329話 坊丸、動く
あけましておめでとうございます。本年第一回の投稿です。今年も宜しくお願いします。
ども、坊丸です。
柴田の親父殿から聞いたところによると、丹羽長秀殿、川尻秀隆殿の活躍で鵜沼城、猿啄城を攻略したとのこと。犬山城を落としてから連戦で大変だとは思いますが、ご活躍の様子。
こちとら、鉄砲騎馬隊の編成とそれに合わせての鉄砲やらなにやらの開発で忙しいわけなんですがね。
と、そんなわけで最近『信長公記』で今後の動きをチェックし忘れていました。
まぁ、犬山城を攻略した後は永禄十年の稲葉山城攻略まで特に大きな事件がないと思い込んでたわけなんですがね。
で、確認してみたら、伊木山に出陣って一節で鵜沼城・猿啄城を攻略したとの記載が。
うん、今ここなのね。
で、その後の堂洞城を攻撃って一節では加治田の佐藤忠能父子が攻められそうになったので逆に堂洞城を信長伯父さんが攻めたっと。
ん?そこで内容終了かと思ったら、なんか続いてるな。
脳内のデータを継続して閲覧。閲覧と。
へぇ。『信長公記』著者の太田牛一さん、建物の上から正確無比な射撃で信長伯父さんに褒められた上に、知行の加増まで約束してもらえたんだ。
で、川尻秀隆殿と丹羽長秀殿が活躍して城が落ちたと。堂洞城を落とした後に信長伯父さんは加治田城に一泊して翌日、首実検したのね。
その後に小牧山城まで引き上げようとしたら、関城から長井道利が稲葉山城から斎藤龍興が合計三千以上で攻めてきたって!しかも、その時の信長伯父さんの率いる兵力は七、八百程度だけだって!
って、これヤバいじゃん。八百VS三千って危機一髪で絶体絶命レベルじゃん。
いや、まぁ、その後の話も続くんだから信長伯父さんの命的には問題ないわけですが。
で、戦うふりして撤退したと。
撤退戦ということは敵にとっては追撃戦なわけで。つまりは大損害を出しながら逃げ帰ってきたということになるわけです。
うわぁ~、なかなかの敗戦じゃん。よく美濃攻略戦の勢力図ひっくり返されなかったな。
これって、堂洞城を攻略して余裕ぶっこいたところを強襲されたわけですよね。
勝って兜の緒を締めよって奴ですよね。北条氏綱さんが氏康さんに言ったやつ。同じような事を信秀爺ちゃんは信長伯父さんに訓戒しなかったんでしょうかね?
まぁ、良いけど。
って、良くないよ。信長伯父さんの周りの人達が、信長伯父さんを守るために多数討ち死してるはずだもん。
どうにかできないかなぁ…。
とりあえず、親父殿に相談だな。
「親父殿、お話が…。今、宜しいですか?」
「ん?どうした、坊丸。何事や、ある。もう少しで刀の手入れが終わる故、しばし待て」
親父殿のお部屋を訪問すると、自室で刀の手入れをしている親父殿が。
「はっ。しからば、待たせていただきます」
「で、どうした」
「先日、猿啄城を丹羽長秀様が落としたとか。次は、堂洞城、加治田城、烏峰城かと存じます。次の戦に鉄砲騎馬隊に経験させたく存じますが、如何でしょうか?やはり、実戦にまさる経験はないかと存じます」
「うむ、それはそうだがなぁ…。実は、昨日、堂洞城を攻めると言うお話が殿よりあった。森殿、丹羽殿が各々千ほど、川尻が五百ほど、そして信長様自身も千強ほどを率いて数日後には出陣するとのことだ。
残念ながら今回儂には声がかかっていない。いつもの通りなら林殿か儂が火車輪城の留守居役だな。
殿は留守居をどうすると言っておらんかったから、出陣を願い出ることはできるかもしれんが…」
「鉄砲騎馬隊に戦を経験させたいので、後詰でもよろしいので、お願いいたしまする」
そういうと、頭を床につけるほど深く平伏しておきました。
「坊丸。鉄砲騎馬隊に経験をつませるなんぞ、後でもよいであろうに。本心は、別のところにあるのではないか」
「いえ、決してそのようなことは…」
見透かされるようにじっとこちらの目を見て話してくる親父殿。当然の様に目が泳ぐ坊丸くん。
「なにか、あるのだな。申せ」
「はぁ、しかとした根拠はないのですが、堂洞攻めに不吉な感じが致します。こう、何か誘い出されているような感じと申しますか…。堂洞自体は落とせましょうが、その後、小牧山への帰り道の平地、加茂野や太田のあたりで迎え撃たれるような気が…」
「ばかも休み休み申せ。堂洞城を落とせば、加治田の佐藤は今や味方。なんぞ危ないことやある」
「まぁ、そうなのですが…。先ごろの稲葉山城攻め、新加納での戦いといい、近頃の斎藤は迎え撃ったうえで、伏兵策や陣立て、地形を利用して包囲してくることが多いような気がしておりますので…。堂洞に織田の兵を集めさせて、関や稲葉山、東美濃、中美濃の国人を動かせば、包囲することができる様な…」
「ふむ、加治田が味方でも、関の長井、米田の肥田は動けるか…。そして稲葉山の軍勢を動かせば、三方からの挟撃になるな…。と、なれば、儂の仕事は米田の肥田を抑えることになる、か。一応、殿に後詰の話を言上しておく。まぁ、もしもの時に備えて、ということのはなろうがな」
「よろしくお願いします、親父殿」
そういうと、もう一度、頭を下げる坊丸くんなのでした。
烏峰城は、のちの美濃金山城です。この時期は久々利城主の土岐頼興(久々利頼興 別名土岐悪五郎)の配下が城代として入っています。
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