。いや、ここはキリッとせねば


「何?何奴か!」


「近づいた時の足音、気配の感じから、十中八九、お妙かと。いかが致しますか?」


あ、お妙さんですか。なら心配無いんじゃない。


「お妙さんなら、問題ないでしょう」


その昔、『信長公記』を脳内に書き込みした時にぶっ倒れた後しばらくして、婆上様からお妙さんは時々、生き別れの母上に自分の近況を書き送っていると聞いたことあるし。

桃花さんと二人っきりになったので、母上へのお手紙のネタとして聞き耳を立てているに違いないからね。


「で、いかが致しますか?」


ん?普通に襖を開けるのでなくて?何か仕掛けると!よし、その案、乗った。


「では、襖を明けたところの死角に行きます。桃花さんは、無音で移動して、同じく死角になるような位置からいきなり襖を開けてください。すると、二人がいたはずなのに、誰もいない仏間の出来上がりです」


イッツァ・イリュージョン!ってね。

その話を聞いた桃花さんが一瞬驚いたようなあきれたような顔になりました。

え?『いかが致します?』って聞いたのはそういうのを仕掛けるのではなく?もしかして、「殺って殺るぜ」的な意味だったりしたの?


「そのようにしたいのであれば、私はそれに従います」


そう言うと、死角の位置を教えてくれる桃花さん。

そして、位置につくと、気配を完全に消して襖に近づき、死角から一気に襖をオープン!


襖に耳をつけるくらいで聞き耳を立てていたお妙さんが仏間に倒れ込みそうになった上に、誰もいないように見える室内にびっくりしておりました。

うむ、大成功!

千種越えを中心に南近江から伊勢に抜ける街道をちまちま調べておりました。

普通に見ると伊勢亀山から近江甲賀に抜ける東海道と関ヶ原を抜ける道が一番高低差が少ないと思います。

千種越えは現在は使われていない街道で、近江側からだと、日野、布施、甲津畑と通って雨乞山の北、杉峠から根の平峠を通って朝明川の側を通って菰野町の千種地区に至る街道のようです。

湯の山越えは現在の鈴鹿スカイラインの峠越え、八風街道は国道421号のやや南を抜ける峠道のようです。

このあたりの山道に詳しい方がいましたら、詳細を教えていただけるとありがたいです。


坊丸はちょっと女心がわからない子なので、坊丸と桃花が二人っきりになったので、男女の仲になるかも!その始まりかも!と心配している&興味ありありなのをわかっておりません。

桃花さんのいかが致します?は、どういう風に説明します?と言う意味で言ってただけなんですが…。ね。


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宜しくお願いします。



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