369話 永禄十年 坊丸の新年の儀
リアルのお仕事でトラブルが重なったので全く筆が進みませんでした。ヤレヤレ、だぜ。
ども、坊丸です。
今年も加藤清忠さんが夜叉若くんを伴って新年の挨拶に来ました。
大広間は柴田家家中の皆さんの挨拶、からの酒盛りになっていく予定なので、今年も仏間を借りました。
一応、大晦日に柴田の親父殿と婆上様には一言理を入れてあります。ま、もも肉の焼き鳥(塩味)を肴に柴田の親父殿はものすごい勢いで酒を飲んでいたので、覚えているかは不明ですが。
「殿、あけましておめでとうございます。今年も加藤清忠、忠勤に励む所存」
「うむ。共に新年を迎えられて実に目出度い。今年も頼りにしておる。ますます励むように」
流石に昨年一度やったので、それなりに対応できるようになりました。坊丸くんは「傾向と対策」がきちんとできる男なのです。
「子息の夜叉若にございます。数えで六つとなりました。ほれ、ご挨拶せぬか」
「加藤清忠が嫡子、夜叉若でござりまする。よろしくお願いいたしましまする」
お、今年は噛まないね。成長してる感じがするよ、夜叉若くん。背も伸びて来たしね。後で、お年玉として、ことしも金平糖を数粒あげようかな。別枠で保存してある五徳姫様からもらった金平糖も一粒上げよう。まぁ、購入してるのは信長伯父さんなので、大元は同じ品物なんですがね。
ほら、茶器とか日本刀とかも誰から誰の手にわたって、その後誰が誰に献上したとか伝来が大切に書いてあるし。うん、貰い主は大切。
「うむ、夜叉若も励むが良い。ふぅ、堅苦しいのはここまででいいですか、加藤さん」
「まぁ、我らとお妙殿しかおりませぬからな。いいのではないでしょうか。ハッハッハ」
「あ、お妙さん、加藤さんに餅代として少し金子持ってきてください。あと、夜叉若くんに金平糖を少し下賜します。文箱の手前のものと奥のもの両方を持ってきてください」
そう指示を出すと、ナチュラルに着座する弟達。おい、オマイラ、なんで座った。今年も金平糖をせしめるつもりか?
「竹丸、千代丸。いかが致した?」
「いえ、我々も兄上にご挨拶をと思いまして」「まして」
朝一、お妙さんも含めてやったじゃん、新年の挨拶。しかも、柴田家家中のみさなんが来る前に柴田の親父殿に一緒に新年の挨拶したときにお年玉的なものを君たちももらったよね。そして、そのお年玉はお妙さんに回収されたよね、三人とも。
そんな風に思っていると、我々三兄弟からお年玉的な些少の金子を回収した張本人、お妙さんが戻ってきました。
「では、坊丸様。こちらにご指示の物を準備いたしました。それと、加藤殿には柴田家でついた餅も持って参りました。勝家様より昨年のように余り物ではなく柴田家家中の皆さまと同じように渡すよう申しつかっております。どうぞお収めください」
え、親父殿がそんなこと言っていたの。直接の家臣ではないのに、柴田家家臣と同じように遇する柴田の親父殿の男気が新年からだだ漏れじゃあないですか。あとで、お礼を云っとかないと。
「では、改めて。加藤正左衛門清忠。昨年も我をよく支えてくれた。礼をいう。そして、今年も宜しく頼む。正月の餅と些少ながら金子を下げ渡す。今年も励め」
「ハッハ。今年もよろしくお願いしまする」
「竹丸、千代丸。お主らは家臣ではないが、致しかたないので金平糖を下げ渡す。それがしが奇妙丸様から頂いたものだ。良く味わえよ」
四角い盆に敷かれた懐紙の上に数粒金平糖を置いて二人の弟に渡しました。
「兄上ありがとうございまする」「まする」
「さて、夜叉丸。そなたにも特別に金平糖を下げ渡す。昨年よりも背も伸びしっかりした様子。春になったら、柴田の屋敷に来て手習いや武芸の稽古を開始するが良い」
「はい。がんばりまする。よろしくお願いします」
そして、奇妙丸様からもらった金平糖数粒を右の懐紙に、五徳姫様からもらった金平糖一粒を左の懐紙に乗せて渡しました。
「兄上。夜叉若には二種類渡しておりますが、なんぞ違いでもありまするか?」
「夜叉若だけ多い… 」
竹丸、違いに気が付きましたか。そして、千代丸は数しか見てないのね。
「夜叉若にはひと粒だけ多くした。将来、自分の家臣として働く予定であるしな。それに、今年から手習いや武芸を柴田家で習うのを頑張るように、という意味もある。ちなみに、数が多い方は奇妙丸様から頂いたものだ。ひと粒だけの方は五徳姫様から頂いたものになる。まぁ、味はおなじだがな」
「姫様からの品ですと!そのようなものをいただき、恐悦至極にございまする。ほれ、夜叉若。お主ももう一度頭を下げぬか」
「坊丸様、ありがとうございます」
あわてて、加藤さんが夜叉若くんの頭を下げさせます。そして、夜叉若くんは頭を下げたあと、キラキラした目でこっちを見てきました。
いや、味は同じだから。主家の姫様から貰いものって言うとなにか凄そうだけど、奇妙丸様が留守居役を務めたときに、なぜか呼ばれて会ったときにもらっただけだし。それに夜叉若くんに上げた分で、残り一粒しかないし。
「ず、ずるい」「ずるいです」
「竹丸、千代丸。すまんな、残りは一粒だ。流石に五徳姫様からいただいた最後のひと粒はお主等にはやれんからな」
五徳姫様からのいただきものですからね。最後のひと粒は大切に頂く予定ですよ、自分ひとりのときにね。
夜叉若くんは五徳姫様由来の金平糖を母の伊都さんに食べてもらおうとしますが、譲り合った結果自分で食べました。同時に奇妙丸様由来の金平糖を伊都さんもたべて、二人で甘味にホッコリしたそうです。万が一、書籍化したらその様子をサイドストーリー、ショートストーリーで書きたいものですな。
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