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401話 坊丸の秋冬

ども、坊丸です。


お市の方様の婚礼調度の二組目の進行管理中の坊丸です。

まぁ、ほとんど蒔絵職人の方に丸投げ状態で、時々差し入れを持って進捗状況を確認しに行くだけなんですけどね。


あ、福島さんは木工部分の制作と品質チェックが完了したらきちんと木下秀吉さんのもとに帰参していただきました。

最後に、感謝のしるしとして焼酎と金子を渡したら、「また何かあったら呼んでくれや!」と言って二合徳利を大切そうに抱えながら帰っていきました。

まぁ、金子の方は織田家勘定方から出ているので痛くもかゆくもないので、多少色をつけておきました。


木下秀吉さんにも柴田の親父殿と連名で「親族衆を貸してくれてありがとうね!信長様にも木下殿の助力があったと報告しておくね!」という内容の感謝状を送っておきました。

柴田の親父殿はすこし嫌な顔をしてましたが、こういう礼儀は大事。感情を殺してビジネスマナーに徹するのも必要なんですって。「非常時には人格を切り離して理に従うことができる」のが軍人として大切な要素だってどっかの漫画で読んだし。


え?後々、木下秀吉殿がどんどん出世して柴田の親父殿と同格の軍団長になるのを知ってるからだろうって?ハッハッハ!そんなこともありますよ、すこしだけ!


まぁ、そんなわけでお市の方様の輿入れの後も、蒔絵で装飾されたバージョンの婚礼遊具をつくるという残されたミッションがあるので、しぶし…淡々と進行管理のお仕事をしております。とはいっても、奇妙丸様の小姓業務の合間にですが。

二組目の婚礼遊具の進行管理のために職人さんたちを訪問したりして領内を行き来するんで、そのついでというか、その帰りとかに瑞龍寺によって虎哉禅師の教えも受けております。


当然、小姓業務の無い朝は、柴田の親父殿と柴田家一党の朝の鍛錬に放り込まれるので、柴田の親父殿の槍の餌食になって空を飛んだり、地を這ったり、リアルにライクアローリングストーンになってます。

その後ろで、刀の素振りだけしている弟たちよ!お前たちも早くこの地獄に参加して、自分の担当時間を短くしてくれ!なんて思うこともあったり、なかったり。

でも、加藤さんところの夜叉若君だけは何故か、キラキラした目でこっちを見ています。柴田の親父殿の武芸は凄いもんね。憧れるよね。でもね、自分で相手してみ、マジで辛いから。

うぅ、なんか、自分の日常を文字に起こして確認してみると、なんていう、激務。泣くぞ!


とはいえ、全く暇がないわけでは無いので、そんなときは、台所のお滝さんのところに逃げ込んで、料理のお手伝い&お駄賃として何かしらの食べ物をいだいております。

主に、たんぱく質を!動物性、植物性に限らずたんぱく質を!だって、戦国時代のご飯は、基本、米重視。たくさん米を食べるのが、正義!って感じですから。


それはさておき、最近は「灰汁」を使ってとある料理に挑戦しております。そう、稲葉山城の戦いの後、灰まみれで帰ってきた柴田家一党、それを綺麗にしたときに女性陣が「泥が混じってない『灰汁』ならつかいようもあるのに…」といった内容の愚痴を言ってるのを聞いて思い出しちゃったんです。


たしか、「沖縄そば」って、ラーメンにつかう「カンスイ」の代わりに「木灰汁」を使っていたはずだと!

うどんを作る時に「木灰汁」を使えば、「ラーメン」は無理でも「沖縄そば」に近いコシと食感は生み出せるのではないか!と。

たしか、「カンスイ」も「木灰汁」も炭酸ナトリウムや炭酸カルシウム、炭酸カリウムの混合物でアルカリ水溶液だったはず。だいたい同じ、はずです。そして、ガジュマルやデイゴの灰で無くても、有効成分が同じなら、きっと同じ!きっと、だけども。たぶん、だけども。


そんなわけで、作っております、「沖縄そば風の麺類」。

いやぁ、大変でした。どんな植物の灰を用いれば「木灰汁」や「カンスイ」に近い成分になるのかわからないので、最初は竈門の灰を頂いて「灰汁」を作成。その後は石田村に訪問していろんな種類の木材や枯れ葉をいただきました。結局、どんな種類でもいいからアルカリ性が強い方が良いらしいという単純な結論に…。


ちなみにこの時代のうどん粉ですが、現代の感覚だと中力粉かわずかに薄力粉よりの印象。そして、製粉技術がまだまだ今ひとつなので、それなりに「ふすま」が混じっております。そして、そのせいなのか、元々の小麦の性質なのか少し茶色がかった色。現代の真っ白な小麦とはちょっと違う感じ。


本来は、小麦に含まれるフラボノイドに作用して黄色が発色するわけですが、最初から真っ白な小麦粉だと黄色の変化が分かり易いわけです。が、手元にあるうどん粉は、やや茶色。灰汁を加えても、微かに黄色っぽくなったかも?という程度。

まぁ、茹でてみたら、うどんとは違うコシが出たので、グルテンに対する収斂作用は出たご様子。

じゃあ、これはラーメンの麺か?と問われれば、違うと答えますが。『沖縄そばに近い麺類』と言うのが正解。どうにもあと一歩違う気がするんですが、ここが限界。



そしてスープは鶏ガラがメインで!

ここでも活きる坊丸君の「時告げ鳥を食べてもいいよ」のご免状!そして、魚屋の三郎さんの伝手で手に入れる昆布や煮干しなど!

醤油ラーメンを作りたいけど残念、まだ醤油は手に入らないので、味噌ベースで!垂れ味噌も使うけど、量産できないので、隠し味程度に。

鶏ガラと魚介のダブルスープで味噌ラーメン風の何かを作りました!


長良川水系の河湊を斎藤道三、斎藤義龍が整備、そして信長伯父さんが表御殿や加納宿の楽市と同じくらいの勢いで再開発してくれたおかげで、津島湊から岐阜城下まで水運業が活発に。

おかげで津島に本拠地を置く名門野々村氏の一門衆なのに、魚屋であることに強いこだわりをもつ三郎さんが新鮮な魚介や昆布や煮干し、鰹節などの海産物をヒョイヒョイ持ってきてくれます。むしろ、小牧山城下に屋敷があった時よりも頻回に顔を出しているのではあるまいか?


あ、そうそう、お千ちゃんと三郎さんの間に男の子が誕生したとのこと。名を久丸と書いてキューマルと呼ぶらしいです。ご子息、跡取りのお誕生、おめでとうございます。

ちなみに44口径120ミリ滑腔砲とかV10ディーゼルエンジンとか積んでそうな名前だなぁ…と思ったり、思わなかったりしました。

母子共に落ち着いたら、顔を見せてくれるそうです。楽しみです。まぁ、お滝さんや、お妙さんの方が盛り上がっておりますが。


それはさておき、味噌ラーメン。

試作と試行錯誤を繰り返すこと約二月。もう少しで、大晦日ですよ。

小姓役とか婚礼調度の進行管理のお仕事とか無かった頃は、七日から十日で新作料理を仕上げていたのに、今やこの有様。やれやれだぜ。

久丸は90だと思ってしまう、坊丸くん。

90式戦車と幼児の名前を結びつけるのは、如何なものか。

でも、それが坊丸。


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