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413話 長良川の河原にて 弐ノ段

ども、坊丸です。

長良川の河原で鉄砲の修練という名の明智さんの鉄砲の腕前確認に参加させられている坊丸です。

明智さんに早合を見せて、装填の手順をよりスムーズにできるようになっている品があることをわざわざ見せるようなことをしている信長伯父さん。

ってここまで、自分達が呼ばれた意味がないなぁと思っていたら、信長伯父さんがニヤニヤ笑っているのを見かけました。なんか、悪い予感が…。


「佐脇、先ほど走った者に声をかけ、明智殿が撃ち抜いた腹巻藁人形を持ってこさせよ」


「はっ」


先ほどの小姓がもう一人を伴って、腹巻を装備した巻き藁藁人形を回収してきました。

うん、さすがは明智さん。滑腔砲でも二発中二発当ててるね。一発は草摺の右端に。もう一発は胴部の左寄りに。


滑腔砲ならかなり良い方なんじゃないの。マグナス効果である程度曲がるのは仕方ないもんね。


「明智殿。二発とも命中のこと、さすがである。見事なものを見せていただいた」


「はっ。お褒めいただき、ありがたき幸せ」


「うむ。続いては、当家の鉄砲衆の試射を観ていただこう。坊丸。加藤の準備は良いか?」


「はっ。準備できております」


「で、あるか。二つ持ってきているな。なら、竜騎一番隊の焼印のある方で試射をせよ」


「御意。鉄砲騎馬隊用の火縄銃にて試射致します。加藤さん、お願いします」


「はっ」


「そうそう、次の腹巻には弓の時と同じように霞的の文様を描かせておる。真ん中を打ち抜け」


って、おい!なんで明智さんの時はそんな的無かったのに、うちの加藤さんの時だけ、的をつけるんだよ!信長伯父さん!


「承りましてございまする」


って、加藤さんも素直に承ってるし!大丈夫なの?

って、織田筒なら半町位の距離なら命中率高そうだけど!

顔色を変えずに射撃位置につく加藤さん。大丈夫なの?ホント?

スムーズに射撃態勢に入り、あまり間を置かずに引き金を引く加藤さん。頼む、当たってくれ〜!


「パーン」

竜吠からなる発射音。そして駆けていく小姓衆。


「あたりでございま―す」


「で、あるか。加藤、もう一発、放て」


「御意」


加藤さんが自分の下に戻って、椎の実弾丸用の早合で素早く装填。ウンウン、椎の実弾丸の早合も装填業務に問題無し。スムーズで美しい。

装填し、火皿に口薬を入れ始める前に、加藤さんが目を上げて、わざわざ視線を送ってきました。ウンウンと頷くと、すごく良い笑顔を送ってきましたよ。一発目、いいところに当たったのかな?


「では、もう一度参ります」


そして、発射音と煙。煙が晴れた向こうに口元に笑みを浮かべた加藤さん。


「あたりにございまする〜」


「佐脇、先ほどと同じように持って参れ」


さっきと同じ流れで運ばれて来る腹巻装備の巻き藁藁人形さん。ホントだ。腹巻に霞的と同じマークが書いてあるよ。ん?ど真ん中に当たっているけど、一つしか孔が無いんですけど?どういうこと?一発は外したのか?

でも、二発とも加藤さんはナイス笑顔だったしなぁ。


「ん?当たった孔が一つしかないが、外したのか、加藤?そして、見間違えたのか?小姓どもは」


すこぉし、冷たい感じの信長伯父の声。


「いえ、二発とも当たってございまする。的の真ん中、よく見て頂ければ分かりまするが、孔が横に長ごうござりまする。それでも、ご不信とあらば、巻き藁の藁人形の背中側をご覧いただきたく」


「で、あるか。では、そのように致せ」


まだ、半信半疑な声色の信長伯父さんは、小姓衆に巻き藁藁人形をひっくり返すことを指示。佐脇さんやその配下の小姓衆が二人がかりでひっくり返すします。


まぁ、なんということでしょう!

腹巻の胴側にはたった一つの孔しか空いていないのに、背中側にはなんと!二つの孔が空いているではありませんか!


おおっと、気がついたら、ビックリするあまり、建造物のビフォーとアフターを比べる某番組のナレーションみたいになっちまった!


って、ことは、入射側にはほぼ同じところに弾着させてたってことですね。

なにこれ?加藤さん、いつの間にそんな凄腕におなり遊ばしたの?

だって、やってること、ほとんど「ゴルゴダの丘の13階段」の人か『名人伝』の紀昌だよ!たぶん、コンバットマグナム大好きで次元な人もできると思うけど。


そりゃあ、射撃の後にいい笑顔出るわ。って!スナイパー用のスコープとか無いのに、なんとなく当たった位置分かってたってことですか!スゲェな、加藤さん!


「ふむ。確かに二発とも当たっているな。疑ってすまんかった」


「いえ、信長様のお疑いはごもっとものことにございますれば」


「で、直臣にならんか?」


「わが主君、津田坊丸様は信長様と奇妙丸様に未来永劫の忠義を誓っているかと記憶してございます。で、あれば、我が鉄砲の技は坊丸様を通して信長様の下から離れることはございませぬ」


「で、あるか。また、振られたな。フッ」


なにこのやりとり、格好良すぎるんですけどぉ〜。そして、加藤さんの自分への篤い忠義に涙が出そうです。

それと、未来永劫の忠義忠誠ってワードは恥ずいから、もうやめたげて。坊丸くん、そんなにメンタル強くないから。だから、坊丸くんの赤っ恥な過去をこんなところで掘り返さなくても良いからね、加藤さん!


「坊丸。後で、金子と火薬を褒美に取らせる。お主から加藤にくれてやれ」


「御意」


あ、加藤さんに褒美出るんすね、ありがとうございます。そして、今回消費した火薬の補充もいただけると。あわせてありがとうございます。


今回は本来、明智さんの鉄砲の腕前を見る場だったのになぁ。なんか加藤さんの方が凄い技を見せちゃったけど、大丈夫かな?

って、思いながらチラッと明智さんの方を見ると顔を真っ赤にして俯いておりますよ。イヤイヤ、これ、大丈夫じゃないヤツや!ホント、明智さんの面目マルっとぶっ潰した感じになったがなぁ!これはヤバいくらいにダメなヤツっぽいぞ!

さてさて、どうする、どうするよ、オレ!

加藤さんの所持する鉄砲騎馬隊専用ライフリング火縄銃「竜吠」の試作初号機は、実は加藤さんの手によりさらに改良が進んでおります。ライフリングが6条だったものが、入口近くだけとはいえ、なんと24条に。あえて、本編では記載しておりません。だって、書籍化されたときの「加藤清忠視点でのss」にするつもりだから。


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