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377話 五徳姫様の輿入れ 婚礼調度 六の段

ども、坊丸です。


ご依頼の品を現在搬入中の坊丸です。

と、言っても柴田の屋敷から御城の御殿まで登るだけなんですが。

しかも実際の物品は中間の方数名が挟箱に入れて運んでもらっておりますし。源平挟み碁の碁盤とかめっちゃ重いと思うんですけど…。

さすが、柴田家の中間衆だ!小牧山城の坂を登るのになんにも苦にしてない様子だぜ!


そんな感じで運んでもらい、表御殿で取次をご依頼。速やかに奥御殿に通される自分と文荷斎さん。

ほとんどは女中、腰元衆が運んでくれますが、さすがに碁盤だけは小姓の長谷川橋介さんが運んでくれました。奥御殿まで出入りできるなんて信頼されているんだね、長谷川さん。

って思ったらくノ一腰元の梅香さんが長谷川さんや自分たちの後ろについております。あ、監視の目は緩んでない様子ですね。


お部屋に案内されると、五徳姫様と生駒吉乃殿、帰蝶様、お市の方様が座ってました。

えぇっと、五徳姫様と吉乃殿、帰蝶様はわかる。当事者と生母、義母で信長伯父さんの正室だからね。お市の方様はなんでいるの?

まぁ、考えても仕方がないか。


「津田坊丸、婚礼調度の品を献上に罷り越しました。見知り置きとは存じますが、ともに参りましたのは、末森城城番にて此度の品を揃えるにご助力いただいた中村文荷斎宗教殿にございます。

 此度は五徳様のお輿入れの儀、まことにおめでとうございまする」


「五徳様、お輿入れの儀お喜び申し上げまする。坊丸様よりご紹介いただきました中村文荷斎にござりまする。それがしより、今回の献上の品をご説明申し上げまする。

右より、坊丸様ご考案の絵柄の歌留多、投扇興、源平挟み碁となりまする。歌留多、投扇興につきましては、婚礼調度ということで、絵柄をよりめでたき物に変更いたしました。源平挟み碁につきましては、坊丸様にご説明をお願い致します」


えぇっと、文荷斎さん?そのまま、全部説明してくれていいんですよ?

あ、みんなの視線が既に自分に集まってますね。はい、諦めます。


「では、続けてそれがしが。源平挟み碁は、変形の囲碁のようなものにございます。五徳様のご希望の新しき遊戯にございます。もし、お許しいただけますれば、一度皆様にお手にとっていただき、その後、それがしとそこな文荷斎とでどのように遊ぶか試技をさせていただきたく存じます」


さすがにまだ献上品を触ってないのに、いきなり試技はできないからね。なんと言っても婚礼調度だし。本当は新品で三河まで持っていってほしいのですがね。


「母上方、よろしゅうございますか?」


「坊丸が献上したのは五徳に対してです。五徳が良ければ、そうなさい。ね、吉乃殿」


「そうでございますね、帰蝶さま。それに遊び方を見ておかねば、飾るだけになりましょう。皆で見聞したあと、試技をしていただくのがよろしかと」


帰蝶様と吉乃殿の許可がでたので、腰元さん達が各々の遊具を五徳姫様の元に運びました。あ、碁盤はその重さのために動いておりませんが。


一通り、投扇興、歌留多、挟み碁用の紅白の碁石を手に取る四人の美姫。うん、素晴らしい。人妻で美魔女二人、美女、美少女って構成ですね。


そして、挟み碁盤の側に集まる四人。「桜が綺麗」とか、「龍が勇壮」とか「千鳥が可愛らしい」とか言ってキャッキャッしております。うん、眼福。

四人が元の位置に着座した後、腰元さんに声をかけて、碁石を手元に持ってきてもらいました。


「では、源平挟み碁の遊び方をご説明させていただきます。文荷斎殿、宜しくお願い致します」


そして、文荷斎さんと二人で挟み碁用の碁石をその場の皆さんに見せたり、遊び方の解説を試技をしながら行なって見せます。


説明しながらなんだけど…。角を狙って取りに来る文荷斎さん、。あ、負けたな。くっ、考案者としてこのメンツの前では勝ちたかった…。

そんな動揺を笑顔で隠しつつ、説明を終了。


「と、言う具合にございまする。如何でしょうか?疑義ございませんようでしたら、一度、姫様方で遊んでいただけると宜しいかと存じまする」


そう言うと、ニコニコしながらお市の方様が乗り気です。

いや、貴方でなくて五徳姫様メインでやらなきゃだめだから、ね。


とりあえず、五徳姫様と場所を変わり、少し下がろうとすると、裾を掴まれました。


「坊兄ぃ様、隣りでこの遊戯の遊び方を教えてくださいまし」


裾を捕まれながら、美少女の上目遣いとか破壊力強すぎだろぉ。


「わかりました。では、それがしは隣に控えさせていただきます」


そう答えると、ニパァっと花が咲いたような笑顔。その笑顔は『効果は抜群だ』ってやつだね。


「では、私はこちらに。文荷斎殿、宜しくお願い致します」


お、文荷斎さん、お市の方様の隣でお手伝いの役割をすることになったんだね。役得ですね。


「こちらとこちらに石が打てますよ、五徳様」


「はい。ではこちらに」


パチリ。


「お市の方様、こちらとこちらに石が打てまする。こちらのほうが…」


「ふむ。こちらのほうが多く色を変えることができるのですね。では、私はここに」


パチリ。


数回教えると、お市の方様はすぐに覚えて自分で石を置いていきます。五徳姫様は、時々迷ってこちらをみてきます。うん、少し困った顔の五徳姫様も可愛らしい。


あ、お市の方の勝ちだな。

ていうか、文荷斎さん、教えるときにめちゃくちゃ勝ちにこだわって気合い入りすぎだよ。


しょうがない、最後に自分と五徳姫様で勝負させてもらう形にして、勝ちを譲ろうか。接待プレイでもしますか。

はぁ~、今日は二戦二敗確定だな。

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