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362話 奇妙丸様の留守居役 二日目

ども、坊丸です。


今までは数日に一度でしたが、奇妙丸の留守居役就任に伴い昨日からは自分も毎日登城となります。

労働者に週休2日が確保された現代社会を知っている身としてはこれから連日かぁ…とおもうとなかなか気が重いわけで。

しかも殿居(とのい)と言う名の宿直勤務も数日したら開始されるらしいんですよ。宿直勤務明けは休ませてくれんのかなぁ…。


そんなことを考えながら小牧山城の階段を登りきって、業務開始です。まずは、奇妙丸様にご挨拶。

そして、佐脇殿のところに皆で訪問して挨拶。からの島田秀満殿と信広伯父さんにも挨拶。

で、島田秀満殿と信広伯父さんのと一緒に執務開始。と言っても、島田秀満殿がいつも通りの実務を行い、それを信広伯父さんが奇妙丸様に向けて何をどうするのか、何故そう判断しているのかを解説するような感じで進めております。


柴田の親父殿からきいたところでは、信広伯父さんは小豆坂の戦いの後、安祥城の城主を務めたとのこと。太原雪斎と朝比奈泰能率いる大軍に攻め寄せられて一度は撃退したけど二回目は敗れて生捕りになったそうです。

その前の統治も問題なかったらしく話しておりましたし、一度目の攻撃を退けられたことをかんがえれば、そこそこ能力は高いのだと自分は思いましたが、やや優柔不断で覇気に欠けるところがあるとの親父殿の評価でした。


一時謀反を企んだので干されていたらしいんですが、かつては敵国の最前線で城主を務めるだけの行政能力がある方なわけです。織田家も大きくなってきたし、いつまでも干してないで留守居の後見役くらいから信広伯父さんを徐々に使っていこうって言うのが信長伯父さんの方針でしょうか。


そんな感じで奇妙丸様に色々と教えている信広伯父さんと時々手を止めてこういう書類であると奇妙丸様に見せている島田秀満殿。いいコンビでないでしょうか。うんうん。


で、自分たち小姓衆は何しているかと言うと、信長伯父さんの近習衆の代わりに書類の運搬やら整理等を佐脇殿の指示のもと行っているわけです。

佐脇殿によると、近習衆小姓衆は奉行衆からの書類を信長伯父さんに運んだり読み上げたりする取り次ぎ業務をすることも多いから良く覚えておけとのこと。


あ、この書状を島田殿に持っていくんですね。了解しました。

って、商人の納税徴収関連の書類ね。ほぼ同じ感じのやつを吉田次兵衛さんのもとで処理してるわ、自分。


あれ?合算した数字違うんですけど。一応、島田殿に渡すとき一言言っておくか。


「島田様。清須の商人の税に関する書状でございます。こことここ、計算に誤りがあるように見受けられます。ご確認を」


「う、うむ」


え?なんで、島田殿は驚いた顔してるの?間違い指摘しただけだよ?


「ふむ。たしかに数字が合わんな。ええっと、そなた、奇妙丸様の小姓の…」


「津田坊丸にござりまする。宜しくお願い致しまする」


おすまし織田家の貴公子からのニッコリ笑顔でご挨拶。ドヤッ。


「そうか。歩きながら下読みして計算までしたか。できるな。」


「それほどでも無いかと。ただ、同じようなことは柴田の屋敷にて以前より柴田家家宰吉田次兵衛殿に仕込まれております」


「なんと!その年で我らと同じようなことをしているのか!さすがは柴田家の政務を取り仕切る吉田次兵衛殿の仕込みというべきか。良き師に恵まれたのだな」


いえ、四則演算を教育していただいたのは、吉田次兵衛さんではなく、小学校という名の前世の初等教育機関の先生方ですがね。


教育は、『日常生活で使えると思い込まれている偏った知識と一般常識という名の偏見の刷り込み』だって言ってた高校の友人も居たけど、四則演算だけはホントいつの世の中でも安定して使えるので、有り難いです。


「はい、政務については吉田次兵衛殿に、その他の教養は虎哉禅師に教わっております。自分は師に恵まれたのだと想います」


本音を隠した謙遜ムーブです。はい。


「そうか。小姓など辞めてすぐにでも奉行衆を手伝わんか。坊丸」


そう言うと、少し身を乗り出してこちらを見てくる島田秀満殿。ちょっと目の見開き具合が怖いですよ。


「島田殿。『小姓など』とは聞き捨てなりませんな。坊丸は奇妙丸様付きの小姓衆として現在仕込んでおります。奉行衆の手伝いにはお渡しできませぬ」


佐脇殿がいつの間にか島田殿の後ろに回り込んで、肩に手をおいてます。あ、手に力入れまくってますね。島田殿の顔が微妙に歪んでますから。


「痛い、痛いぞ。佐脇殿。『小姓など』と言ったのは謝る」


「島田殿。坊丸は我が小姓。奉行衆への引き抜きはまかりならん」


追い打ちで、奇妙丸様が首を振りながら引き抜きは駄目!絶対!と言い始めました。


「奇妙丸様。島田か秀満と呼び捨てで構いませぬぞ。しかし、もったいないのぉ。秀吉といい、坊丸と言い本当にもったいない」


いや、ゆくゆくは連枝として信長伯父さんや奇妙丸様を支えるつもりですから、奉行衆へのクラスチェンジはご勘弁願います。


そんなほのぼのなやり取りをしながら午前中を過ごし、午後は奇妙丸様の武芸の鍛錬。今日は理助を扱きモードでは無いのでいつも通りですね。


そんなこんなで奇妙丸様の留守居役二日目が終わりかけたところに、早馬が飛び込んできました!


「斎藤龍興が足利義秋様を裏切った由!我が織田軍は新加納の手前、木曽川のほとりにて敵襲を受け敗退!お味方に多数の被害!信長様も今、こちらに向っておりまする!」


ええっ〜!斎藤龍興が裏切ったのぉ!信長公記には、そんなデータ書いてないよぉ!

そして、その言葉を聞いて、一気に緊張の度を高める城内。

信長伯父さんの身を案じるもの、城を固めるべきというもの、兵を率いて迎えに行くべきというものなど意見が割れて混乱も起こり始めました。

と、そこに数騎が城下に戻ったとの報せが。


「信長様ご帰還!信長様が戻られたぞ!」


いやぁ~、信長伯父さんは無事かぁ。とりあえず、それは良かったぁ。

って、あの人、先触れの早馬とそれほど間を置かずに帰ってきたよ。なんていうか、信長伯父さんらしい。

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