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334話 堂洞合戦 四の段

翌朝早く、柴田勝家と生駒親重の率いる五百は木曽川を渡り、本来の時間線で中山道が選定されると太田宿と呼ばれることになる場所の付近に陣を敷いた。


そして、米田の肥田勢、兼山湊の遠山、武田勢の動きを確認するべく物見を出した。

が、そこには肥田勢も遠山勢も居ないとの報せが来る。


「どこに行った。奴らは…」


「どうした、柴田殿。難しい顔をして」


「これは、生駒殿。木曽川の渡し、川並衆の手配、ありがとうございました。それはそうと、肥田勢、遠山党、武田勢が元いたところにいなくなったとのこと」


「信長様が堂洞を落としたので撤退したのではないか?」


「であれば良いのですが…。一応、周辺を探索させまする。次兵衛、物見の指揮を頼む」


同刻、関城の東南、長井道利の陣中。物見が陣幕の中に飛び込んでいき、報告を上げる。


「長井様。昨日の物見、間者の報せの通り、信長は加治田に居るよし。しかも、配下は信長の本陣、馬廻り衆のみで千を切る程度とのこと。堂洞には千程度、猿啄にも千強程度とのこと。その数は、竹中様の読みの通りにございます」


「ちなみに、龍興様の軍勢はどうだ。肥田、遠山はどうなっている?」


長井道利の問いかけに他の物見が答える。


「昨日、既に桐谷峠を抜け、迫間の近くに布陣しているとのことにございます」


「肥田勢、遠山党についてはそれがしが。肥田勢以下五百は、蜂屋川の近くに移動した模様にございます。堂洞が落ちたあとにそれがしが肥田忠政殿、秋山虎繁殿の陣に殿の書状をお届けいたしましたが両方の軍勢ともに殿の書状を読んで信長の帰路を襲う方針で同意いただいております」


「肥田や遠山党は逃げ帰るかと思ったが、こちらに助力しつづけてくれるか。有り難し。堂洞が落ちてなお、合力してくれるは半兵衛の策が良くできたものであるからであろうな」


そういって、陣中のやや後方に静かに控える竹中重治に、長井道利は声をかける、


「いえ、それがしの策など武田家家中にてその名の高き秋山虎繁殿ならばすぐに思いつくでしょうし、お見通しでございましょう。肥田や遠山党、秋山虎繁殿がこちらに合力し続けてくれるのは、長井様が時間をかけて彼らと交流し、信頼や友誼を積み重ねてきたからにございましょう」


涼やかにほほえみ、あくまで自分の手柄を誇らない竹中重治。その様子をすこし苦笑しながら見守る長井道利。


「何にせよ、信長の帰路、やつを三方から襲い、殺す準備はなった。あとは、やつが帰路につくその時を確認するのみ。物見の衆を加治田の周辺に集めよ!加治田城の衆がすぐに加勢できない位置まで来たところで一気に襲う。龍興様、秋山殿、肥田、遠山党にあと一里、二里ほど加茂野に近づいたところに布陣するように伝えよ。そして、信長の動きを伝える物見による伝令を待てとな!」


堂洞城攻めであげた首を加治田城の大広間に並べ、信長が首実検をしているその頃、蜂屋川の河原近くにて肥田忠政率いる米田勢と遠山党、秋山虎繁率いる春近衆が合流していた。


「武田菱と三階菱の旗指し物、丸に九字の旗指し物が近づいてまいります。武田家伊那郡代秋山虎繁様、岩村の遠山景任殿、苗木の遠山直廉殿らと思われます。さらに烏峰の土岐十郎左衛門と思われる軍勢もおりまする」


「あい分かった。長井様からの書状では、秋山様と遠山党の事しか書いていなかったが…。久々利の土岐悪五郎めが秋山様が動いたのを見て尻尾を振ってきよったのか?まぁ、良い。予定通り、出迎えの準備を致せ」


「ハッ」


それから少し後、秋山虎繁は遠山七頭のうち今回同道した諸将と土岐十郎左衛門を引き連れ、肥田忠政の陣を訪問した。


「武田家、伊那郡代を務める秋山虎繁でござる。長井道利殿と我が主武田信玄様との盟約に従い、信玄様の名代として参った。今回はともに戦うことになると長井殿から聞き及んでおる。宜しく頼む」


「美濃は米田庄を治めまする肥田忠政と申します。こちらこそ宜しくお願い致しまする。ささ、こちらへ。遠山党の方々はあちらへおかけくだされ」


へりくだりながらそう言うと、秋山虎繁に上座を譲り、遠山党等に床几を勧める肥田忠政であった。


「さっそくだが、信長はいずこにいるのか?」


秋山虎繁に信長の所在地を問われた肥田忠政は、皆の真ん中に中美濃の地図を広げ、加治田堂洞の状況を説明する。


「秋山様、長井道利様から頼まれた空馬20程率いてございます。武田の皆さんに貸せとだけ聞いておりますが…」


「それは、ありがたい。それがしと春近衆で使わせていただく。軍議の後、すぐに見せて欲しい」


そして四半刻後、秋山虎繁と春近は、肥田忠政から貸与された馬に慣れるべく蜂屋川の側で馬を駆る。


「さすがは武田家でも名のしれた方々ですな。もう、馬を従えたご様子」


肥田忠政とその一党がその様子を見ていると秋山虎繁が貸与した馬に乗ってやってきたので、肥田忠政は秋山虎繁におべっかを使う。


「これは、肥田殿。こたびは、馬を貸していただきありがたい。良き馬ですな。長井殿の指示に従い船旅で大急ぎでの出陣故、自身の愛馬を連れてこれなかったが、まさかこの様に騎乗できるとは、な。皆、喜んでいる。重ねて、礼を言わせていただく。ありがたし」


竹中重治の策により、速やかな兵の移動と、少数なうえ急造ではあるが武田の騎馬隊の両立は、成った。

そして急造とはいえ名にし負う武田の騎馬隊が居る事で、肥田、遠山、武田、久々利土岐の寄せ集めの部隊に求心力と安心感が生まれる。


本来の時間線には存在しない第三の部隊、()()()()()での堂洞合戦における竹中重治の考え出した包囲陣形の最後のピースが出来上がったのだった。

連日投稿終了と言いながら、頑張って連日投稿になるようにする無駄な努力。

こう言う小さな嘘でビックリさせる為に頑張るのは、本当に無駄な努力だとは、思うのですが…。やめられない、止まらないってやつです。。


少しでも「面白い!」「続きが気になる」と思った方は、下の★でご評価いただけると、作品継続のモチベーションになります。

宜しくお願いします。



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