408話 信包と三七郎、出立
ども、坊丸です。
永禄十一年の二月末、岐阜城城下の本丸御殿の車寄せにて、私、奇妙丸様の小姓衆兼織田家の連枝衆の末席という微妙すぎる立ち位置で、またまたお見送りに参加しております。
誰のって?
織田信包伯父さん、織田勘八丸君改め織田三七郎君、織田忠寛からその昔改名した津田一安殿の御三方。
ええっと、新年の儀の後、信長伯父さんは、北伊勢に攻撃を加えたわけです。その結果、北勢四十八家と言われる北伊勢の国人衆は征伐されるかその前に降伏してきたので、まるっと制圧。
鈴鹿郡と河曲郡を領有する関氏五家は、国府氏、峯氏、鹿伏兎氏はサクッと降伏。神戸家はそこそこ抵抗して和議。養子を入れることで和議がなったそうです。関氏はもう少し抵抗したようですがどうやら降伏したご様子。
奄芸郡、安濃郡を領有する長野家は、内部で路線対立が起こって、結果、織田家に降伏する方針の一派が勝利。長野家の当主を隠居させて、織田家から新しい当主を招き入れるという結果に。
うん、長野家の内部抗争はなんとなく滝川一益殿の影がちらつく気がしますが、気にしない。気にしないったら気にしない。
そんなわけで、神戸家への養子と長野家の当主を織田家から出す必要がでてきたそうです。大変だね。
信長伯父さんの中でどんな基準で人選されたかはよくわかりませんが、神戸家には奇妙丸様の弟、三男の勘八丸君がチョイスされたそうです。で、長野家には織田信包叔父さんが選ばれた、と。
これはあれですね。いわゆる「白羽の矢が立った」と言うやつですね~。まぁ、白羽の矢を立てたのは神様でも無く、織田家当主としての信長伯父さんなわけですが。
え?津田一安殿は神戸家とも長野家とも関係ないだろうって?そうですよね。
自分も不思議でしたが、信長伯父さんの小姓衆から聞いた話では津田一安殿は安濃津城の城主に選ばれたからだそうです。
楽田城を失ってから外交官みたいな仕事を丁寧にこなして来た一安殿。軍事の才は微妙な感じですが、今回のような交渉事絡み謀略絡みなら前線の城主として活躍できるという信長伯父さんのご判断でしょうか?知らんけど。
まぁ、今までの戦歴を鑑みるに、滝川一益殿は単独でも軍事行動を卒なくこなせるし。信包叔父さんも、美濃攻めで部隊を率いるのには十分な才を示したようだし。津田一安殿の軍才がちょい微妙でもどうにかなるってことですかね。知らんけど。
長野家の元の重臣や家老格な人達は織田家から当主を出して欲しいわけだから、それなりに信包叔父さんの補佐もしてくれるだろうけど、念の為、安濃郡の重要拠点には織田の一門の津田一安殿を入れるわけですね。
対北畠戦線を信包叔父さんと二枚看板で支えなさいってことでしょうか。知らんけど。
信包叔父さんの後ろには、馬廻り衆の若手とたぶんちょい縁が遠目の連枝衆が数人付き従っております。
当然、津田一安殿は楽田城城主だった頃からの配下の面々が。津田一安殿の後ろの方々が晴れやかな笑顔なのが印象的です。なんと言っても、城主復帰ですからね、楽田城城主の任から解かれてから苦労した家臣衆も本当に嬉しいんだろうと思いますよ、ウンウン。
で、その二人と並んでいるのが、三男の勘八丸改め、織田三七郎君。
その後ろには、大人の方数名とちょっと年長の方一名。何故か、旅姿の女性の方もお二人いらっしゃいます。
後で信長伯父さんの小姓衆、長谷川さんや佐脇さんに聞いたところ三七郎君のすぐ後ろにいたのは岡本良勝殿。母方の叔父さんになるそうです。勘八丸君は最初はこの岡本殿のお屋敷で養育されたんだって。へぇ~。
その他、小島兵部殿、坂仙斎殿。このお二方も三七郎君の母方の縁者だそうです。三七郎君よりすこし年上の人は幸田殿。乳兄弟で傅役を兼ねる方なんだそうです。そこまで年齢離れてなかったけどねぇ。
三宅権右衛門殿、坂口縫殿助殿、山口三右衛門殿、末松吉右衛門殿らが付家老として同行するんだそうです。正直、付家老の方々は、自分的には名前と顔が一致した方がいないんですが…。
旅姿の女性、お二人はたぶん、三七郎君のご母堂、すなわち信長伯父さんの側室と三七郎君の乳母の方なんでしょうね。三七郎君にちょっとだけ近くにいる上品な小袖の方が側室の方かな。乳母の方は後で考えれば、幸田殿の横に立っていたし。
そうそう、後から考えれば、なんですけどね。
信長伯父さんは、三七郎君よりも後ろの女性の方をよく見ていた気がします。出立の現場にいる時は、三七郎君は意外と愛されているなあ…と思っていたんですが、実は、自分の下から伊勢に向けて旅立つかつて愛した、いや、
今も愛おしく思っている側室の方を見ていたんだと思います。だって、信長伯父さんの眼差しは温かで穏やかで愛おしいものを見つめる眼差しだったから。
そして、三七郎君、出立前のご挨拶では、「父上の役に立つよう神戸家にて励みまする」と言ってました。
その時、信長伯父さんと奇妙丸様には素直にかつ丁寧に頭を下げたのに、その隣にいた茶筅丸殿には目も合わせず、軽く頭を下げただけ。明らかに意識しておりますね。
あ、自分に向けてですか?奇妙丸様に頭を下げた後、一瞬目が合ったけど、すぐに目線がよそに行きました!
たぶんだけど、自分、織田三七郎君には眼中に無いヤツ扱いっすね。まぁ、奇妙丸様の添え物みたいな小姓衆だからねぇ〜。何度か連枝衆の扱いをしてもらってるけど、奇妙丸様の小姓衆だから、下っ端のなんちゃって連枝衆扱いしてもらっているんだと思われてる可能性大ですよ。つまりは、現時点では全く意識されてないご様子。将来、何も対策しないとこの人に殺されちゃうんですけどね、自分。ハッハッハ。
織田勘八丸 改メ 織田三七郎くん。もうすぐ、神戸三七郎になりますが。
元服して「信孝」になるのはどうやら奇妙丸くんが信忠になったあとのようなので、まだ諱はありません。
そして、奇妙丸くんは仕方ないけど、茶筅丸くんには負けたくないという少年の心。なので、坊丸くんのことは目に入っておりません。今はそういう時期なんだよ、というのを描写したくて作ったお話。
そして、坊丸くんが目に見える功績をあげ始めると…。きっと関係性に変化が。
少しでも「面白い!」「続きが気になる」と思った方は、下の★でご評価いただけると、作品継続のモチベーションになります。
宜しくお願いします。




